10月30日、中共の江沢民元主席が死去した。93歳であった。翌12月1日の新聞各紙に詳しく報じられているが、産経新聞と朝日新聞とでは、その印象はかなり異なる。産経は一面トップの縦見出しで、「中国の反日を強化」と打ち出し、他の縦見出しでも、「96歳 経済開放 民主化認めず」「権力欲 集団体制ゆがめる」と、否定的側面を強調し、2面肩の記事で、「歴史戦 火ぶた切る」「各地に抗日記念館増設」と掲げて、さらに追及している。
一方、朝日は、1面のトップではなく肩の記事で、見出しは「江沢民元国家主席死去」「96歳 中国の経済発展推進」と地味であった。
ポイントである歴史問題は避けられず、この1面の記事での次のように述べている。「外交面では対米」関係を改善し、97年に国家主席として12年ぶりに米国公式訪問を果たした。一方、対日政策では歴史問題を重視し、抗日戦争の勝利を強調する愛国教育を強化。中国国内の反日感情を強める結果を招いた。98年に国家主席として初めて日本を公式訪問した際、宮中晩餐会で歴史問題に言及し、日本国内で反発を呼んだ」。
この記事の記述から明らかなように、「愛国教育」というのは名ばかりで、その実態は日本だけを標的とした、「反日教育」正確に言えば、「虐日教育」なのである。それはアメリカとの対比で明らかである。日本との戦争の後で、朝鮮戦争においてアメリカと戦っている。そもそも日中戦争の中国側の主役は、中華民国であって中華人民共和国は存在していなかった。また帝国主義時代に中国を侵略した最も中心的国家は、大英帝国・イギリスであるが、イギリスに対して恨みがましい非難をしたこともない。結局先に述べたように、唯一の攻撃対象とされたのがわが日本なのである。
]]> さらに12月1日、3面の古谷浩一論説委員による、江沢民の「評伝」では、さらに批判的な要素を加えて、次のように述べている。「急速な経済発展は深刻な『貧富の格差』を生んだ。人々の不満が鬱積してゆくなか、イデオロギーを失った党の求心力を維持するために『愛国教育の強化』を推進した。その過程で生まれた偏狭なナショナリズムが、中国の若者たちの反日感情を刺激した。日中関係が受けた影響は大きい。98年の訪日でも示されたように、江氏自身も日本に対して歴史問題での強いわだかまりを持っていたようだ」。この最期の部分は明らかにおかしい。歴史問題は、江沢民個人の問題ではなく、以下に述べるように、中共の基本的な国家戦略であるからだ。戦後の中共の対日態度の歴史を振り返ってみると、50年前の日中国交成立時には、異常なまでの「日中友好」が謳われ、日本中に「日中友好協会」が成立した。さらその際に徹底的に利用されたのが、「最大の政治的動物」であるパンダであった。本来、シナ人によるチベット侵略の象徴であるパンダに、歴史に無知である日本人は単純に騙されてしまった。
つまり日本人をだまして利用する政策は、国交成立の時から始まっていたのである。
その後、鄧小平時代は日本の新幹線技術などを積極的に吸収して、経済成長を成し遂げた。ただし有名な「韜光養晦」のように、ずっと猫をかぶり続けていた。それが後継者江沢民の時代になって、遠慮することなく、日本に対して本性を現すことになったのである。その端的な表れが、98年に国家元首として初めて日本を公式訪問した際に、最も神聖な場である宮中晩餐会の場において、歴史問題すなわち虐日政策をぬけぬけと主張した。考えられないほどの、外交的な非礼である。
この虐日路線は、胡錦涛時代にゆるんだ時期もあったが、尖閣問題などで、大規模な反日の官製デモが繰り返され、日本企業は甚大な被害を受けたが、結局、泣き寝入りの状態に追いこまれた。 現在の習近平政権は、江沢民政権をバージョンアップしたものなのである。
それにしても、国交50年でここまでシナ人にやられ続けて、まだ気が付かない日本人の愚かさは、例えようもなくすさまじい。これはシナ人の手先となって日本人をだまし続けてきた日本人が、存在するからである。その代表が、広岡知男社長の「歴史の目撃者論」に端的に表れた、朝日新聞に他ならない、その他には国益を考えず経済利益に目を奪われた経済人や、政治家も同罪である。
ただしこの状況を正確に認識していた日本のメディアも存在した。産経新聞は以前から、歴史問題を「歴史戦」と正確に表現している。武器を使わない戦争であるから、「情報戦」「思想戦」「心理戦」である。しかし愚かな日本人には、その自覚がまるでない。これらの戦いにおいても、「白痴的平和主義」に陥っている。
← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)
安倍元首相の暗殺事件以来、自民党と旧統一教会の関係が、異常なほど問題視されて、メディアはその報道に狂ったように邁進している。特に国会が開催されても、この問題ばかり議論しているのは、完全に税金のとてつもない浪費である。
最近朝日が中心となって、自民党の議員と旧統一教会との間の、「政策協定」なるものが一躍注目された。ところで宗教組織と自民党の「政策協定」と言えば、ずっと以前からしきりに聞かされていた言葉である。それはもちろん自民党と公明党との政策協定であり、公明党は野党ではなく自民党と共に、政権与党であるから、こちらの方の政策協定は、国政への影響力は真に巨大ものである。
今回、旧統一教会による自民党への選挙協力が問題にされたのであるが、ずっと以前から自民党は創価学会・公明党の選挙協力がないと、選挙で勝てなくなってしまい、ついに公明党と連立政権が成立するに至ったのである。これこそ自民党の歴史における、取り返しのつかない巨大な失策と言わなければならない。
公明党と連立したことによる弊害は多々あるが、一つは無責任に安直な平和主義を奉じていることであろう。これによって憲法の改正などまったくできずに、無為に月日を重ねることとなった。その間に中華人民共和国・中共は爆発的に軍事力を拡大して、我が国にとって明確な脅威となった。
もう一つの公明党による巨大な弊害は、この中共に関することである。そもそも創価学会は中共と関係が深く、今から50年前のいわゆる「日中国交正常化」の時点で、田中角栄総理大臣の訪中に先駆けて訪中し、その露払いを務めたのは、公明党委員長であった竹入義勝であった。公明党が中共と関係を深めるようになったのは、膨大な人口を抱える中共に、布教する目的があったからであろう。膨大な人口に目がくらんだのは、経済界と同様と言える。
その公明党が政権与党となり、国政に直接関与しているのだから、我が国にとって危険なことこの上ない。特に内閣においては、重要閣僚である国土交通大臣を占めている。しかも実に奇妙なことに、公明党がほぼ独占し続けていることである。
その中でも最も危惧されることは、国土交通省が海上保安庁の監督官庁であることである。現在、日本と中共の尖閣諸島をめぐる領土紛争は、もっぱら海上保安庁が対処しているのである。これでは海上警備を巡る我が国の情報は、公明党を通じて中共側に筒抜けとなっていると考えなければならない。
]]> 自民党の真にダメなところは、公明党に国土交通大臣の椅子を与え続けるという、犯罪的な行為をずっとやり続けてきたことにある。これは安倍政権の時代でも、変わらずに行われてきたのである。これに比較すれば、自民党議員と旧統一教会との関係など、バカバカしいほど問題のないものである。公明党の反対による弊害は、シナ人を中心とする、外国人による日本の国土の買収を禁止する法律が、ずっと以前から問題にされながら成立しなかったことにもある。最近になってかなり不十分な法律が成立したようだが、何しろ公明党が「国土」交通大臣を握り続けているのであるから、当然と言えば当然か。
またごく最近の、防衛費増額問題や、安保三文書の改訂においても、公明党が大きな障害になっている。11月2日の産経新聞の記事によると、自民・公明両党は、安保三文書の改訂に向けて、実務者のワーキングチームを作って、会合を行ってきたという。一覧表に示されている検討項目は、反撃能力(敵地攻撃能力)・情勢認識・防衛費・防衛費財源などであるが、両党の見解の隔たりは大きいという。
中国共産党大会で、習近平の独裁体制が確立して、習近平は現代のヒトラーになった。まえまえから指摘して来たように、中共は赤色ファシズム国家・侵略国家。ジェノサイド国家と三拍子そろっているうえに、完全な独裁者をいただいて、完璧に現代のナチズム国家となった。
