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酒井信彦の日本ナショナリズム

スポーツの時だけ「ニッポン」を絶叫する人たち

『月刊日本』2018年8月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年7月22日

 ロシアでワールドカップ・サッカー大会が開催され、日本も参加したために、連日にわたって大量の報道が繰り広げられた。結局、戦前の予想を裏切って、予選リーグを通過したものの、トーナメント第一回戦で敗退する結果となった。この間、西野監督の采配については、評価したり批判したり、手のひら返しが繰り返されて、まことににぎやかのことであった。この報道の在り方は、あまりにも騒ぎすぎであると、言わざるを得ない。

 ワールドカップ・サッカーは、ナショナリズムを発揚する舞台になっていることは、現実問題として存在しているだろう。その意味で今度の大会において、極めて興味深い出来事があった。6月22日に行われた、スイス対セルビア戦で、スイスのシャキリとシャカの両選手が、ゴールを決めた際に、両手を胸の前で交差するポーズをとった。この両選手はスイス国籍ではあるが、旧ユーゴスラビアのコソボの出身で、アルバニア系であるという。両手の交差は、アルバニア国旗にある双頭の鷲をイメージしており、これはアルバニア・ナショナリズムの発揚であるわけで、とくに相手がセルビアであったことがポイントである。本人たちは説明しなかったようだが、結局、25日になって国際サッカー連盟の規律委員会は、両選手に1万スイスフラン、さらにもう一人に5千スイスフランの罰金を言い渡した。また事前に緊張を高める言動のあったセルビア側にも、それなりの罰金が科されたという。故国を離れても、民族意識を強固に持ち続ける人々が、この世界には存在するのである。

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マスコミ村のセクハラを追及せよ

『月刊日本』2018年7月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年6月22日

 5月21日、谷口真由美・大阪国際大准教授が代表の、「メディアにおけるセクハラを考える会」が、日本外国特派員協会で記者会見して、メディア関係者35人から調査した150のセクハラ事例を発表した。翌22日の朝刊で新聞各紙が取り上げているが、その日の同じ紙面には、結局辞任に追い込まれた、狛江市長のセクハラ問題が、写真入りで大きく取り上げられているのに、考える会の記事はずっと小さい。問題の重大性から言えば、東京都の一小規模市の首長の問題より、メディア全体に及ぶセクハラ疑惑であるのだから、はるかに大きいはずである。そうしないのは、メディア自身に直接的にかかわる問題だからである。

 ところで各紙の記述は同一ではないが、朝日新聞の特異性がひときわ目に付いた。それは加害者の職業・身分についての部分で、毎日は「セクハラを受けた相手は社内の上司や先輩が40%と最多。出演タレントや他社の記者など社外関係者も29%に上った。警察・検察関係者からの被害は12%、国会議員ら政治関係者が11%、公務員が8%だった」とある。この数字は項目に異同があるが、読売・東京も紹介している。

 では丸山ひかり記者による朝日の記事は、これをどう説明しているかというと、「加害者の内訳は、警察・検察関係者や議員などの取材対象者のほか、上司や先輩らも少なくなかった。セクハラを職場で相談しても、適切に対応されなかったケースがほとんどだったという」とあるだけで、具体的な%を示さず、社内が最多である事実を隠蔽しているし、その次はメディア関係者であることも、言及していない。

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女性専用車という偽善

『月刊日本』2018年6月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年5月22日

 5月6日の朝日新聞朝刊の「憲法を考える」の連載で、「揺れる価値」シリーズの第四回目、見出しが「女性専用車に『逆差別』主張」との記事がある。これがとても面白い。

 リードは「偏見やハンディを克服しようと特別な対応をすると、『逆差別だ』と言われてしまうことがある。憲法14条は『法の下の平等』と『差別の禁止』をうたうが、空気のように社会に残る差別が、見えにくくなってはいないだろうか。男女差別を例に考えた。(高重治香)」。

 記事の冒頭は、「2月、東京メトロ千代田線の女性専用車に男性たちが乗り、電車が遅れたというニュースがあった。男性たちのグループのブログには、『男性差別』『痴漢でない男性を追い出すのは憲法14条違反』と書かれていた。たった1両の専用車が、憲法を持ち出すほど許せないのはなぜなのか。メンバー2人に会い、3時間話した」とある。

