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「平和国家のブランド」の虚構

『月刊日本』2015年11月号 羅針盤 2015年10月22日

朝日新聞十月四日の「日曜に想う」欄の、特別編集委員・山中季広による、「本土と沖縄 本当の壁」と題する一文が、なかなか「素晴らしい」。

話はまず八月の相模原の米軍補給廠の火災で、市の消防が米軍の命令で放水を待たされた事例を挙げる。次いで十一年前の沖縄国際大学へのヘリ墜落事故に及び、同大学教授・前泊博盛の次の発言を引く。「沖縄だけじゃない。地位協定と特殊法で米軍は日本の航空法の主な規制を免除される。オスプレイは沖縄でも本土でも超低空で飛べる。東京大学構内に落ちても米軍は警視庁や東京消防庁を追い払えるのです」。沖縄が特別ではなく、本土も基本的に同じだ、という主張である。

このメッセージは、この文章の末尾近くで、更に山中によって明確に繰り返される。「放水できない消防、捜査できない警察、オスプレイ配備に何も言えない首相―。属国か属領のごとく扱われる点では本土と沖縄に違いはない。」つまり沖縄だけが差別されているわけではないのだ。

そこで山中は続けて以下のように言う。「翁長雄志知事は先月末、国連人権理事会で沖縄の基地問題を訴えた。沖縄の人権がゆがめられてきたのはまぎれもない事実である。同時に日本の主権もゆがめられたまま70年が過ぎた。基地のもたらす同根の苦難を思えば、いっそ官房長官と知事が肩を並べて国連に訴え出てもおかしくはなかった」

また山中はその根源を、「広く知られている通り、米軍が日本の法規に縛られない状態は占領期に遡る。米軍は占領終結後も特権の多くを持ち続けた。日本側にも駐留継続を望んだ人が大勢いたからだ」とし、その代表に昭和天皇を挙げる。そして「現実の駐留政策に天皇の意図がどれほど反映されたかは知るよしもない。(中略)ただ米軍にすれば、そうした声は渡りに船だった。日本からの早期撤収を訴える国務省を退け、占領終結後もほぼ望み通りに占領状態を継続した」と述べる。日本は今も占領状態であると、山中は断定しているわけである。つまり日本は、アメリカの軍事的植民地であり、そして何よりも精神的植民地である。

日本が主権をゆがめられた、本物の主権国家でないこと、今も占領状態であることについては、私も大賛成である。最近になって、日本は主権国家でないことを自覚せよと言い出している人もいるが、私は以前から、日本は主権国家ではないと考えてきた。したがって本欄において、四月二十八日は、「主権回復記念日」ではなく、「主権回復祈念日」であるべきだと、主張したことがある(二〇一四年五月号)。沖縄の人々は、四月二十八日は沖縄にとって「屈辱の日」だと言っているが、日本全体にとって「屈辱の日」なのだ。

つまり日本は主権国家ではないし、本物の独立国でもない。ではなぜ戦後七十年にもなるのに、保護国であり続けているのか。それは明らかに、「日本国憲法」という名の、「占領憲法」・「米定憲法」を、「不磨の大典」として、押し頂いているからである。朝日に代表される、偽善的言論の最も愚かなのは、自分が批判している状況を、自分自身がつくりだしているのに、その滑稽極まる真実に全く気が付かないことである。

それに関連して言えば、今回の安保法制問題において、「平和国家のブランド」なるものが、頻りに主張された。朝日は今年三月の安保法制の与党合意に対する社説(二十一日)の末尾で、次のように言う。「戦後日本が培ってきた平和国家のブランドを失いかねない道に踏み込むことが、ほんとうに日本の平和を守ることになるのか。考え直すべきだ」。

しかし「平和国家のブランド」なるのもが、そもそも存在するのか。アメリカは第二次大戦以後も、ずっと戦争を続けてきた軍事超大国である。そのアメリカと軍事同盟を結び、沖縄だけでなく本土においても、広大な軍事基地を提供してきのであるから、日本はアメリカの軍事戦略に積極的に協力してきたのである。それが紛れもない歴史の真実である。そのような国が「平和国家」であるわけがない。

ブランドの本来の意味は、家畜を識別する焼印、つまり烙印に他ならない。今回の安保法制騒ぎでは、中共の軍国主義・侵略主義の脅威が、これだけ現実のものになっているにもかかわらず、平和・平和の空念仏を絶叫して、自国の防衛を全く考えない、国家意識・民族意識を喪失した、占領史観で洗脳された精神奴隷が、大量に存在することが明らかになった。日本が獲得したのは、「白痴国家」の烙印である。

 

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sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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