中共による日本への直接的な脅威がますます増大する現在において、公明党は亡国的な主張を行っているのである。どうしてかと言えば、公明党の根本的な隷中体質からきているのである。そしてこの公明党の売国行為を、日本の主流メディアは決して批判しない。その理由は実に簡単で分かりやすい。日本の言論空間を支配している、朝日に代表される虐日偽善メディアは、隷中という点において、公明党と完全に同体質なのである。つまりお友達であり、要するにグルなのである。
自民党がいつまでも公明党に縋り付いているようでは、日本の未来は全く暗いと言わなければならない。
← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)
雑誌『月刊HANADA』11月号に、有本香さんの論文、「『国葬』反対派は〝極左暴力集団〟」が出ている。そこに掲載されている集会のポスターは、「安倍の国葬粉砕! 改憲・戦争の岸田を倒せ! 9.23 全国集会デモ」というもので、特に有本さんが注目しているのは、中段に書かれている、「米日の中国侵略戦争 絶対阻止!」という文言で、有本さんは「唖然として、言葉が出なかった」と言っている。
つまり日本の極左勢力は、歴史の真実とまったく逆のことを主張しているわけである。中国(正しくは、シナ、中共)は、私が以前から何度も指摘しているように、赤色ファシズム国家、侵略国家、ジェノサイド国家と、三拍子がそろった、現代に生きるナチズム国家であるから、ネオナチ国家と言わなければならない。中華人民共和国は、そもそも侵略国家として誕生したのだが、国内的侵略が一応済んだ段階で、さらの国外への侵略に乗り出した。台湾侵略は国是たが、さらに南シナ海・東シナ海の島嶼の侵略に着手して、日本の領土である尖閣諸島も、核心的利益であると侵略宣言をしている。その侵略はさらに沖縄、日本本土に及ぶのは、決まりきったことである。
つまり日本の極左勢力は、まるで民族意識というアイデンティティがなく、日本を侵略する側に立っている。共産主義のシナ・中共にしても、北朝鮮にしても、一応民主主義の韓国も、ナショナリズムそれもウルトラ・ナショナリズムの塊である。日本の極左勢力は、シナ人・朝鮮人に少しは学んだらどうなのか。現実には日本の敵の手先になっているのだから、明らかな「民族の裏切り者」といわなければなない。
また10月4日の産経新聞オピニオン面の、坂井広志論説委員による「一筆多論」欄によると、国葬の前日の9月26日、左翼活動家「プロ市民」による国葬反対大集会が、衆院議員会館の大会議室で行われた。会場の入り口付近では「中国を仮想敵国に仕立て上げて、着々と戦争準備に突き進んで良いのか」と書かれた、日中国交正常化50周年記念大集会の案内が配られ、「会場のひな壇には横断幕も掲げられ、迷彩服を着た安倍氏を背景に『やるな国葬 来るぞ徴兵 安倍賛美は改憲・戦争への道』と物騒な文言が大きな文字で書かれていた」とあるから、極左勢力の主張と、基本的に同じであることがわかる。
]]> この国会の集会を主催したのは、「安倍元首相の国葬を許さない会」で、その代表は藤田高景という元社民党職員で、集会では立民の野田佳彦元首相や連合の芳野友子会長が国葬出席を公言したことについて「あきれて開いた口がふさがらない」と批判したという。ジャーナリストの鳥越俊太郎氏は、安倍氏は「日本を戦争に最も近づけた男。核に近づけようとした男。戦争犯罪的な恐ろしい首相だった」と呪詛したという。極左勢力やプロ市民による、国葬反対の理由は極めて明確だが、そのほかにも朝日新聞に代表される主要メディアによる煽動報道によって、国葬に反対した人間は数多い。それは国葬反対というよりも、安倍政治に反対し、ことごとく非難していた、例の「アベガー」運動の継続と考えることができる。したがってそれに参加している人間は、安保法制に反対して国会デモをやった集団と、殆ど共通しているようだ。ただし朝日新聞は例によって、今回初めてデモに参加したという人間の談話記事を、何度か掲載しているから、今回新たに洗脳されて動員されて人間もいるようだ。
ところで、安倍首相が暗殺されて、最も喜んでいるのは、シナ・中共であるに違いない。なにしろ 安倍元総理の最大の功績は、シナ・中共の危険性を全世界に向けて暴いたことにあるからである それはインド太平洋構想に発展して、世界から大きな支持を受けた。したがって安倍暗殺による損失は、日本はもちろん世界にとっても極めて大きい。なぜなら安倍氏は総理という立場から離れた、より自由な立場から、今後積極的に動こうとしていたと考えられるからである。それは「台湾有事は日本有事」の発言や、核発を巡る発言に現れていた。核発言にたいしては、岸田首相がたちまち否定したが。
日本において最も欠けているのは、対外発信能力である。安倍政権時代でもその点では、極めて不十分であった。そこで安倍氏が新しいシンクタンクを立ち上げて、強力な日本自身としての自己主張を展開できたのではないか。その点でも安倍氏に代わる人材は、とても見つからないようである。国葬の弔辞で、岸田首相は、「安らかにおやすみください」と述べたようだが、安倍氏が泉下において、安らかでいられるような状況ではまったくない。
← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)
8月11日の産経新聞・オピニオン面の「直球&曲球」欄に、登山家の野口健氏が、「『自分の国は自分で守る』覚悟と行動」と題する見出しのコラムを書いている。
まず冒頭で、「防衛省オピニオンリーダーを拝命してから、駐屯地を視察、先日、防衛省にて『令和4年版防衛白書』についてレクチャーを受けた。説明を受けて愕然とした。中国が公表している国防費の増加スピードはこの30年間で約39倍。それに対し、日本の防衛関係費は約20年間で微増。今年度の日本の防衛関係費が5兆円強に対し、中国政府が公表しているだけで国防費は約25兆円。ざっと5倍である。」と述べている。
さらに、台湾有事の際の弾薬不足や、ウクライナ戦争に対する、素早いドイツの対応などに言及して、結びの言葉は、「この手の問題提起をすると『戦争をしたいのか!』との意見が寄せられるが、ウクライナが証明しているように『まずは自分たちの国は自分たちで守る』という強い覚悟と行動がなければ、いざというときに他国からの助けも得られにくい、と心得た方がいいだろう」という。かなり控えめな言い方になっているが、まったく当たり前のことを言っているわけである。
それから三日後、8月13日の産経新聞の一面、連載記事である「主権回復」の第4部「戦争とどう向き合うか2」に実に興味深い棒グラフが掲載されている。それは、「世界価値観調査(2017~20年)の「戦争になった場合、あなたは国のために戦えますか?」である。
]]> 記事の説明では「問われているのは、民間人も含む国ぐるみの『守る』意識。その点で日本の課題は大きい。世界100カ国近くの社会学者が協力し、各分野に関する各国・地域の意識を調査する『世界価値観調査』(2017~20年)によると、『戦争になった場合、国のために進んで戦いますか』との質問に『はい』と答えたのは、日本が最低の13・2%にとどまった。」とある。100カ国すべてで調査したのか、判然としないが、グラフに表示されているのは、15カ国の分である。
さらに「調査は先進7カ国(G7)で2番目に低いイタリアでも『はい』は37・3%。日本の低さが際立った。一方、日本で質問に『いいえ』と答えたのは48・6%、『わからない』が、38・1%を占めた」と続けている。
日本の場合、「はい」がダントツに低いのであり、「いいえ」もそれなりに多いのであるが、「わからない」の多さもとびぬけている。これらの点を他の国と比べて述べてみよう。「いいえ」が多い国は先進国の中で結構多い、イタリア・カナダ・ドイツ・オーストラリアなどである。このうちカナダの「いいえ」は、日本よりはるかに多い。だが「はい」は4割を超え、「わからない」は無い。
アメリカ・イギリス・フランスのはい」は6割とそれを超える位である。調査時期のためなのか、ウクライナ戦争は反映していないようで、ウクライナの「はい」は6割に達しておらず、ロシアでも、韓国と同じで6割を超えているが7割に達していない位である。それに比較して、ポーランド・フィンランド・スウェーデンの三か国は、7割から8割になっており、ロシアへの警戒心がすでに高まっていたことがわかる。
なお、15カ国中で最も「はい」が多いのは中国で約9割の数字が示されている。
