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日本人を「ゆでガエル」にした朝日新聞

『月刊日本』2017年10月号 羅針盤 2017年9月22日

 前回の本稿で朝日新聞による、平成時代全般に対する世論調査を紹介したが、平成時代については、今後も注力して報道するようで、「平成とは」と題するシリーズ報道が始まった。まず「プロローグ」編として、8月27日から9月1日まで五回掲載された。またこれとは別に、8月30日には「『平成』を振り返る」として、平成の年表に三人の談話を載せた全面記事がでた。

 第一回は真鍋弘樹編集員により「日本、やばい」と危機意識をもった若者が出てきたという話題で、予算権を持つ新城市の若者会議が紹介されている。また経済産業省の若手官僚が、「不安な個人、立ちすくむ国家」と題する文書を作成し、インターネットで大きな反響を呼んでいるという。そのポイントは、「『昭和の前提』が崩れたのに、日本は有効な手を打たなかった。そのツケは、若い世代にことさら、重くのし掛かる」である。したがって真鍋も「分かっていたのに手を打たなかったのは、自分も含めた上の世代である」と言わざるを得ない。

 また堺屋太一の表現らしいが、「1990年には冷戦の戦勝国でした。だが、そのあとの28年間は敗退続きです」とある。これは私が前稿で指摘したことである。ただし指摘されているのは、経済的敗戦のことだけであり、最も重要な精神的敗戦のことは、全く考えられていない。

 第二回の「ひばりの死 世紀の死」では、昭和天皇と同年に亡くなった美空ひばりが、昭和の時代を代表する人物として取り上げられる事実を指摘する。この事実は私も以前から注目するところであった。「昭和の日」が制定されたのに、昭和天皇を回顧することは全くしない。この記事の筆者である、日田支局長・近藤康太郎の説明は、「そしてひばり以後も、国民的歌手は出ない。なぜか。『国民』が死んだからである。平成とは、国民が溶けていった時代だった」というものである。国民は死んだのではない、前稿で私が説明したように、歴史問題という凶器を利用して、意図的に殺害されたのである。

 永井靖二編集委員による第三回では、1954年のゴジラと、昨年の「シン・ゴジラ」を比較した際の共通点を赤坂憲雄が述べている。一つは「銀座の繁華街や国会議事堂を破壊する一方、皇居は襲わない」こと。もう一つは「戦争を想起させ、安全保障につながる筋立てなのに、アジアが登場せず、日米関係に呪縛されていること。戦後日本の一貫した国際社会の立ち位置を、見事に反映している」というものである。この「アジアの登場」ついて赤坂は全く説明しないが、日本は被保護国だから、アメリカとの関係に呪縛されるのは、当たり前の話である。

 この「アジア」について触れているのが、「平成を振り返る」のアグネス・チャンの談話である。「昭和の時代、日本はアジアでナンバー1だったけれども、もっと謙虚でハングリーだったと思います。平成の30年は経済的、軍事的、世界への影響力という意味でも中国が脅威になってきた。面白くないと感じる人もいて、それが差別意識にも影響していると思います」。シナ人の方が、自慢しながらだが、中共が脅威であることを素直に認めているようだ。

 同じ欄の、キャロル・グラックの言は、「以前の日本人の意識では、天皇は元号と時代の中で中心的な位置を占めていました。しかし平成は違うようです。今の天皇の性格や言動も、ある程度は影響しているかも知れませんが、それだけではなく、日本人の意識に根本的な変化が起きたのです。平成の次の時代も、明治や昭和のように天皇が再び中心になるということはないでしょう」とのご託宣である。

 ところで第一回の真鍋による末尾の言、題して「ぬるま湯から飛び出して」が、はなはだ興味深い。「今の日本は『ゆでガエル』だ。そんな例を取材中、何度か耳にした。水にカエルを入れて、ゆっくり熱すると、跳び出すきっかけを逃して死ぬという、あの真偽不明の寓話である。昭和とは環境が変わっているのに、考えや仕組みを変えられない。(中略)私を含めた年長世代の多くは今もぬるま湯につかっている。最初に枠から跳び出すカエルは、若い世代からこそ出てくる気がする」。

 ゆでガエルとは、以前から朝日を批判する人間が使用してきた表現である。跳び出せないぬるま湯とは、「米定憲法」九条に基づく被保護国状態に決まっている。朝日新聞こそ、日本人をゆでガエルにした、張本人である。朝日人とはいえ、あまりにも無責任で卑劣な言いぐさである。

 

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sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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