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マスコミの権力こそ問題にせよ

『月刊日本』2016年4月号 羅針盤 2016年3月22日

高市大臣の停波発言をきっかけに、マスコミ・メディアと権力の問題が、このところ盛り上がっている。ジャーナリストが、次いで法学者が高市発言を批判する記者会見を開催した。先月号でもこの問題に言及したのだが、今月号ではこの権力とメディアの問題について、私が基本的にどのように考えているか、殆ど取り上げられない二つの視点から、私見を述べさせてもらいたい。

第一の論点は、マスコミ自身が強大な権力だということである。マスコミ自身はこの根本的な真実に、まったく自覚がないようだが、これは厳然たる事実である。そのなによりの証拠は、マスコミの報道によって、大臣の首が飛ぶという言う現実である。国務大臣と言えば、これは明らかな政治権力者であるが、その首を飛ばす力を有しているのであるから、良くも悪くも、マスコミはまぎれもない権力である。

その例には枚挙にいとまがないが、例えば一九九〇年代半ばには、歴史問題に関する「失言」によって、永野茂門法務大臣・桜井新環境庁長官・江藤隆美総務庁長官が辞めさせられている。これらの発言は、全くの間違いと言ったものではなく、ひとつの意見として、通用するものであったが、マスコミの報道と、それを利用した外国の圧力に、日本の国家権力は屈伏したのである

また八年前の二〇〇八年九月、麻生内閣が発足し、就任したばかりの中山成彬国土交通大臣は、「成田農民はごね得」「日本は単一民族国家」「日教組は解体すべきだ」の、「失言三点セット」によって、たちまち辞任させられた。この日本単一民族論は、この時以外にもしばしば批判・攻撃されているが、単一民族国家は、「多民族国家」の反対概念であるのだから、日本の場合に、それは十分に成立する議論である。

第二の論点は、日本のマスコミ・メディアは、日本の国家権力に対しては、極めて傲慢で威丈高であるが、ある外国の国家権力に対して、極めて卑屈に隷従していることである。その外国とは、言うまでもなく中華人民共和国に他ならない。この事実については本欄において繰り返し述べてきた。隷中マスコミの代表が朝日新聞で、文革期に日本のマスコミが追放された際にも唯一存続したが、その裏には広岡知男の「歴史の目撃者」論があったことは、絶対に忘れてはならない真実である。

またその流れの中で、日中国交成立の前段階で、本多勝一の「中国の旅」の長期連載が行われ、日本人に強固な贖罪意識が刷り込まれて、田中拙速外交による、日中共同声明に結実する。それが現在に至っても延々と続く、我が国を苦しめ続ける歴史問題の端緒となった。朝日新聞は、明らかに自己の報道利権のために、国を売ったのであるが、その巨大犯罪の真実は、いまだに明確に認識されていない。

中共に隷属的なのは、別に朝日だけではない。他の新聞・放送は明らかにそうであるし、中共批判本がある程度流通する出版界でも、その傾向はいまだに顕著である。例えば中共では、中華人民共和国という国家は多民族国家であるが、それは「統一的多民族国家」であり、すべての民族を統合する「中華民族」として完全に一体であるから、各民族は分離独立できないと説明される。不当極まりない、「中華民族」としての「単一民族国家」論であるが、「日本単一民族国家」論を糾弾するマスコミが、この事実を批判的に紹介したことは、殆ど見たことがない。

結局、人間は意識の動物であるが、現在の日本において日本人の意識を支配しているのは、国家権力では全くない。それはマスコミである。例えば原発事故に関して、「風評被害」ということが言われるが、その風評は自然に生まれたものではなく、マスコミが作ったものである。また「世論」というが、これもマスコミによって情報が流布され、マスコミによる「世論調査」が公表されるかたちで、マスコミが製造したものである。つまり「世論調査」ならぬ「世論操作」である。権力者の自覚がない権力者ほど、恐ろしいものはない。

その日本人の意識を支配しているマスコミが、中共政権に隷属しているのであるから、客観的に言って、日本人の意識は中共政権に支配されているといっても過言ではない。したがって、中共が現実に存在するナチズム国家であるという、絶対的真実を知らないのである。反対に、日本人は歴史を反省しない悪徳民族との洗脳教育をほどこされ、冤罪を着せられ続けて、まともな民族意識を骨抜きにされているのである。

 

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sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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