要するに、野口氏の期待にも拘わらず、戦争になって自ら戦おうとする日本人、「自分の国は自分で守ろうとする日本人」は、少し前の調査であるが、諸外国に比較しても、ダントツに少ないのである。これは第二次大戦の敗戦の直接的な影響というよりも、長年にわたるメディアの洗脳教育の、巨大な成果と言ってよいだろう。今年の夏も、70年も前の戦争を、悲劇として、しかも情緒的に回顧する報道が、新聞でも放送でも、主要メディアにあふれていた。
今年は例年に比べて、ロシアによる明白なウクライナ侵略があり、またペロシ訪台問題もあった。この訪台で習近平の面目は丸つぶれになったが、中国は台湾を包囲する形で、大規模演習を敢行した。そこで弾道ミサイル5発が、日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したのであり、台湾有事が文字通り日本有事になった。にもかかわらず、日本では目の前に勃発した現実的な危機にはまるで盲目で、安倍暗殺事件に連動した、旧統一教会問題で大騒ぎしている始末である。
昨今の状況を見ていると、米定憲法に淵源する、まったくリアリティーを欠いた、「白痴的平和主義」が、いかに日本人の精神を蝕んで定着してしまっているか、改めて思い知らされるのである。
← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)
アジア歴訪中のペロシ米下院議長は、8月2日に台湾に到着、翌3日午前に蔡英文総統と会談した。この下院議長の台湾訪問は、1997年以来25年ぶり。自由と民主主義を破壊続ける、ネオナチ国家・中国に対抗する強力なメッセージを発した。中国は当然のように猛反発して、台湾を囲む六つの地域で大規模な軍事演習を展開した。
このペロシ議長の訪問については、バイデン大統領も賛成していなかったが、三権分立のアメリカであるからできたのだとかなどの、理由付けが行われているが、要するに大統領が黙認したということは、承認したことに外ならない。
中国はこのアメリカの態度にショックを受け、巨大な軍事演習を始めたのだが、ペロシ訪台に強硬に反対し続けた、習近平のメンツが丸つぶれになったことは、紛れもない事実である。隷中の朝日新聞ですら、3日朝刊1面で「訪問の中止を米側に再三警告してきた中国はメンツをつぶされた形で、米中対立がさらに深刻化する見通しだ」と述べているのだから、間違いない。
直接日本に関係することとしては、4日にカンボジアのプノンペンで予定されていた、日中外相会談が一方的にキャンセルになり、さらに翌5日のアセアン外相会議では、林外相の演説中に、中国とロシアの外相がそろって退席するという、卑劣なパフォーマンスを演じた。
5日の朝日新聞2面の「時時刻刻」欄によれば、このキャンセルについて、中国の「華春螢外務次官補は、同日の定例会見で『このような状況下で日本と外相会談を行う必要はない』としたうえで『台湾問題について日本は歴史的な罪を負っており、とやかく言う資格はない』と強く非難した。」という。
]]> ついで「また、複数の東南アジア諸国連合(ASEAN)の外国筋によると、プノンペンで4日午前にあったASEANと日中韓の外相会議でも、中国の王毅国務委員兼外相が同席した日本の林芳正外相に対して声を荒らげ、台湾の現状について日本に歴史的な責任があると指摘したという。」とある。さらに「台湾問題をめぐる習指導部の強硬な姿勢は、日米以外のG7参加国にも向けられている。華氏は会見で『今日の中国は、100年以上前にいじめられた昔の中国ではない。G7は列強の夢から目を覚まさなければならない』とし、『中国の核心的利益を尊重せず、さらに侵害しようとするなら、必ず関係に影響が出る』と脅した」という。
いずれも歴史問題を利用して、日本及び欧米諸国を脅迫しているつもりになっているが、まったくピント外れの議論というしかない。日本の台湾統治は過去の話であるし、欧米勢力の支那進出も全く同じである。不当な侵略支配ということなら、現在の中国こそ紛れもない現行犯である。シナ人は、チベット人・モンゴル人・ウイグル人を、徹底的にいじめまくっている。
まことにだらしないことに、日本政府は今回のペロシ訪問に関して、だんまりを決め込んだ。「台湾有事は日本有事だ」と明言した安倍元首相とは、まるで似ても似つかない姿である。8月4日の産経新聞3面の横見出しは、大きく「電撃訪台 日本は『沈黙』」であり、そのリードに「日本政府は3日、中国の軍事演習に対して懸念を表明したが、ペロシ氏の訪台への評価は沈黙を貫いた。9月に日中国交正常化50周年を控え、中国を必要以上に刺激したくないとの思惑がにじむが、自民党内では〝弱腰外交〟との見方が強まっている」とある。不当な言説には、反論しなければならないのに、政府はまるでやっていない。。
なお、朝日新聞は4日の国際面で、東大東洋文化研究所の佐橋準教授に、ペロシ訪台に否定的な意見を述べさせている。いわく「ペロシ氏の訪台で、米中関係は明らかに悪い方向に向かう。地域の安定を米国が壊しかねない。日本や台湾からすると、この訪問はあまり意味がない」。しかしこの地域の安定を、一方的に破壊し続けてきたのは中国であり、ペロシ訪台はそれを覆す重要な一歩である。したがって当然、台湾や日本にとって、巨大な意味がある。
翌5日の朝日新聞国際面のトップの見出しは、「台湾支援 強める米国」、「訪台『あいまい戦略転換への一歩』とある。本文には「米国ないでは最近、『あいまい戦略』では軍事的増強を続ける中国を抑止しきれないとの意見が目立つようになってきている」とあり、6月には、メネンデス上院外交委員長とグラム上院議員が、台湾への支援を大幅に拡大する、「台湾政策法案」上院に提出した。アメリカは、関係悪化を覚悟しており、ペロシ訪台は、同氏の人気取りのスタンドプレーではない。
← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)
最近はコロナ騒ぎの上に、ウクライナ戦争も勃発して、殆ど忘れられた状態になっているが、本年2022年は、日本が中華人民共和国と国交を成立させてから、50年となる節目の年であった。
アメリカはベトナム戦争で行き詰まり、一方中共は文化大革命の混乱が継続中だったことにより、米中の接近が計画され、1971年のキッシンジャー訪中となった。その下準備の上で、72年2月にアメリカ大統領ニクソンの訪中が実現した。
このニクソン訪中に驚いたのは日本で、ちょうど沖縄返還を置き土産に引退した、佐藤栄作の後継を争う自民党総裁選挙で、以前から日中関係改善に熱心であった、田中角栄が福田赳夫を破り総裁となった。ただしこれにはメディアの応援が大きかった。特に朝日新聞は、国交成立以前の記者交換の時代に、文革報道で唯一追放を免れたが、それは中国に都合の悪いことは報道しないと言う、広岡知男社長の「歴史の目撃者論」の成果であった。
田中総裁は7月5日に誕生し、翌々日には田中内閣が成立した。以後、急速に中国との交渉が進展したが、そこには公明党の竹入委員長の訪中が関与していた。田中首相は、9月25日に訪中して、国交を成立させて同29日は共同声明が出された。驚くべき拙速外交の見本と言うべきもので、その後に巨大な禍根を残すことになった。ちなみにアメリカが中国と国交を成立させたのは、はるかにのち1978年12月のことである。
その後、「日中友好」のスローガンが、声高に叫ばれて、政府は巨額のODAを提供するようになり、それは主に中国の交通設備などインフラ整備に投入されていった。その分中国は自国で賄わなくてもよくなり、その資金は結局軍備に投入されて、世界第二の軍事大国に成長していったのである。つまり日本はお金を出して、わざわざ敵国を育ていったのであり、自身で日本の危機を招来していたわけである。
]]> 田中拙速外交が後世に残した「負の遺産」は、実に巨大なものがあるが、その中でも重要なものに、歴史問題がある。それが外交問題として発生したのは、1982年の第一次教科書事件であった。この年の教科書検定において、「侵略」の表記が「進出」に書き換えられたと、6月26日にメディアが一斉に報じた。これに対して中国が抗議してきが、その根拠としたのが、日中共同声明に違反しているという理由であった。政府は8月26日に至って、政府の責任で是正すると約束し、結局、教科書検定に当たっては、近隣諸国の人々の感情に配慮すると言う、「近隣諸国条項」を作ってしまった。これを主導したのは当時の鈴木善幸内閣の宮沢喜一官房長官であった。ところが「侵略」から「進出」への書き換えは、まったくのフェイクニュースであったのである。
