- 2014年3月 4日 18:12
- 時評
【ホロコーストの語源】
ナチスによるユダヤ人大虐殺のことを「ホロコースト」と称する。ではなぜユダヤ人大虐殺が、ホロコーストなのであろうか。ちなみに、良くも悪くも最も有名な国語辞典である『広辞苑』のホロコーストの説明では、「大惨害、大虐殺。特にナチスによるユダヤ人大虐殺を指すことが多い。ユダヤ教の全燔(はん)祭の丸焼きの供物が元の意味。」とある。この「燔」という文字を漢和辞典で引いてみると、「①焼く。②あぶった供え物、焼いた肉」とある。
【ドイツのホロコーストは「毒殺」という化学処理】
例のウィキペディアの冒頭の説明では、「第二次大戦中のナチスドイツがユダヤ人などに対して組織的に行った大虐殺を指す。元来はユダヤ教の宗教用語である燔祭(獣を丸焼きにして神前に供える犠牲)を意味するギリシャ語で、のち転じて火災による大虐殺、大破壊、全滅を意味するようになった」とある。
つまりホロコーストとは、もともとユダヤ教の用語であったので、ユダヤ人虐殺を表現する言葉として使われるようになったのである。神への供物としては、生贄(いけにえ)というのは生きたままの動物を殺して捧げるのだが、ユダヤ教の場合は丸焼きにしてから捧げたわけである。
しかしちょっと考えてみると分かることだが、ホロコーストという言葉は、ナチスのユダヤ人大虐殺を表現する言葉として、それほど適切であるとは言えない。なぜならば、ナチスによるユダヤ人大量殺害の方法は、ガス室を使った毒殺であることが、最大の特徴であるからである。これは発達していたドイツの化学工業を利用して、極めて能率的に大量殺害を可能にしたのであり、まことにドイツ人らしいやり方であった。火葬もやったかもしれないが、それはあくまでも死体の処理であり、根本的に毒殺であって、焼き殺し・焼殺ではない。
【米国の空襲は生きた人間の焼き殺し】
しかし第二次世界大戦において、正真正銘の焼き殺し・ホロコーストは別にあった。それこそ、アメリカによる我が国に対する残虐極まりない「空襲」である。さらに日本では原爆の残忍性ばかり注目されるが、その反面、一般の空襲による被害については、驚くほど軽んじられていると思わざるを得ない。
アメリカは日本の都市に対して、いわゆる「絨毯爆撃」を行った。絨毯爆撃とは絨毯を敷き詰めるように、徹底的に爆弾の雨を降らすことを言う。しかしこの絨毯爆撃という言葉では、アメリカによる空襲の残虐さが、正確に表現されているとはとても言えない。
アメリカによる空襲の最大の特徴は、普通の爆弾ではなく焼夷弾を大量に使用することにあった。B29のような巨大爆撃機に焼夷弾を大量に積み込んで、木造で作られた日本の都市を焼け野原にした。しかもその爆撃方法は、まず周辺地域を大きく円を描くように爆撃して火炎の巨大な輪を作り、人間をその中に閉じ込めておいてから、更に中心部分も爆撃すると言う、残虐極まりないやり方であった。それによって、老若男女を問わない一般市民が、紅蓮の炎に包まれて苦しみ悶えながら、焼き殺されていったのである。これこそホロコーストそのものではないか。ウィキペディアの解説にある、「火災による大虐殺」に、まさにドンピシャリである。
【ホロコースト記念博物館に東京大空襲の特別ブース設置を】
このような空襲は、昭和20年3月10日の、一夜にして10万人の犠牲者を出した東京大空襲が有名であるが、東京だけでも大規模な空襲は外に何回もあり、大阪・名古屋の大都市のみならず、地方の都市でも凄まじい空襲を受けているのは言うまでもない。
世界各地にホロコーストを記念した博物館は多数あるようだが、とくにアメリカのワシントンには、アメリカ国立の「米国国立ホロコースト記念博物館」という、世界最大の施設がある。ユダヤ人虐殺の博物館であるが、ぜひとも東京大空襲をはじめとする、日本空襲による大虐殺の展示を実施すべきである。それこそホロコースト博物館の名称にもっともふさわしいのであるから。日本人は、ケネディ・アメリカ大使を通じて、日本空襲の展示を行うことを、アメリカ政府に強く要求すべきである。
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