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2009年9月 Archive

完全に自己喪失した日本

『月刊日本』2009年10月号 羅針盤

 総選挙で民主党が勝利し、とうとう政権交代が現実のものとなった。これによって日本の政治が大きく転換するようなことが言われているが、私には全くそのようには思われない。すでに自民党政権時代に異常になっていた日本の政治が、今後民主党政権になることによって、その異常性がいっそう加速度的に深化すると考えれば間違いないだろう。
 私は、この二・三十年間の、政治のみならず日本の全体的異常化とは、日本が日本でなくなること、日本の国家的・民族的なアイデンティティの崩壊だと捉えている。その崩壊は自然に起きたものではなく、意図的に仕掛けられたものであり、つまり計画的な破壊謀略である。その破壊の凶器が例の歴史問題であり、一九八二年の第一次教科書事件から開始された。保守を自認する人々は、東京裁判史観が戦後一貫して強力に存続したように説明するが、私の経験から言ってそれは正しくない。東京裁判史観という日本犯罪者史観はいったん弛緩していたが、教科書事件以後に強固に再構築されたものである。

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