教科書事件はその四年後86年にも再現する。第一次事件を憂慮した保守系の人々が、高校教科書を作り、検定に合格していた。それをメディアが反動教科書と騒ぎ出し、案の定、中国・韓国が抗議してきた。それに対して時の中曽根康弘・総理大臣は、検定をやり直させたのである。つまり政治権力の検定への直接介入であり、これこそ家永教科書訴訟批判したことなのに、すんなりと認められてしまったのである。
またこの年には、靖国参拝問題が起きる。この前年、中曽根首相は諮問委員会の議をへて靖国公式参拝を決行した。これに対して中国から抗議を受けたために、この年からまた休止してしまったのである。
その後歴史問題では、1900年代から慰安婦問題が出現して、日本を攻撃するのは韓国が主役となる。一旦手に入れた攻撃の武器は、30年近くにわたって使用されてきて、最近は徴用工問題が主となっている。つまり、一旦誤った拙速外交の害毒は、極めて長期にわたって、継続するものなのである。最初の過ちが、膨大な被害を生み出す、典型的な事例であると言ってよい。
歴史問題が問題化するメカニズムというものがある。まず日本のメディアが騒ぎ出し、それに基づいて中国・韓国が日本政府に抗議して、国際的な外交問題に発展させ、それに対して日本政府が穏便に済ませようと譲歩してしまう、というメカニズムである。つまり歴史問題には、最初と最後に日本人が深くかかわっているわけである。
しかも最大の問題は、日中国交50年、歴史問題勃発の40年という、負の遺産として記憶すべき年であるのに、日本人の責任が少しも回顧・反省されていないことである。歴史問題による日本人への洗脳が、政府を含めてあらゆる日本人に、深く浸透している明白な証拠である。
← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)
5月25日、JR東海の名誉会長・葛西敬之氏がなくなり、27日に公表された。翌28日の各紙朝刊には、死亡記事と「評伝」が掲載されている。その活動は実に多彩で、国鉄民営化を実現した中心人物であるとともに、東海道新幹線の発展を推進しただけでなく、原発事故後の国の原子力関係の委員なども務め、若者の教育にも熱心であった。
その中でも葛西氏が優れていたのは、精神的なバックボーンが極めてしっかりしていたことである。各紙に共通して見られるのは、同氏と親しかった安倍元首相が「国士」と述べたことと、「保守派の論客」と言う表現である。
毎日の記事によると、JR東海が死去を受けて出したコメントには、「国鉄改革の主柱として、JR東海の発展のけん引者として、曲げない信念と卓越した実践力を持ち合わせた人だった。確固たる国家観、世界観を持ち日本の発展に心を砕いていた人でもあった」と述べているところが、重要なポイントである。
この葛西氏の国家観が端的に表れているのが、新幹線に関する信念である。産経の評伝では、「そして卓越した国家観を持った経営者でもあった。国鉄の民営化では日本の鉄道の将来を憂え、民営化の実現に奔走した。その後、自らリニア中央新幹線計画を主導したのも、大地震で東海道新幹線が被災した際の影響を憂慮したからだ」とあり、続けて「新幹線の技術を海外に売り込む際、当時の財界内で要望が強かった中国への技術移転には強く反対した。中国への技術流出を懸念したからだ。ビジネスの前に国の安全保障の姿をいつも考えていた」とある。
]]> また読売新聞の評伝は、「日本の誇る鉄道技術の海外輸出に積極的だった一方で、中国への輸出には反対の立場だった。記者との会食の席で『死亡事故ゼロの新幹線や、これから生まれ出るリニア中央新幹線は、日本の先人たちが磨き上げてきた英知の結晶だ』と強調。米欧や台湾など、知的財産権の概念が確立した国・地域に限って輸出することにこだわる姿勢を見せた」と記している。国士・保守の論客であると同時に、合理的な思考ができる人物であった。毎日の評伝には、「葛西氏は徹頭徹尾、合理的な人だった。旧国鉄の企画担当職員時代、自民党の『我田引鉄』と旧社会党の労働条件改善要求に翻弄(ほんろう)され赤字を拡大させた教訓から、JR東海に移ってからは徹底的に無駄を省いた」とある。
続けてそのやり方が、JR東日本と比較して説明されている。「その象徴が東海道新幹線だ。JR東日本が2階建て車両など多様な新幹線を導入したのに対し、JR東海は『N700シリーズ』に一本化。極端に重かったり速かったりする車両を入れないことで線路の維持費を抑えつつ高頻度運行を追及した。この結果、航空会社との東京―大阪間の移動需要獲得競争に勝利。JR東海はJR随一の高収益企業に飛躍した」。
葛西氏が中国への新幹線技術の輸出には否定的であったのに対して、JR 東日本が中心となって、新幹線技術の中国への輸出を行った。日本のほかにはドイツのシーメンスも参入した。中国がソ連・ロシアと異なる点は、人口の巨大さにある。シナ人が広大な侵略地域への侵略を徹底する凶器は、人間そのものである。この人間の移動・移住において、高速新幹線は圧倒的な威力を発揮する。新幹線技術を安易に輸出した日本人は、シナ人の侵略行為の最悪の共犯者であると言ってよい。
日本人は50年前の日中国交回復以後、「日中友好」の美名に踊らされて、新幹線技術にとどまらず、工業の基幹産業である製鉄業など、数え切れぬほどの技術移転を行ってきた。それによって中共は急速な経済成長を遂げ、世界第二の経済大国となり、それを軍備に投入して、世界第二の軍事大国となった。そこで侵略国家たる本性を現して、日本の固有領土である尖閣諸島を「核心的利益」と言って、明らかな侵略宣言を行ったのである。一方日本は、1990年代の半ばから、まったく経済成長をしていない。
朝日の記事によると、「財界主流とは、意見をたがえたこともあった。東京大学で同期だった三村明夫・日本商工会議所会頭は、『私たちは純粋な経済人だが、彼は一回り大きな独特な世界があった』と評した」とある。しかし一流の経済人であれは、単なる「純粋な経済人」であってはならないのである。純粋な経済人とは、単に金もうけだけに励む、エコノミックアニマルではないか。経済人に限らず、政治家も官僚も学者もメディアも、日本のリーダーたるべき人間が、総じて国家意識、さらには民族意識を喪失しまっていることこそ、日本がここまで没落してしまった、根本原因なのである。
← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)
ロシアのプーチン政権による、対ウクライナ侵略戦争において、5月9日の対独戦争勝利の日が話題になった。現在では革命記念日に代わって、ロシアにおける最大の祝日になっており、それをしたのがプーチン大統領であるという。
ソ連が戦った第二次世界大戦において、ソ連の対独戦争を一般には「独ソ戦」と言うのであるが、ソ連・ロシアでは「大祖国戦争と」呼ぶ。これはナポレオンのロシア遠征を撃退した戦争を、「祖国戦争」と呼ぶことに倣ったものである。
この大祖国戦争はいつ開始されたものかと言えば、1941年6月に、ドイツがソ連に対する攻撃を始めてからである。つまり1939年9月1日に、ヒトラーのナチス・ドイツがポーランド侵略を開始したことによって、第二次世界大戦がはじまったが、あくまでもヨーロッパ中心に考えるから、その前に始まっていた日中戦争は含まないわけである。
ヒトラーはポーランドを侵略するにあたって、その直前39年8月に、ソ連との間に独ソ不可侵条約を結んだ。当時の日本の総理大臣であった、平沼騏一郎が「欧州の情勢複雑怪奇なり」と言って、総辞職した原因となった条約である。その一年半後に、ドイツがこの条約を廃棄して、独ソ戦争が始まったわけである。
この39年9月から41年6月までの間に、ドイツはポーランドを降伏させただけでなく、翌40年4月には、デンマーク・ノルウェーを攻略し、5月にはオランダ・ベルギーの中立を無視して、マジノ線を突破してフランスに攻め込み、6月14日にはパリが陥落して、同25日はフランスはドイツに降伏した。このように西部戦線を一応片づけたうえで、対ソ戦争に踏み切ったわけである。
ではこの間にソ連は何をしていたのか。ソ連はドイツと不可侵条約を結んだのであるが、これには秘密協定が付いていて、ポーランドを独ソ両国で占領するというものだった。これが名高いポーランド分割である。ソ連は39年11月にはフィンランドに進撃して戦争になるが、弱小国フィンランドの意外な抵抗にあって苦戦する。40年6月にはルーマニアから、ベッサラビア・北ブゴヴィナ地方を奪い取る。7月にはバルト三国を併合する。つまりソ連は独ソ開戦以前に、これだけの侵略行為を行っていたわけである。
