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朴槿恵に否定された朝日の慰安婦論

『月刊日本』 2014年11月号 羅針盤 2014年10月22日

八月五日・六日、朝日新聞が慰安婦報道について、今までの報道の一部を撤回した。それは済州島で人さらいをしたと言う吉田証言と、挺身隊を慰安婦だとしたことの二点であり、いわゆる強制はあくまでもあったとして、報道の核心部分は撤回しなかった。

そして「慰安婦として自由を奪われ、女性としての尊厳を踏みにじられたことが問題の本質なのです」と、五日一面の杉浦信之・編集担当(当時)による、「慰安婦問題の本質直視を」などで、繰り返し「本質論」を展開した。この「自由を奪われ」というのが、強制と言う訳である。

では吉田証言が否定されたのに、強制の根拠は何なのかと言えば、この辺りは曖昧にぼかしており、占領地で現地の女性を連行した例があったとするに過ぎない。そのような例は絶無ではなかったかも知れないが、それを全慰安婦に適用するのは、甚だしい拡大解釈というしかない。

朝日はあくまでも強制を強調するが、売春を自ら好んで行う人間を除けば、現在でも売春に一定の強制性を伴うには、別に珍しいことではない。かつての日本のように、貧しさのためにやっている女性も多いだろう。タイの山地民の少女など、その典型的な例である。

朝日は慰安婦を単なる売春婦とされることが、とても嫌なようで、杉浦の文章では「被害者を『売春婦』などとおとしめることで自国の名誉を守ろうとする一部の論調」と言っているが、売春婦を売春婦と言うのは当たり前で、朝日の言い方こそ売春婦を貶めていることに、愚かな朝日は少しも気づかないらしい。

さらに杉浦の一文で「90年代、ボスニア紛争での民兵による強姦事件に国際社会の注目が集まりました。戦時下での女性に対する性暴力をどう考えるかということは、今では国際的に女性の人権問題という文脈でとらえられています。慰安婦問題はこうした今日的なテーマにもつながるのです」と無理やり結びつけようとするが、慰安婦と強姦・レイプは完全に別物である。

朝日が今回展開した、女性の人権問題にすり替える「本質論」は、以前から準備されていたものであろう。吉田証言の虚偽性はずっと以前に明らかであり、それによる河野談話への批判は続いていた。今回ようやく踏み切ったのは、政府による河野談話の検証作業が行われたからに違いない。なお以前からこの本質論を展開していた、木村幹・神戸大学教授が、関与しているらしい。

そしてその本質論の決定版というべきものが、全世界に向けて、朴韓国大統領によって表明されたのである。それを九月二十五日の朝日の夕刊は、次のように報じている。「韓国の朴槿恵大統領は24日、国連総会で演説し、『戦時の女性に対する性暴力はいつの時代、どの地域にかかわらず、明らかに人権と人道主義に反する行為だ』と述べた。旧日本軍の慰安婦問題も念頭に置いているとみられるものの、直接言及せず、抑制的な内容になった。」この記事を書いた、東岡特派員はこの演説の真の価値が分からないらしい。

実はこの朴演説の根本的本質論こそ、朝日的慰安婦論・朝日的本質論を完全に否定・破壊するものなのである。すなわち戦時性暴力は時間と空間を超越した、人類の普遍的な人権問題であるのだから、慰安婦問題が戦時性暴力であったとしても、世界歴史に存在する膨大な戦時性暴力の一つに過ぎない。つまり日本の慰安婦問題は、特異な事例ではないのであり、それだけが執拗に追及されるのは、全く理窟に合わない。完全な日本民族に対する、偏見・差別・迫害である。朝日はその元凶であり、御先棒を担いでいる。

慰安婦問題と同様な戦時売春なら、アメリカも行っているし、当の韓国も行っている。ましてや、戦時売春どころか戦時強姦・レイプこそ、正真正銘の戦時性暴力であるが、日本は占領時代にアメリカにやられたし、韓国軍はベトナムでやっている。ロシアはソ連時代の第二次大戦において、西はヨーロッパで東は満州で盛大にやっている。これらの戦時性暴力こそ、人道に対する犯罪として裁かれなければならない。

日本は慰安婦問題で、アジア女性基金などでそれなりに誠実に対応した。これだけのことをやった国が、他に世界にあるのだろうか。つまり日本こそ、アメリカ・韓国・ロシアなどの犯罪を、告発し糾弾する資格があると言える。

ただし日本政府が、この当然の主張をする気力があるかどうか、はなはだ心もとないが。

 

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sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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