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日本人の精神を蝕む「白痴的平和主義」

『月刊日本』2022年10月号 酒井信彦の偽善主義を斬る   2022年9月22日

 8月11日の産経新聞・オピニオン面の「直球&曲球」欄に、登山家の野口健氏が、「『自分の国は自分で守る』覚悟と行動」と題する見出しのコラムを書いている。

 まず冒頭で、「防衛省オピニオンリーダーを拝命してから、駐屯地を視察、先日、防衛省にて『令和4年版防衛白書』についてレクチャーを受けた。説明を受けて愕然とした。中国が公表している国防費の増加スピードはこの30年間で約39倍。それに対し、日本の防衛関係費は約20年間で微増。今年度の日本の防衛関係費が5兆円強に対し、中国政府が公表しているだけで国防費は約25兆円。ざっと5倍である。」と述べている。

 さらに、台湾有事の際の弾薬不足や、ウクライナ戦争に対する、素早いドイツの対応などに言及して、結びの言葉は、「この手の問題提起をすると『戦争をしたいのか!』との意見が寄せられるが、ウクライナが証明しているように『まずは自分たちの国は自分たちで守る』という強い覚悟と行動がなければ、いざというときに他国からの助けも得られにくい、と心得た方がいいだろう」という。かなり控えめな言い方になっているが、まったく当たり前のことを言っているわけである。

 それから三日後、8月13日の産経新聞の一面、連載記事である「主権回復」の第4部「戦争とどう向き合うか2」に実に興味深い棒グラフが掲載されている。それは、「世界価値観調査(2017~20年)の「戦争になった場合、あなたは国のために戦えますか?」である。

 記事の説明では「問われているのは、民間人も含む国ぐるみの『守る』意識。その点で日本の課題は大きい。世界100カ国近くの社会学者が協力し、各分野に関する各国・地域の意識を調査する『世界価値観調査』(2017~20年)によると、『戦争になった場合、国のために進んで戦いますか』との質問に『はい』と答えたのは、日本が最低の13・2%にとどまった。」とある。

 100カ国すべてで調査したのか、判然としないが、グラフに表示されているのは、15カ国の分である。

 さらに「調査は先進7カ国(G7)で2番目に低いイタリアでも『はい』は37・3%。日本の低さが際立った。一方、日本で質問に『いいえ』と答えたのは48・6%、『わからない』が、38・1%を占めた」と続けている。

 日本の場合、「はい」がダントツに低いのであり、「いいえ」もそれなりに多いのであるが、「わからない」の多さもとびぬけている。これらの点を他の国と比べて述べてみよう。「いいえ」が多い国は先進国の中で結構多い、イタリア・カナダ・ドイツ・オーストラリアなどである。このうちカナダの「いいえ」は、日本よりはるかに多い。だが「はい」は4割を超え、「わからない」は無い。

 アメリカ・イギリス・フランスのはい」は6割とそれを超える位である。調査時期のためなのか、ウクライナ戦争は反映していないようで、ウクライナの「はい」は6割に達しておらず、ロシアでも、韓国と同じで6割を超えているが7割に達していない位である。それに比較して、ポーランド・フィンランド・スウェーデンの三か国は、7割から8割になっており、ロシアへの警戒心がすでに高まっていたことがわかる。

 なお、15カ国中で最も「はい」が多いのは中国で約9割の数字が示されている。

 要するに、野口氏の期待にも拘わらず、戦争になって自ら戦おうとする日本人、「自分の国は自分で守ろうとする日本人」は、少し前の調査であるが、諸外国に比較しても、ダントツに少ないのである。これは第二次大戦の敗戦の直接的な影響というよりも、長年にわたるメディアの洗脳教育の、巨大な成果と言ってよいだろう。今年の夏も、70年も前の戦争を、悲劇として、しかも情緒的に回顧する報道が、新聞でも放送でも、主要メディアにあふれていた。

 今年は例年に比べて、ロシアによる明白なウクライナ侵略があり、またペロシ訪台問題もあった。この訪台で習近平の面目は丸つぶれになったが、中国は台湾を包囲する形で、大規模演習を敢行した。そこで弾道ミサイル5発が、日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したのであり、台湾有事が文字通り日本有事になった。にもかかわらず、日本では目の前に勃発した現実的な危機にはまるで盲目で、安倍暗殺事件に連動した、旧統一教会問題で大騒ぎしている始末である。

 昨今の状況を見ていると、米定憲法に淵源する、まったくリアリティーを欠いた、「白痴的平和主義」が、いかに日本人の精神を蝕んで定着してしまっているか、改めて思い知らされるのである。

 

sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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