今回のウクライナ侵略戦争において、プーチンは戦争目的として、ウクライナのナチス勢力の掃討を掲げ、現代ナチスとの戦いを強調して、その理屈に沿って、二次大戦におけるソ連によるナチス撲滅の功績を、最大のセールスポイントとする。しかし、独ソ戦争の期間はともかく、大戦の前半期間においては、ソ連はナチス・ドイツと完全に共犯関係にあったことは、否定しようのない事実である。つまりソ連は、ナチス・ドイツを強大化させるために、絶大な貢献をしたのである。
]]> ところで、今回のウクライナ侵略戦争の報道において、この明白単純な事実が、驚くほど報道されていない。現在の日本人は歴史に関する正確な事実に無知であるが、それはメディアの責任であると言わなければならない。それは日本の学界やメディアの世界では、ソ連の崩壊後30年もたつというのに、いまだに左翼の影響力が強いからであろう。ヒトラーはヴェルサイユ体制の否定を企てて失敗したが、スターリンは見事に成功を収めた。その証拠こそ、第一次大戦後に独立した、バルト三国の再侵略・再併合である。単に領土を回復しただけでなく、占領地域に共産政権を作り上げ、衛星国として勢力範囲を拡大した。それができたのは、ナチス打倒の功績に免じて、アメリカが承認・黙認したからである。ただし戦後すぐに仲たがいして、冷戦がはじまる。
そのソ連が崩壊したのが約30年前であるが、欧米はまた同じような過ちを繰り返す。それはプーチンの旧ソ連という「悪の帝国」を復活させるという、時代錯誤の野望に対して、多くの兆候があったにも拘わらず、極めて鈍感だったことである。特に敗戦国であったドイツがそうであり、中でも東独出身のメルケル首相に顕著であった。
また欧米諸国がプーチンに甘かったのは、第二次大戦中の歴史の弱みが影響しているだろう。英仏両国は、ドイツのポーランド侵略の直後に宣戦布告をしながら、ドイツを攻撃しなかった。ドイツに責められてからようやく戦ったのだが、たちまち敗北してしまった。アメリカもなかなか参戦せずに、ドイツと開戦したのは真珠湾攻撃によって、日米戦が始まったからである。
要するに、現在のロシアは紛れもないナチズム国家であり、プーチンは現代のスターリン、そしてヒトラーである。
← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)
バイデン米大統領は、三月下旬4日間の訪欧の締めくくりとして、26日ポーランドのワルシャワの旧王宮で演説を行ったのだが、これが問題にされ批判された。演説の結びで、プーチンに「この男が権力の座にとどまり続けてはいけない」と言った点であり、朝日も産経も見出しにしている。この言葉はロシアの体制転覆を目指したものだから、軽率で言いすぎだというわけである。この言葉については、ロシア側が直ちに強く抗議しただけでなく、アメリカ側の高官も、政権交代を迫るものではないと釈明した。なおこのフレーズは、演説の原稿にはなく大統領のアドリブであったと説明されている。そしてバイデン大統領自身も、27日ワシントンの記者会で、体制転換を求める意思がないことを言明した。この展開に、アメリカの劣化ぶりがよく表れている。
朝日28日3面の記事によれば、「バイデン氏は演説で批判の矛先をプーチン氏個人に集中させた。『ロシア国民は我々の敵ではない』と呼びかける一方で、『非難されるべきはウラジミール・プーチン。以上だ』と言い切った。バイデン氏は最近、プーチン氏への個人批判を強める。この日の演説前には『虐殺者(butcher)だ』とも非難した。侵略開始後は『人殺しの独裁者』『真の悪党』『戦争犯罪人』といった言葉を公の場で相次いで使っている」とある。バイデン大統領が、攻撃対象を個人に集中させたのは、体制転覆の意図をカムフラージュするためと考えるのは、やはりうがちすぎだろう。
このバイデン発言問題を、さらに否定的・批判的に追及したのが朝日新聞である。3月30日7面の記事では、「バイデン米大統領がロシアのプーチン大統領について『権力の座にとどまり続けてはいけない』と発言した問題が波紋を広げている。(中略)バイデン氏は『憤りを表現した』『個人的な感情だった』と釈明し、プーチン政権の体制転換の意図を否定したが、大統領の資質を問われかねない事態となっている」と言う。
そして「いくら個人的な『憤り』を表明したと釈明しても、米国はプーチン政権の態勢転換を狙っていると受け取りかねない今回の発言は、ロシアの攻撃をさらに激化させかねないリスクをはらむ」と言い、さらに「バイデン氏は最近『人殺しの独裁者』『悪党』『戦争犯罪人』『虐殺者』とプーチン氏への非難を強めていた。バイデン氏の発言は台湾の事例も含めて緊張関係にある中ロを強く刺激し、事態をあらぬ方向へと導きかねない」とまで言うのである。台湾にまで言及して、あらぬ方向とは一体何なのか。まことに隷中朝日らしい言い分で、中国だけでなくその御仲間のロシアにまで、遠慮・忖度の翼を広げているようである。意味不明な、無責任な言い方であり、単に不安をあおっているだけである。
]]> ロシアがキーフなど北部地域から撤退したが、4月3日に至ってブチャなどですさまじい虐殺・強姦を行っていたことが明らかになった。4月4日朝日夕刊トップ記事のリードは、「ロシア軍によるウクライナ侵攻をめぐり、ロシア軍から解放された首都キーウ(キエフ)近郊で、一般市民とみられる多数の遺体が見つかった。ウクライナの検察当局は3日、少なくとも民間人410人の遺体を確認したとしており、ロシア側の戦争犯罪を問う声が国内外で急速に高まっている。」とある。この虐殺の事実が明らかになった突端に、バイデンはもちろん、多くの国々の首脳が、戦争犯罪だと明言するようになったのは、まことに皮肉である。先の朝日の言い分のようだとすると、バイデン発言によって、「ロシアの攻撃が激化」して、このような虐殺が生み出されたというのであろうか。
しかしプーチン個人を「戦争犯罪人」と言っているだけでは、とても済むような問題ではない。そもそもプーチンを生み出したのは、現在のロシアの体制そのものである。ロシアの現実を直視すれば、プーチン政権の打倒だけではなく、体制そのものを打倒しなければならないのは、まったく当たり前の話ではないか。
かつてソ連が存在した時代において、アメリカのレーガン大統領は、ソ連を「悪の帝国」と決めつけて、その打倒を図った。つまり愚かなバイデンは自ら否定してしまったのだが、ロシアのプーチン政権はもちろんのこと、現在のロシアの体制を転覆させることは、まったく正義にかなっているのである。
今回の虐殺問題で、中国はロシアの言い分を報道して、虐殺の真実を隠蔽している(4月7日現在)。すなわちロシアのウクライナ侵略問題で、中国は完全に侵略者の側に就いたことが、まったく明白になった。この中国の体制も転覆させなければならないことは、言うまでもない。
← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)
2月24日、プーチン・ロシア大統領は、とうとうウクライナに対する侵略を開始した。侵略を正当化する根拠としては、いろいろあるが、このところ強調されているのは、「歴史」である。そこで出てくるのは、かつてキエフを首都とした、「キエフ公国」であり、それは「キエフ・ルーシ」と呼ばれて、ロシアの起源とするものである。したがってロシア民族とウクライナ民族は、単なる兄弟民族にとどまらず、一体の実質的な同一民族であるとの主張である。
この主張をプーチンは、すでに昨年7月、「ロシア人とウクライナ人の歴史的な一体性について」と題する論文を公表しており、25日の朝日の2面・7面の記事によれば、「我々の精神的、人間的、文化的絆は一つの起源にさかのぼる」、「真のウクライナの主権は、ロシアとの協力関係の中でのみ可能になる」などと述べているという。
侵略を正当化する理由として、「歴史」を利用すると言えば、すぐに想起するのは、中華人民共和国・中共の場合である。歴史の中でも民族的同一性を根拠とするのが特徴である。中共の場合は、民族概念そのものを二重構造にしておいて、個々の民族は下位の民族であり、その下位の民族のすべてを統合する民族概念として、「中華民族」概念を設定する。したがって下位の民族の表現を、「~人」ではなく意図的に「~族」と表現する。族と言う表現は、普通にはまともな民族や国家を形成できなかった、部族的な段階の人間集団を表す。アメリカインディアンの「アパッチ族」や、極めて原始的な生活をしている、アマゾン川の奥地の「ヤノマミ族」と言ったようにである。したがって族というのは、侵略を正当化するために作られた、侵略用語であり、究極の差別用語であると言わなければならない。
