『月刊日本』2019年3月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年2月22日
朝日新聞は朝刊の「教えて!」欄で、1月24日から六回にわたって「日米地位協定」を取り上げている。第一回の、沖縄の銃弾被害と騒音問題からはじまり、第二回が「米軍に特権 成り立ちは?」としてその歴史、第三回が「東京の空 自由に飛べない?」で、横田空域の問題、第四回が「改定求める声に政府は?」で、日本政府が動かないこと、第五回が「ドイツやイタリア どんな協定?」で、改定が行われたドイツ・イタリアの実例、第六回が「米軍、他国で裁判免れる特権 なぜ」で、アメリカが世界中で結んでいる地位協定の目的、といった構成である。
地位協定の問題とは、これは基本的に、明治の条約改正問題と類似しているといえるだろう。江戸時代、安政の不平等条約によって、領事裁判権という治外法権と関税自主権の欠如という問題を抱え込んだ。そのために明治政府は、この改正を重要課題としたが、それは容易に達成できず、日本が帝国主義国家の一員として認められるようになって、ようやく実現した。
日米地位協定は、占領最末期に結ばれた日米行政協定を、60年安保の際に改定したものである。第二回の説明では、「行政協定から地位協定へ。表向きは主権を回復した装いをほどこしながら、内容はほぼ引き継がれ、米軍の自由裁量は大幅に残された」と言っている。
日米地位協定は一度も改定されていないが、その理由が第四回で説明されている。「米側は、改定交渉が長期にわたることや、他国との地位協定の見直しにつながりかねないことなどから、改定には否定的とされてきた。日本側には、米国が望まない改定を提起することで在日米軍の駐留を含めた日米安保体制に影響することを避けたい思惑もある。」
それに続けて、「一方、同じように米国と地位協定を結んでいる国の中には、改定した事例もある。韓国は2度にわたり米韓地位協定を改定し、その後も米軍の容疑者の身柄の引き渡しについての運用を改善した。ドイツとイタリアは1990年代、相次ぐ米軍機の事故を受けて協定を見直している」と述べている。そのドイツ・イタリアの改定例が、第五回で具体的に解説されており、分かりにくい説明ではあるが、それを見ると、画期的に改善されたわけではないようである。
米軍が地位協定を締結する目的を、明確に説明している資料を紹介しているのが、第六回である。それは、「米国務省の諮問機関、国際安全保障諮問委員会(ISAB)が15年にまとめた報告書では、『もし米軍兵士が米国の概念とは根本的にかけ離れた不公平な制度のもとで裁判にかけられるリスクをもてば、米軍が海外展開する意思が大きく阻害される』と指摘。米国法による米軍兵士の保護は、米軍の世界戦略と密接に関係している点を強調している」とある。
横田空域に関する第三回では、「日米地位協定に詳しい明田川融法政大学教授は『首都上空の管制権をこれだけ広範囲に他国に委ねている国はほかにない。国民生活に重大な影響を及ぼす主要空港の飛行ルートを、自国だけで決められないのは異常だ。空に関して占領状態が続いていると言われても仕方がない』と指摘する」とある。なおこの記事の翌日、1月31日の報道では、羽田空港への新飛行ルートが横田空域にかかる部分の管制を、日本が担当する合意が成立したという。
同じ敗戦国であるのに、ドイツやイタリアと違って、日本が一度も地位協定の改定が行えないのは、朝日の解説では不十分で、さらに根本的な原因があるのではないか。それはドイツもイタリアも、日本と異なってまともな軍隊を持っていることである。日本はそれを持たないから、繰り返し指摘してきたように、日本はアメリカによる完全な被保護国である。これが日本の最大の弱点であり、日本政府もアメリカに強く出られず、アメリカも日本を完全になめ切っているのである。
そして、そもそもドイツやイタリアには、自国を貶めて止まない人間が、どれだけいるのであろうか。両国の事情は知らないが、いたとしても極めて少数で、日本のように国家の中に広汎に存在し、メディアの主流を形成しているようなことはないであろう。虐日日本人は、日本国憲法と言う占領憲法の狂信者であるのだから、明田川氏は「空に関して占領状態が続いている」と言っているが、占領状態が続いているのは、日本人の精神そのものである、と言わなければならない。
日本をなめ切っているのはアメリカばかりではない。シナ人・朝鮮人まで日本を馬鹿にするのは、歴史を反省しないからではなく、虐日日本人がイケシャーシャーと、のさばり返っているからである。
← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)
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