 65歳の代表は、就職に苦労したので、年齢制限をなくす運動に取り組んでおり、女性に対するクオーター制にも反対している。もう一人の43歳の男性は、男として冷遇されてばかりだと話したという。高重記者が「女性は差別されてきた歴史があり、地位を引き上げても男性と平等になるだけでは」と聞くと、代表は「社会全体に女性差別があったのは戦前の話。落ち度がない今の男性が差別されるのは、不合理だ」と答えたという。3時間も取材した割には、相手の言い分は少な目だが、代表の主張はリーズナブルである。

 高重治香記者のメンタリティーは、次のような記述にもよく表れている、「差別は今も社会に充満する。(中略)救命のため土俵に上がれば下りろと言われる。衆議院議員は約9割が男性で、記者がセクハラを訴えると、大臣が『はめられたというご意見もある』と言い放つ・・・。」最近の話題も盛り込んだ、極めて感情的な表現である。

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日本にはびこる「精神的中国人」

『月刊日本』2018年5月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年4月21日

 3月21日の産経新聞に、北京の三塚聖平特派員による、実に興味深い記事が出ている。その見出しに「旧日本軍賞賛『精日』が話題に」「「王外相『中国人のくず』」。記事の冒頭は、「旧日本軍の軍服を着て『日本軍国主義』など日本を称賛するような行動をとる『精日』(精神的日本人)と呼ばれる中国人の存在が、20日に閉幕した全国人民代表大会で話題になった。閣僚が『中国人のくず』と非難したほか、『精日』の処罰を求める意見も出た」とある。

 この記事によると、ことの発端は、2月に南京で旧日本軍の軍服を着た人間が写真を撮り、それをインターネット上で公開したことで、「精神的日本人」であると、批判が集中していたらしい。

 それがさらに大きな話題になったのは、3月8日の全人代閉幕後の王毅外相の記者会見で、この件について質問を受けた同外相が、怒りをあらわにして「中国人のくず」だと罵ったからである。

 この問題については、翌日3月22日の産経新聞でも取り上げられている。それは「石平のチャイナウオッチ」欄で、最初の問題発生の状況および事件の経緯を、比較的詳しく説明しているので、紹介しておく。

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論語読みの論語知らず

『月刊日本』2018年4月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年3月22日

 小川栄太郎氏の朝日批判の著作が気に食わないとして、提訴している朝日新聞だが、ケント・ギルバート氏の本に対しても、よく売れていることに対してイチャモンを付けている。それは3月6日朝刊の、「ケント・ギルバート氏の中韓本 売れる理由は」という記事である。ギルバート氏の『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』と言う本が、昨年の新書・ノンフィクション部門で47万部とトップだったという。

 儒教と言えば思い出すのは、東アジアの経済成長を説明する理屈として、儒教文化圏なる概念が使われたことがあった。またこれと関連して、東アジア共同体の構想もあった。しかし中共の覇権主義の顕在化によって、昨今で儒教文化圏も東アジア共同体も、とんと聞かれなくなった。

 儒教に対する親近感は、シナ文化を長く受容してきた日本には基本的に存在し、それは現在でも結構継続していて、児童も含めた論語の根強い流行はその表れてあろう。ギルバート氏の本の特徴は、いままでプラス価値として説明されてきた儒教をマイナス価値として、説明したことにあるのではないか。その意味で、ギルバート氏の主張は日本人にとって、新鮮であったのだろう。

 ところで、私はギルバート氏の本を読んでいないので、具体的にどのように説明しているか知らないが、この本のタイトルや朝日の記事から見るかぎり、ギルバート氏の儒教に対する捉え方には、かなり誤解があるのではないかと思われる。タイトルは「儒教に支配される悲劇」であり、記事には「中韓では『儒教精神から道徳心や倫理観が失われ』『自分中心主義が現れて』きたと指摘」とあるが、儒教は本来、道徳心や倫理観についての教えであったはずである。すなわちシナ人や朝鮮人の悲劇は、儒教そのものに原因があるのではなく、逆に儒教の教えを全く理解せず、ましてや実践できないことにあると言うべきなのである。

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