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完全に自己喪失した日本

『月刊日本』2009年10月号 羅針盤

 総選挙で民主党が勝利し、とうとう政権交代が現実のものとなった。これによって日本の政治が大きく転換するようなことが言われているが、私には全くそのようには思われない。すでに自民党政権時代に異常になっていた日本の政治が、今後民主党政権になることによって、その異常性がいっそう加速度的に深化すると考えれば間違いないだろう。
 私は、この二・三十年間の、政治のみならず日本の全体的異常化とは、日本が日本でなくなること、日本の国家的・民族的なアイデンティティの崩壊だと捉えている。その崩壊は自然に起きたものではなく、意図的に仕掛けられたものであり、つまり計画的な破壊謀略である。その破壊の凶器が例の歴史問題であり、一九八二年の第一次教科書事件から開始された。保守を自認する人々は、東京裁判史観が戦後一貫して強力に存続したように説明するが、私の経験から言ってそれは正しくない。東京裁判史観という日本犯罪者史観はいったん弛緩していたが、教科書事件以後に強固に再構築されたものである。

 東京裁判史観の本家本元はアメリカであるが、その再構築の主役はシナ人・朝鮮人である。シナ人の場合、中共だけでなく、東南アジアの華僑や、シナ系アメリカ人も参加している。朝鮮人は韓国・北朝鮮、そして南北の在日はもちろんのこと、在外韓国人も活躍している。つまり歴史問題とは、全世界のシナ人・朝鮮人による、日本民族に対する陰湿にして卑劣な、偏見・迫害であり、要するに究極の民族差別である。したがってそれは精神へのテロ攻撃であり、精神侵略である。これこそが「歴史問題」なるものの本質である。
 ではその目的は何なのか。それは張本人の韓国人に説明してもらうのが、分かりやすいであろう。韓国のマスコミが、以前しきりに報道していたのが、日本統治時代に山の頂に打ち込まれた鉄杭の話である。日本統治時代に打ち込まれた鉄杭の目的を、風水説によるのであろうが、それによって「韓民族の精気を断つ」ためだと、韓国マスコミは解説した。つまり朝鮮民族の民族精神をだめにする、骨抜きにするのが目的だったと言うのである。
 そしてこれこそが、シナ人・朝鮮人が、歴史問題で日本を攻撃する目的と完全に同一である。この精神侵略の目的は、約三十年間のシナ人・朝鮮人の努力と、日本の政治家・官僚の愚かさによって、多大な成功を収めた。自民党政権はこの三十年間、シナ人・朝鮮人の攻撃に屈服を重ね、小泉首相が靖国問題だけでは抵抗を見せたが、その他の歴史問題はすべて受容した。その後の安倍首相・麻生首相は、歴史問題への反撃の期待を抱かせたが、結局、河野談話・村山談話を継承し、靖国参拝も全くできなかった。この事実こそ、シナ人・朝鮮人の精神侵略が、巨大な成功を勝ち取った、何よりの証拠である。まことに不様極まりない醜態であり、日本民族としての巨大な恥辱である。
 以前、シナ人・朝鮮人がよく言ったのは、自分たちは個人個人では日本人より優れているが、日本人の団結力、一体となる力にかなわない、と言うことであった。しかし最近こんな話はついぞ聞いたことがない。つまり彼らシナ人・朝鮮人は、日本人の歴史問題における体たらくぶりを見て、日本人の民族意識のなさ、民族としての団結力のなさを、明白に認識したのである。民族意識の状態において、日本とシナ・朝鮮の関係は、百年前とはちょうど逆である。民族的団結心を喪失した日本人など、単なる烏合の衆に過ぎない。
 日本人がシナ人・朝鮮人による精神侵略にやられてしまった有様は、一般的ないじめの心理的メカニズムと、基本的に共通している。いじめにおいて最も重要なことは、いじめられたら最初に決然と対決し、相手の要求を拒否することである。いったん相手の不当な要求を受け入れると、際限なくいじめはエスカレートする。日本の政府自民党政権は、最初の一九八二年の第一次教科書事件で、この最大の誤りを犯した。第一次教科書事件とは、その年の教科書の検定において、侵略という表現が進出と書き換えさせられたと報道され、それを中共から抗議を受けたことにある。それが全く事実に反していたにもかかわらず、当時の宮沢官房長官が主導して、検定において近隣諸国の感情を配慮するという、近隣諸国条項を作ってしまった。以後、靖国参拝問題、慰安婦問題などなど、続々と歴史問題が続出するごとに、精神的隷属度は高まっていった。先述した小泉首相の靖国参拝という例外はあったが、安倍・麻生両首相の屈服で、隷属体制は確立した。
 本来政権交代は、自民党が犯した最大の失政である、歴史問題による精神奴隷化状態から脱出する、絶好のチャンスであるはずである。しかし事態は全く逆方向に推移している。民主党が掲げている政策は、靖国代替施設の建設、国会図書館の「恒久平和調査局」設置、慰安婦への公式謝罪・補償など、精神奴隷状態の一層の確立・強化をもたらす政策が目白押しである。
 また大成功を収めたシナ人・朝鮮人による精神侵略は、次ぎなる日本侵略への下準備であり、その次なる侵略こそ、軍事力を使わない直接侵略である人口侵略である。この人口侵略においても、自民党政権時代から国際化と称して、諸政策が遂行・準備されていたのだが、民主党政権では、共生の名の美下に、より一層明確に打ち出されている。すなわち、外国人参政権であり東アジア共同体である。そして何よりも鳩山の、「日本列島は日本人だけのものではない」と言う言明である。
 それにしても、民主党が設置する「国家戦略局」とは、最高のブラック・ユーモアであると言わざるを得ない。現在の日本人には国家意識も、その根底の民族意識すら存在しなから、とても国家の体をなしていない。精神奴隷には自己の主体性などないのであり、自分が無い完全な自己喪失状態なのだ。自己が無ければ、戦略などあるはずないのである。

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