]]> ところで2月4日、「外交ボイコット」で話題になった、北京冬季五輪の開会式があった。聖火の最終ランナーの一人は、ウイグル人のジニゲル・イラムジャンさんがであったが、日本のメディアは、「ウイグル族」と表現している。最近日本のメディアでも、正確に「人」と表現する例もあるが、朝日新聞などは最もかたくなに、差別用語に執着している。これも朝日新聞伝統の、対中忖度体質の現れなのであろう。ロシアのウクライナに対する軍事行動を、はじめは「進出」と表現していた朝日新聞も、「侵攻」と表現するようになった。侵攻が完全に定着すれは、それは正式に「侵略」と言うべきである。中華人民共和国の場合は、その誕生に際して南モンゴル・東トルキスタン(ウイグル)・チベットを軍事力を使って併合した。それによって第二次大戦後の植民地体制が崩壊し、帝国が解体して支配下にあった民族が、次々と独立する時代に、その時代の趨勢とまったく逆行して、清帝国が再建されてしまったのである。
現在進行形で進んでいる、ロシアによるウクライナ侵略は、世界中がこれこそ侵略行為だと、認めたわけである。であるならば、中華人民共和国の成立に伴って行われた軍事併合も、何十年も前の出来事であっても、侵略行為と認定すべきである。国際社会は、この極めて単純・簡明な事実に目をつぶってきた。特に民主主義を奉ずる、西側諸国の責任は巨大である。アメリカはソ連崩壊後に、唯一の超大国を自任しながら、中共解体という使命を忘ただけでなく、わざわざ中共を経済大国・軍事大国に育て上げるという、本末転倒した大失策を演じた。
ロシアにプーチンが出現して、旧ソ連に本家帰りしたのも、中共が生き延びてきたからである。それにはアメリカだけでなく、ヨーロッパの責任も重い。特にドイツのメルケルは頻繁に中共を訪問して、密接な経済関係を築き、自国の経済成長に役立てた。それに対して日本は、中共にさんざん利用されただけである。
プーチンがしているのは、侵略であるから帝国主義である。つまりプーチンが目指しているのは、旧ソ連の回復だけでなく、かつてのロシア帝国の再建であろう。このロシア帝国には、フィンランドやバルト三国、ポーランドの東半分なども含まれていた。一方、シナ人は清帝国をかなり再建してしまっている。しかも清帝国の支配者は満州人であって、シナ人は征服されていた側である。まったく筋の通らないデタラメな悪逆非道が、まかり通っている。
今や中共のジェノサイドの暴虐も明らかになった。ロシアの侵略国家の犯罪も明確になった。今世界が認識しなければならないのは、中華人民共和国がその根底から侵略国家であるというその本質である。現代に生きる人間の責務は、この驚くべき世界史の不条理を、一日も早く終わらせることである。
← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)
2月1日に石原慎太郎氏が亡くなった。作家であり同時に政治家でもあった、石原氏の多彩な活動については、2月2日の各紙朝刊に報じられている。高齢なためか、事前に予定稿が準備されていたのだろう、その記事はかなり詳しい内容であった。中でも産経新聞が特に詳細であったのは、その論調から言っても当然のことであった。
その際に産経が石原氏の活動の中核と指摘しているのが、憲法改正問題であった。それをよく示しているのが、2日一面中央に掲載された、内藤慎二記者による一文である。比較的まとまっていると思われるから、以下に紹介しておくことにする。
見出しは「自主憲法こだわった政治家人生」あり、冒頭部分は、以下のように述べられている。「石原慎太郎氏の政治家人生は憲法を抜きにして語ることができない。『日本は国家としての明確な意思表示ができない去勢された宦官のような国家になり果てている』。平成7年、議員在職25年の永年表彰でこう嘆いて辞職しながら、東京都知事を経て、80歳で24年に国政に電撃復帰。その理由については周囲に『自主憲法制定を実現するためだ』と説明していた」。
さらに中段には「周囲をあっと驚かせる言動ばかりが目立つが、背骨として貫かれていたのは『自主憲法制定』だった。石原氏が好んで使ったこの表現は、『憲法改正』よりも抜本的かつ能動的なニュアンスがある。そこからは、現実的な感覚として骨身に刻み込まれた敗戦国の悲哀が透ける」として、東京裁判を傍聴にいって、進駐軍の憲兵に怒鳴られた経験が紹介される。
末尾では、石原氏がたびたび指摘していた、憲法の文章の助詞の誤用に対する違和感に及び、そこに政治家と文学者の結合を見ている。
ところで産経は実に数多くの石原発言を紹介しているが、私が石原氏の言葉として最も印象に残るのは、先に引用した「去勢された宦官のような国家になり果てている」という発言である。その言葉が発せられた平成7年は1995年だから、阪神淡路大震災の年であり、それから27年もたっている。
]]> 日本はこの1995年以降、いわゆるバブル経済の崩壊により唯一の自慢であった経済の繁栄にも失敗して、さらなる衰退・没落を経験して現在に至るわけである。つまり現在は宦官ですらなく、完全な精神奴隷と言うべき存在になっている。その端的な表れが、石原氏が死去した2月1日には、まさに国会で採択された人権決議に他ならない。以前から世界的に批難されている、中国のウイグルにおけるジェノサイドが問題であるにも拘わらず、「中国」と明確に名指しができず、「人権侵害」と言えずに、漠然とした「人権状況」と表現する、原案から極めて後退したものになってしまったのである。
2日の朝日新聞の石原氏に関する岡本智記者による評伝は、見出しに「改憲こだわり続けた末」とあるように、否定的に述べているが、文中には「なぜ、憲法にこだわったのか。10年ほど前に石原氏に聞いた際、返ってきたのが、交友があった三島由紀夫、岡本太郎、江藤淳らの名前だった。個性派ぞろいの活気ある日本が、気づけば『自信を喪失した自立性なき世の中になってしまった』と語った。その象徴が『米国に押しつけられた』日本国憲法というのだ」との記述がある。
つまり石原氏の考えは、三島由紀夫の思想とまったく同じであることだ。三島の憲法観については、本誌2020年12月号において、紹介したことがある。自決の年の2月19日に行われた、ジョン・ベスターによるインタビューだが、今まで知られていなかったものが、近年出版・公開された。それが『告白―三島由紀夫未公開インタビュー』(講談社、2017年)である。
三島が抱く戦後社会に対する圧倒的な不信は、「偽善」という言葉で表現さている。戦後日本のうわべだけを取り繕って、きれいごとで済ませる偽善に、たびたび言及している。そしてその偽善の根源こそ、日本国憲法に他ならない。三島は、「憲法は日本人に死ねと言っているのだ」とまで断言するのである。
三島が自決したのは50年以上も以前のことである。その後日本は憲法を改正できず、死に至る道を順調に歩んできたわけである。先に見たように、石原氏は平成7年に、去勢されて宦官のようになっていると言っているわけである。
その石原氏の言明からさらに20数年以上も経過して、日本の精神的な腐敗・堕落・混迷は、比較にならないほど深まっている。精神的には三島の言うように、憲法によって殺されてしまっているのかもしれない。少なくとも片足は棺桶に突っ込んでいることは確かだろう。
← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)
2月4日から北京冬季オリンピックが開始されるが、それに先立ってかねてから予想されていた、アメリカによる外交ボイコットが、12月6日に正式に表明された。ところで日本の岸田政権の対応はどうだったかというと、思った通りもたもたと逡巡して、方針を明らかにしたのは、12月24日になってからであった。
この経緯は、25日朝刊の朝日新聞「時時刻刻」欄に詳しい記事があり、 その記事のリードに、「政府は24日、北京冬季五論・パラリンピックに政府関係者を派遣しないことを表明した。同盟国・米国と足並みをそろえた事実上の『外交ボイコット』だが、中国にも配慮して、その言葉は使わず、理由も人権問題に言及せず『総合的な判断』と強調。米中双方の顔を立てたかっこうだ」とあり、要点がまとめられている。
表明は官房長官の記者会見でまず発表された。出席する人間は、あくまで国際オリンピック委員会からの招待であることを強調し、また派遣しない理由としては、人権問題を出さずに、「総合的に勘案して判断」した結果であると述べて、「外国ボイコット」という文言も使わなかったという。朝日ですら見出しで、「玉虫色」と表現するほどで、この問題に対する首相の極めて消極的な態度が、良く表れていた。
