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朝鮮戦争の意義を無視するな

『月刊日本』2014年7月号 羅針盤 2014年6月22日

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五月十五日に、安倍首相が集団的自衛権の行使の検討に踏み出すことを明言してから、集団的自衛権関連の記事が、洪水のように出現している。それは朝日新聞に顕著であって、毎日毎日止むことがない。その内容はほとんど的外れであるが、私が特に異常性を感じたのは、五月十七日に掲載された、朝鮮戦争における日本人唯一の戦死者とされる人物に関するものである。見出しは、「弟は米軍のために戦死した」「朝鮮戦争で極秘の機雷除去中に犠牲」「遺族『国民不在、議論を』」とある。

朝鮮戦争の際、一九五〇年十月に「日本特別掃海隊」が組織され、北朝鮮が仕掛けた機雷を、国連軍と共に除去した。海上保安庁に勤務していた、当時二十一歳の中谷坂太郎さんは、掃海艇が沈没して、一人犠牲となった。

この記事では佐藤達弥記者が、兄の藤市さんにインタビューしている。それによると、「核実験や弾道ミサイルによる挑発を繰り返す北朝鮮や尖閣諸島をめぐる中国との対立を考えると、藤市さんは『集団自衛権を認めてもいいのではないか』と言う」とある。しかしこれでは朝日の意向に反するので、次に「一方で、弟のような『戦死者』を二度と出してはならないとも思う」と続けさせる。

藤市さんは、結構まともな感覚の人物らしいのに、発言はかなり歪められている感じである。そもそも見出しに、「弟は米軍のために戦死した」とあるが、藤市さんは本当にこんなことを言ったのか。朝鮮戦争とは、別にアメリカが国益のために発動した戦争ではあるまい。北朝鮮が朝鮮統一のために開始した戦争であり、アメリカは対応しただけである。

しかも朝鮮戦争とは、極めて意義のある戦争であった。したがって日本人唯一の戦死者である中谷坂太郎さんこそ、まことに尊い意義のある犠牲者であった。実は朝鮮戦争の意味をキチンと考えることこそ、戦争のプラスの価値を認識し、盲目的・空想的反戦平和主義の虚妄を打ち破るための、絶好の手段になりうるものである。

朝鮮戦争は一九五〇年六月二十五日の北朝鮮軍の侵略から始まり、準備のなかった韓国・アメリカ側はたちまち半島南東部に追いつめられた。そこで九月十五日、仁川上陸作戦で形勢を逆転して、今度は北朝鮮を国境付近まで追いつめる。しかしこの時中共が参戦して、結局元の分断状態に戻って休戦する。しかも現在でも休戦状態は継続している。

もし国連軍側が負けて朝鮮全土が共産化していたら、その後の東アジアの歴史はどうなっていただろうか。朝鮮戦争における最大の受益者は、もちろん韓国国民である。韓国政府は生き残り、独裁政権を経て民主化し、経済成長を遂げた。しかし我が国も朝鮮戦争の多大なる受益者なのであることは、全く認識されていない。それは戦争特需で経済復興したというだけでない。共産化の悲劇を免れることができたのが、最大の意義である。

韓国が消滅していれば、我が国は大陸・半島の共産主義国家の脅威に、直接対峙しなければならなかった。しかもそうなれば、日本国内の共産主義勢力が、弥が上にも勢いづいて、日本も共産主義になっていたかもしてない。そうすれば、日本国民はとてつもない苦難の運命に見舞われていたに違いないのである。共産主義に熱狂した日本人は多大に存在したのであり、現在はそれらの人間は、完全に知らん顔をしているが、その危険性は十分にあった。

ところで国連軍には、韓国・アメリカの外にも多くの国々が参加していて、全部で22か国にもなる。この事実も現在ではほとんど忘れられている。マスコミが朝鮮戦争の事実を、キチンと回顧しないからだ。ヨーロッパからは、イギリス・フランス・オランダ・ベルギー・ギリシャの外に、本物の小国であるルクセンブルグまで参加している。英連邦の国ではカナダ・オーストラリア・ニュージーランド・南アフリカがあり、アフリカのエチオピア、南米のコロンビアがある。アジアではフィリピンとタイ、それにトルコが参加している。特にトルコは、アメリカ、イギリスにつぐ戦死者を出しており、721人が戦死した。

朝日新聞に代表される反戦平和主義者たちは、日本の戦後の平和は憲法によって守られたと言うが、平和を守ってきたのは安保条約であり、そして朝鮮戦争における国連軍の戦死者である。この単純明快な事実にことさらに目を瞑る、口先平和主義者の精神の在り方は、まことに醜悪極まりない。

 

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sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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