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米国によって敗北した安倍外交

『月刊日本』2016年2月号 羅針盤 2016年1月22日

日韓首脳会談で約束されていた、慰安婦問題に関する最終合意なるものが、昨年末に実行された。その内容は日本にとって、あまりにも屈辱的であり、日本外交の完全なる敗北である。慰安婦問題については、近年、日本側では河野談話の検証、朝日新聞の報道修正があり、韓国側では韓国学者の研究、パク大統領の国連演説など、客観的状況は日本に有利に展開していただけに、この敗北に対する失望は極めて大きい。

岸田外相は共同発表の冒頭でこう言った。「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。」

軍の関与と日本政府の責任を認めて謝罪したことは、慰安婦が戦時売春婦という、何処でもいつの時代にもある、極めて普遍的な存在である真実を無視し、特別に悲惨な事例であるとの曲解を、決定的に定着させたものと言わざるを得ない。すなわち恐るべき冤罪の確定である。それを証明しているのが、今回の欧米諸国の報道であって、「性奴隷」という忌まわしい表現が頻りに使われている事実である。

安倍外交の巨大な失策であって、戦後レジームの脱却を謳った首相が、精神的レジームの定着を行ったという無残な皮肉である。これはちょうど三十年以前、戦後政治の総決算を掲げて登場した、ナショナリスト・中曽根首相が、第二次教科書事件及び靖国参拝問題で、大失敗したのと極めて類似している。

ただし今回の事態は、ある程度予想されたことでもあった。慰安婦問題は基本的に日韓の問題であるが、最も大きく作用したのは、アメリカという要素であろう。すでに第一次安倍内閣の時に、慰安婦問題で議会決議を行った。最近では靖国参拝問題など歴史問題で、日本に対して冷酷な態度を取ってきた。それが昨年の安倍首相のアメリカ議会演説、七十年談話に反映しているのであり、日韓首脳会談自体も、明らかにアメリカの要請によるものであろう。その流れの中で、今回の日韓慰安婦合意なるものが出現した。アメリカのケリー国務長官は、早速歓迎を表明した。所詮、被保護国・日本に外交的な主権は存在しないのだ。

安倍首相は七十年談話で、「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」と言ったが、けしてそうはならないだろう。韓国人は絶対に納得しないし、韓国政府はそれを抑えられない。まして慰安婦問題は韓国だけではない。現に台湾が言い出してきている。

今回の合意を「最終決的かつ不可逆的な解決」だとしているが、そんなことになったら日本の方こそたまったものではない。今度は日本の方がこの「決着」を覆してゆく努力をしなければならないのだ。韓国はそれをさんざんやってきたのだから、日本にも同じことをやる権利がある。その中核的な論点は、今回の「決着」で誤魔化されてしまった、慰安婦の普遍性という視点である。軍事と性という普遍問題を、日本についてだけ糾弾するのは、日本に対する偏見であり差別であり迫害である。岸田外相の説明とは全く逆に、慰安婦問題こそ、「日本民族の名誉と尊厳を深く傷つけた」冤罪問題なのである。

その上で、更に対内的と対外的と、二つの活動が必要になるであろう。歴史問題の歴史を回顧してみればすぐに分かるが、歴史問題を此処まで深刻化させた張本人は日本人である。朝日新聞に代表される、日本を貶めて狂喜する虐日日本人が、歴史問題を生みだし、それをシナ人・朝鮮人が決定的に利用したのである。この犯罪行為を告発・糾弾して、彼らに明白に謝罪させなければならない。彼ら虐日日本人こそ、日本の歴史上に出現した最悪の人間類型であり、民族の裏切り者である。

一方、対外的には、戦争犯罪なるものを、未解決の課題として包括的に問題化することである。特にアメリカによる我が国に対する戦争犯罪の追及は、全く放置されたままである。原爆は言わずもがな、焼夷弾を使用した空爆こそ、正真正銘のホロコーストに間違いない。また機銃掃射は民間人を対象とした、明白な虐殺行為である。

現在の日本人は大和魂を骨抜きにされて、内外の敵と戦う知力と気力を喪失している。慰安婦を「性奴隷」と決めつけられることによって、日本人が「精神奴隷」させられているのだ。ただし精神奴隷だから、その真実に全く気が付かない。

 

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sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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