朝日は「日米双方の顔を立てた」と述べるが、この首相の判断で喜んだのは、もちろん中国の方であった。この記事では「中国外務省の趙立堅副報道局長は24日の定例会見で、『中国はJOCなどの関係者や日本選手が北京冬季五輪に参加するため訪中することを歓迎する』と日本を評価した。米英豪加の外交ボイコット決定時に『そもそも招待していない』などと突き放した対応とは、明らかに異なる」と説明されている。
この問題に関する朝日新聞の社説は、翌26日に出ている。冒頭近くで「粘り強い対話の努力とバランスのとれた賢明な外交が不可欠だ」と述べているから、「米中双方の顔を立てた」とする今回の岸田外交には、大いに賛成であるに違いない。ただしあまり絶賛することもできないので、「ただ、中国への配慮からか、その理由についてはあいまいな説明に終始している」、「しかし、香港の民主主義の弾圧や新疆ウイグルなどの問題に具体的に言及することはなかった」と一応不満な点を指摘するが、言うまでもないが、強い批判はあるわけがない。
これに対して、産経新聞の社説(主張)は、25日付けで直ちに出されており、これは朝日の社説と異なって、岸田政権の判断を、はっきりと正面から批判している。
]]> 判断の理由については、「派遣の見送り自体は当然だが、今回の岸田政権の対応は不十分だ。見送りの理由について、中国政府による人権侵害への抗議だという明確な説明を避けたからである。人権問題に関する外交的ボイコットの輪に日本が堂々と加わったとはいえず、残念だ。」として、「中国政府は表向き反発しても、腰が定まらない岸田政権は与しやすいとほくそ笑むかもしれない。人権侵害に苦しむ人々は日本の姿勢に違和感を覚えるだろう。」と指摘する。そして産経の社説は、岸田外交を次のように切って捨てる。
「岸田首相と松野博一官房長官は、ウイグル人や香港の人々の苦境には一言も触れなかった。人権侵害への憤りや弾圧にさらされる人々への同情を表明することもなかった。」
「浮かび上がるのは、外交的ボイコットをする同盟・友好諸国と、これに反発する中国を前に「右顧左眄してずるずると判断を遅らせ、中途半端な態度をとった岸田政権の定見のなさだ。これでは、バランス外交ではなく、コウモリ外交であるとみられても仕方がない。これが岸田首相の考える『新時代リアリズム外交』なら噴飯ものだ。」
要するに今回の岸田外交は、日本の外交史に残る一大失策を犯したと言わなければならない。今年は日中国交が成立してから、50年の記念すべき年であるが、この間に日本は外交において、一方的に中国にやられ続けてきた。その攻撃の凶器が歴史問題であって、南京事件や靖国参拝を利用することによって、日本は精神的に迫害され続けてきた。それが日中間のあらゆる面に影響して、日本の国益を大きく侵害するどころか、日本の運命すら危うくしてきた。首相は国益を考慮して判断したようなことを言っているが、それは真っ赤なウソであり全くの逆である。
アメリカの主導によって、中国が巨大な人権侵害大国、ジェノサイド国家であることが、明確化された今こそ、日本も中国を明白に批判し糾弾する側に立って、積年の精神的劣勢を覆さなければならなかったのである。日本はその絶好の機会を、むざむざと喪失した。
← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)
12月1日、安倍元首相は台湾のシンクタンクが主催する、シンポジウムにオンライン参加した講演で、「台湾の有事は日本の有事であり、日米同盟の有事でもある」と、明確に発言した。2日の産経の記事によると、「台湾各紙は同日、電子版などで安倍氏の講演の詳細を大きく伝えた」とある。同日の朝日の記事の末尾には、「安倍氏の発言を受けて、中国外務省報道官は1日の定例会見で『強烈な不満と断固たる反対』を表明。『外交ルートを通じ厳正な申し入れをした』と、強く反発した」とあって、産経と朝日の報道姿勢の違いがよく出ている。
中国が安倍氏の講演に対して、神経をとがらせたは、台湾をめぐる国際情勢の各種の変化が原因であることは言うまでもない。その代表的なものが、アメリカ議会議員による台湾訪問である。それについては、12月3日の朝日新聞朝刊が、総合面と国際面の両方で報道している。そこには訪台議員の中心人物である、マイク・タカノ民主党下院議員に対する、朝日新聞のインタビューが載っている。同氏による、民主党と共和党では訪問目的が違い、民主党は民主主義で共和党は軍事だとの説を紹介するが、そのすぐ後で、台湾に対するいじめや不公平な競争に反対する点では一致していると書かれているから、結局はおなじである。
この記事には朝日らしく、中国側の言い分が比較的詳しく述べられている。その朝日でさえ、アメリカは台湾を軍事防衛することを明言しない曖昧戦略をとってきたが、「米国の台湾防衛は『公然の秘密』となっているのが実情だ」と書かざるを得ないのは注目すべきである。
さらにアメリカは12月9日・10日に、オンライン形式による民主主義サミットを計画している。このサミットの具体的な成果については、本稿の作成時点では確認できないが、世界の110の国と地域が参加する予定で、台湾は招待されているが、中国・ロシアは招かれていないところがポイントである。
]]> 中国はこのサミットに対応して、その開催の直前4日に「中国の民主」という白書を公表した。そこには民主主義は普遍的なものではなく、各国の状況に応じて多様なものであるとの主張がなされている。さらに翌5日には、白書「アメリカの民主状況」を出して、アメリカそのものが民主的でないことを指摘することによって反論としている。もっともアメリカが民主的でないことに関しては、私も大いに賛成である。ただしアメリカが民主的でないと私が考える最大の根拠は、アメリカがこの三十年間、中国の経済発展を援助し、さらに軍事的膨張のみならず、悲惨な人権状況に、目をつぶってきたからである。最近はその非情極まる状態に、やっと転換を始めたに過ぎない。本当ならば三十年以前にソ連が崩壊した時点で、次は中国を崩壊させなければならなかったのである。しかしアメリカはその本来の使命を忘れて、中東のテロ対策にのめりこんでいった。
そのために中国は、現代におけるネオナチ国家に成長してしまった。以前から指摘したように、中国は赤色ファシズム国家であり、チベット・ウイグルなどを侵略し続けている侵略国家であり、大量虐殺であるジェノサイドを実践している国家であるから、三拍子そろったナチズム国家である、客観的にナチズム国家であるのに、世界がまるでその事実を認識していないだけである。中国はさらに世界中にコロナウイルスをばらまいて、バイオテロ国家の新たな「勲章」を獲得するに至った。
中国の犯罪的な台頭に協力した民主主義国家は、アメリカばかりではない。ヨーロッパの中でも、特にドイツである。メルケル政権時代の十数年間で、同首相は12回も訪中した。日本に来たのはホンのわずかに過ぎない。経済的に密接な関係を築き、一帯一路、陸上のシルクロードの終点はドイツであった。メルケルの中国重視政策の失敗はそれだけではない。中国が台頭することによって、せっかく曲がりなりにも民主化していたロシアが、プーチンの時代に中国と蜜月関係になり、旧ソ連に先祖返りしてしまい、ヨーロッパで脅威となったのである。
ところで我が日本はどうか。ドイツのように中国と密接な経済関係ができたが、日本は中国に一方的に利用されるだけで、ドイツのような自国の経済成長には結びつけられなかった。それだけでなく、日本領土の尖閣諸島に侵略宣言されるなど、最大の敵国を育ててしまったのであるから、最も愚かであったと言わなければならない。
要するに民主主義国家がなすべきことは、台湾を独立国として、明確に承認することであり、全力を挙げて守り抜くことである。
← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)
10月31日に四年ぶりの総選挙が行われ、事前の予想に反して自民党が健闘し、安定多数を維持した。この選挙に関しては、朝日新聞は政権へのネガティブキャンペーンを展開し、立憲民主党と共産党の共闘を応援していたが、その期待に反した結果となったわけである。その無念ぶりは11月1日朝刊の見出しに典型的に表れていた。
まず1面では、黒字白抜きの横型の大見出しで、「自民伸びず 過半数は維持」とあり、縦見出しでは「立憲後退 共闘生かせず」とある。初めから自民の大幅減少が予想されたのであるから、「伸びず」は明らかに意図的にごまかした表現である。なおこの横見出しはデジタル版では同じ16刷りなのに、「自公、290議席超す」と変えられている。
