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日本は歴史戦争に完全敗北を喫した

『月刊日本』2015年9月号 羅針盤 2015年8月22日

安倍首相による戦後七十年談話は、八月十四日に閣議決定されるので、本稿の執筆時にはまだわからない。ただしその参考にするという、有識者懇談会の報告書が六日に発表された。これは極めて長文のもので、二十世紀の世界史の解説のごときものになっている。

注目されるのは最初の部分で、「こうして日本は、満州事変以後、大陸への侵略を拡大し、第一次大戦後の民族自決、戦争違法化、民主化、経済的発展主義という流れから逸脱して、世界の大勢を見失い、無謀な戦争でアジアを中心とする諸国に多くの被害を与えた」、および「植民地についても、民族自決の大勢に逆行し、特に1930年代後半から、植民地支配が苛酷化した」と述べていることである。この「侵略」表現には、全十六人の委員のうち、二人の委員から異論が出たという。

この二つの記述については、朝日新聞は一面の記事でも社説でもとくに取り上げ、社説では「戦争の経緯については、おおむね妥当な内容と言える」と言っている。朝日が妥当と言うことは、大満足ということであろう。この報告書には、戦後のことなどその他実にいろいろのことが書いてあるが、結局この部分が徹底的に利用されるに違いない。

安倍談話に具体的に「侵略」表現が入るか否かは別にして、安倍首相はこの報告書の意見を、全く無視するわけにはいかないだろう。そもそも、この安倍談話についてはかなり以前から、朝日新聞などで執拗にとりあげられ、しきりに牽制されてきたから、有識者のメンバーはその空気にかなり影響されているようだ。その意味で、安保法制の憲法学者の場合のように、人選に大きなミスがあったのではないのか。

この報告書には、例えば民族自決問題についても、とても客観的と言えないことが書かれている。先に紹介したように「民族自決の大勢に逆行」といっているが、当時はまだまだ帝国主義の全盛時代で、イギリスもフランスもオランダも、アジア・アフリカに広大な植民地を所有していた。アメリカはフィリピンの独立を約束していたが、これはあくまでも例外で、民族自決は世界の大勢になっていない。

民族自決問題すなわち独立問題に関しては、更に以下の記述まである。「なお、日本の30年代から1945年にかけての戦争の結果、多くのアジアの国々が独立した。多くの意思決定は、自存自衛の名の下に行われた(もちろん、その自存自衛の内容、方向は間違っていた)のであって、アジア解放のために決断したことはほとんどない。アジア解放のために戦った人はいたし、結果としてアジアにおける植民地の独立は進んだが、国策として日本がアジア解放のために戦ったと主張することは正確ではない」

第二次世界大戦の世界史的な意義は、五百数十年続いた植民地体制の崩壊であることはあまりにも明らかだが、それをこの報告書では、たまたまそのような結果を生み出したとの議論を展開して見せる。しかし当時、植民地体制はまだまだ強固なものであり、ヨーロッパ諸国は、第二次大戦後ですら、植民地の維持に躍起となった。

しかし日本は戦争中に、フィリピンとビルマの独立を実行した。大東亜会議も開催し、アジアの独立国を招集して、新秩序を歌い上げた。これは明らかに国策であろう。

この部分の記述は感情的で、ムキになって否定している印象が強い。それは、第二次世界大戦の最大の歴史的意味である、植民地体制の崩壊という歴史的画期に、日本が主体的に関わっているとなると、この報告書の基調が崩れてしまうからであろう。この記述には強い違和感を持たざるを得ない。有識者のメンバーのなかに、これに反対する人間はいなかったのか。

安倍談話の具体的な内容はともかく、これによって日本罪悪史観は、戦後七十年も経つのに、再び強固に確立されたことになった。一九八二年に開始された、東京裁判史観の再構築は、ここに本当の完成をみたわけである。日本人は歴史戦争という情報戦に、完全に敗北したのである。この事実を我々は素直に認めるべきである。

今回の報告書は、日本を貶めて得意になる、虐日偽善的歴史観が、単なる左翼だけではなく、いかに広汎な日本人に浸透しているかを、改めて如実に示す結果となった。我々の戦いは、この無残な現実から再出発するしかない。

(八月八日、記)

 

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sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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