- 2015年9月 5日 10:30
- 時評
以前から頻りに話題になっていた、戦後70年を期した安倍首相の談話が、8月14日に発表された。それは予想された通り、以前の談話を完全に引き継ぐものであり、これによって1982年の第一次教科書事件に開始された、東京裁判史観の再構築は完全に完成した。つまり安倍首相が本来目指した、日本罪悪論という歴史観の克服は、完全に失敗したのである。この事実をしっかりと見つめ、自覚しなければならない。
こうなってしまった原因は色々あるだろうが、結局最大の要因はアメリカの存在である。第一次教科書事件以来の歴史問題では、中共と韓国が主役を務めていたが、そもそも東京裁判史観の本家本元はアメリカである。このアメリカの歴史問題に対する態度は、すでに今から八年前の最初の安倍内閣の時における、アメリカ議会での慰安婦決議に明確に表れていた。
また今度の安倍内閣においては、一昨年の暮れに行われた、首相の靖国参拝にアメリカは強く反対するようになった。小泉首相は毎年日取りは一定しないが、靖国参拝を行ってきたが、そのようなことはなかった。また今回の安倍談話の発表に対しても、中韓のみならずアメリカも頻りに牽制を行った。
今回の談話の内容がいかなるものになるか、それは事前に大方予想することができた。一つは安倍首相のアメリカ議会における演説である。ここで首相は、第二次大戦に関するアメリカ的歴史観を、真っ向から肯定したのである。もう一つは、安倍談話の前提として出された、有識者会議の報告である。ここでは日本の侵略・植民地支配を明確に認めていた。
結局、精神的な「戦後レジーム」である東京裁判史観は、明確に再構築され、再確認された。したがってこの談話に対してアメリカは肯定的評価を下したのは当然である。中共・韓国も強い批判を行わなかった。四つのキーワードの揃い踏みがあったし、それ以前に歴史問題は、もう十分に利用したという思いがあったのかも知れない。
その中で、安倍談話に最も強く批判・反発したのは日本人であり、朝日新聞は15日の社説に、「この談話は出す必要がなかった。いや、出すべきではなかった」と書いて、逆の方向から全面否定を行った。ただし直後の朝日自身の世論調査で、「評価する」が「評価せず」を大きく上回り、見事に赤っ恥をかいた。
安倍首相がアメリカの意向に逆らえないのは、日本の防衛を根本的にアメリカに依存しているからである。しかも近年、中共が日本の領土に対して侵略宣言を行う状況になっているから、ますますその傾向を強めざるを得ない。そこで成立したのが、今回の安倍談話に他ならない。残念ながら、この精神の隷属体制は容易に覆らないだろう。戦後100年までは、あっという間に行くだろう。
ただし今回の安倍談話を逆転利用する手がかりが、無いわけではない。それは侵略・植民地支配について、日本だけの特殊問題ではなく、世界の近代史における普遍的問題として、一般化したことである。ここにこの談話の最大の工夫があるといえる。これは有識者会議の報告に見られていたが、それをさらに活用したものであろう。またこの談話には、「慰安婦」の用語を出さず、女性の人権問題としているのも、同一の論法である。ただしこれはすでに国連総会で、朴大統領が言っていることであるが。
その一般化のなかでもとくに重要なのは、世界史の流れとして、民族の自決を強調していることである。この談話では、具体的に中共の名前を挙げていないが、中共こそ民族の自決を踏みにじっている、現役バリバリの侵略国家なのであるから、中共に対する反撃の有力な根拠になりえる。ただし日本の側に、それを行う気力があればの話であるが。
それにしても、この極めて無念な内容の安倍談話すら、逆の立場から全面的に否定する朝日のような、虐日日本人が蔓延しているのは、まことに腹立たしい限りである。日本人の民族精神の再生、すなわち大和魂を再建するためには、この民族の裏切り者を撲滅することが、何にも増して絶対に必要である。内部の敵に勝てないようでは、外部の敵にはなお勝てない。
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