2面の大きな横見出しは、「自民苦い再出発」で、縦見出しでは「幹部、相次ぎ選挙区落選」、「首相笑顔なく『信任された』」とある。予想外の議席を獲得できたのだから、「苦い再出発」であるはずがない。「首相笑顔なく」とあるが、そこに掲載されている写真の首相は、大笑いしているわけではないが、かすかに微笑んでいるようにみえる。
朝日がまったく歓迎しない、自民党の健闘が起きてしまったために、朝日の報道の焦点は、議席の数よりも、「幹部、相次ぎ選挙区落選」の方となる。それに関して、11月1日の社説「岸田政権、継続へ」では、「世論調査などで、安倍・菅路線からの転換を求める声が多いなか、森友・加計・桜を見る会といった『負の遺産』の清算に後ろ向きな姿勢も影響しただろう。疑惑についての説明責任から逃げ回った甘利氏の落選は、『政治とカネ』の問題に対する有権者の厳しい評価に違いない。首相に幹事長を辞任する意向を伝えたのは当然だ」と述べている。
]]> この有力議員の小選挙区落選をさらに大きく取り上げたのが、11月1日の第一社会面であった。この面は広告がなく、殆ど全紙面を使ってこの問題を報じている。最上部には、横幅一杯の大見出しで、「自民重鎮に逆風」とあるのだが、殆ど見たこともない巨大な活字で、この活字は一つが縦横4センチほどもある。そして縦見出しには「甘利氏へ『説明しない』批判」とあって、中心人物は甘利幹事長であり、金銭問題への説明不足が落選の原因とする。記事には「甘利氏は岸田政権誕生の立役者で、安倍晋三氏、麻生太郎氏とともに『3A』と呼ばれる重鎮。ただ、2016年1月の経済再生相辞任につながった現金授受疑惑への批判が常につきまとい、幹事長就任後は、野党から説明責任を果たしていないと追及されていた」とある。
しかしそのあとで「現金授受疑惑が浮上した翌17年の前回衆院選でも希望の党から立った太氏に約6万票差のダブルスコアで圧勝し、地盤が揺らぐことはなかった」とあるのだから、今回の小選挙区落選は、幹事長になったことをきっかけとして、野党が蒸し返して追及し、さらにそれ以前に虐日偽善メディアが大騒ぎした効果が、見事に発揮されたものであることがわかる。
甘利バッシングには、過去の現金疑惑が徹底的に利用されたが、これは安倍・菅政権を執拗に攻撃してきた、虐日主流メディアの手口がそのまま流用されたものである。今回の選挙においても、主流メディアは森・加計・桜の会問題を、何度も何度も蒸し返して言及した。最近ではそれに「コロナ失政」が加わっており、神奈川県の横浜市長選挙では、この方が最大限に使われて大成功を収め、菅首相を辞任に追い込んだ。総選挙では、朝日は自民党の大物議員が落選したことに、1日の社会面のように、大喜びしたのであるが、野党側も小沢一郎氏・辻本清美氏のような落選者を出したことは、まことに皮肉であった。
さらに皮肉なのは立憲民主党の最高幹部である、枝野代表と福山幹事長が敗北の責任によって、辞任に追い込まれたことである。朝日は枝野代表の辞任表明以前に、11月3日の社説で、辞任を要求しているのは、可愛さ余って憎さが百倍ということなのだろ。一方、共産党の志位委員長は居座り続けているが、これに対して朝日は批判しないようだ。
それにしても朝日新聞の甘利落選の喜び方は、まことに異常なほどである。そこにはそれなりの理由があるだろう。甘利氏は今回の岸田内閣誕生の最高功労者であり、さらに岸田内閣の看板政策である、経済安保は甘利氏が中心となり、積極的に推進してきた。この経済安保に日本が目覚めることは、経済ナショナリズムの復興であり、ナショナリズムが大嫌いな朝日新聞が好ましく思うわけがない。そして次期首相の最有力候補を、差し当たって失脚させることができたのだから。
← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)
自民党新総裁に岸田文雄氏が選出された。菅前首相が自ら辞任したためである。菅氏はメディアの権力によって、辞任に追い込まれたと言ってよい。菅氏はコロナ問題において、ワクチンの接種など、それなりに成功を収めていたにも拘わらず、朝日をはじめとする主流メディアは、成果を全く認めずに徹底的に批判した。それはまさに誹謗・中傷に満ちたものであったといえる。それによって内閣支持率は急速に下落して、首相の地元である横浜市長選挙まで、大敗を喫した。ショックを受けた首相は、自ら迷走を繰り返して、辞任のやむなきに至った。
オリンピック・パラリンピックの開催においては、、主流メディアの中止大キャンペーンにも拘わらず、これを実際に遂行した。ただし残念なことは、無観客開催にしてしまったことである。そのためチケット収入が消し飛んで、大幅な赤字を生み出すことになった。この点は、頑張り切れなかったわけである。
それによって日本が優勝したソフトボールも野球も、日本人は直接に観戦・応援することができなかった。オリンピックが終わると、プロ野球は公式に開催されて、多くの観客が観戦している。その人数は新聞のスポーツ欄に明記されている。無観客となったパラリンピック期間中も、そこには数千人から一万人を超える数字が示されているのである。
菅政権は短期間に各種の実績を挙げたが、反対に大きな失策も犯した。その代表的な例は脱炭素問題に関する、無謀な公約である。温室効果ガスを、2030年までに、13年比で46パーセント削減、2050年には全廃するというもので、これには大いに疑問が提出されている。そうなれば現在の日本で唯一の基幹産業である自動車産業に大打撃を与えて、日本は完全に没落するという。杉山大志氏など多くの論者が、口を酸っぱくして主張している。
]]> 脱炭素の根拠となる気候変動問題は、主流メディアである朝日新聞やNHKで熱心に報道されているが、極めて疑わしいものである。特に少女グレタを使って、世界的な大キャンペーンが展開されていることこそ、怪しいことの何よりの証拠である。子供を使った煽動であるから、グレタ嬢はまさに「環境紅衛兵」と言うべき存在である。そもそもグレタ嬢は飛行機には乗らないと宣言して、ヨットで大西洋横断などをしていた。ところで現在、コロナのおかげで、世界の飛行機輸送業界は大打撃を受けている。それによって二酸化炭素排出量は、きっと大幅に改善されたのであろう。つまりグレタ嬢は、大喜びしているに違いない。そうであるのなら、ダメージを受けてせっかく衰退した航空輸送業界を、環境改善のためには、復活させてはいけないのではないか。環境問題に熱心な朝日新聞などは、そう主張すべきであるのに、一向にそんな動きはないようだ。
菅首相は、昵懇な環境大臣・小泉新次郎氏や、原発に批判的な河野太郎氏などに引きずられて、無謀な公約をしてしまったのだろうか。新しい岸田政権で、小泉環境大臣はいなくなったが、主流メディアに逆らうことは難しそうである。
ところで10月4日に新内閣が発足した。その名簿を一見して、やはりと失望を感じざるを得なかった。公明党の議員が、またしても国土交通大臣の地位を引き継いでいたからである。連立政権を構成する与党であると言っても、これは自民党による巨大な失策である。国土交通省は極めて重要な官庁であり、その大臣は内閣の中でも重職である。日本の国土と交通に関することだけでなく、インバウンドとして重要な観光、そして海の警察である海上保安庁まで管轄しているからである。
その重要閣僚を、公明党がずっと独占していることは、極めて異常だと言わなければならない。これは以前に一度あったことはあるが、第二次安倍政権の時代から公明党が独占することが定着してしまった。国土交通省という、利権が多数存在すると思われる、巨大官庁が、一つの政党に独占されているのは、真に驚くべきことである。とくに中国との間で、尖閣をめぐる海上紛争が続いているのに、その警備を担当している海上保安庁を、中国と癒着関係にある公明党が独占しているのは、危険極まりない。いつまでも公明党と連立政権を続けることは、現在の自民党の最悪の犯罪である。
さらに日中関係で心配なのは、例の習近平を国賓として招待する問題である。昨年春に計画されていた習近平来日は、コロナによって実現しなかった。これこそコロナによる、ただ一つの僥倖である。岸田政権において、どのように扱われることになるのか。大いに危惧されるところである。
← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)