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中共の巨大な軍靴が聞こえぬか

『月刊日本』2015年10月号 羅針盤 2015年9月22日

9月3日、中共で「抗日勝利70年」を銘打った、軍事パレードが挙行され、朝日新聞はその日の夕刊の一面トップで早速報道した。その見出しは、まず大きく「習主席『兵力30万人削減』とあり、隣に「中国戦勝70年式典 平和重視を強調」と続け、本文の初めにそれらよりかなり小さく「軍事パレード 最新兵器披露」としている。

一見して分かるように、軍事パレードの記事にもかかわらず、30万人削減を言明した部分にだけ注目した記事構成になっている。ここに朝日新聞の伝統である、隷中路線の体質が、見事なまでに表れている。

ところで翌日4日の朝刊では、さすがにこれではあまりにも露骨すぎると考えたのか、まず横見出しで「『戦勝・中国』硬軟の演出」とし、縦の見出しで「パレード 軍事力誇示」と「兵力30万人削減 表明」を並列させている。同日二面の「時々刻々」欄の見出しは、「戦車とハト」とある。つまり平和路線だけを強調するのでなく、平和と軍事の両論併記に切り替えたわけである。

「時々刻々」欄で言うところのハトとは、「式典の最後には約7万羽のハトも放たれ、『反ファシズム戦争勝利』を記念した式典が『平和を守る決意』(習氏)を示すイベントであるというメッセージを強く演出した」と記しているものだが、鳩を飛ばせば平和指向になるとは、まことに幼稚な理解である。

ただしこの両論併記でもまだ、中共政権に阿っているのが、見え見えと言わなければならない。そもそも軍事パレードなのだから、軍事力の誇示、つまり最新兵器を見せびらかすことによる恫喝こそが、その本質であるのはあまりにも明らかだ。

4日の国際面では、東京財団・小原凡司研究員が、「中国軍は米国の西太平洋・アジアでの活動を無力化できる軍事力を誇示する考えで、米国を意識した見せ方をした」と言っている。そうだとすれば、我が国の安全に直接的に関係する脅威である。

ところで「時々刻々」欄では、朝日が何度も強調する、兵力30万人削減のマヤカシについても、わずかながら触れざるを得なかった。「軍事力を誇示しながら、宣言された兵員の大規模削減。その意義を北京の外交筋は『実質的な軍縮ではなく、軍の現代化を目指す中国軍の今のニーズを反映したにすぎない』と読み解く」と述べているが、これは外交筋に読み説いてもらうまでもなく、明々白々な事実ではないか。

そこで5日になって、「中国の軍事力 『平和貢献』と言うなら」と題する社説が出てくる。ここでようやく30万人兵力削減の声明について、「だが、これを単純に『軍縮』と歓迎することはできない」と言い出す。これは明らかに3日・4日の報道内容・報道姿勢と矛盾している。最近朝日は「訂正して、おわびします」欄を設けて、頻りに記事内容を訂正しているが、些末な事実を訂正するなら、30万人兵力削減報道についてこそ、それを行うべきである。

習近平は式典で、演説をしているが、とくに注目されるのは次の部分である。「平和のために、中国はずっと平和発展の道を歩んでいく。中華民族は一貫して平和を愛してきた。発展がどこまで至ろうとも、中国は永遠に覇権を唱えない。永遠に領土を拡張しようとしない。永遠に自らがかつて経験した悲惨な境遇を他の民族に押しつけたりはしない」(産経電子版の全文訳による)

これは中共・シナ人がやっていることの、まさに正反対のことを、ぬけぬけと言っているわけである。本欄で、以前から繰り返し指摘していることだが、中共の領土の半分以上は、建国時に侵略併合したものであり、そこでは歴史上最も残虐は侵略支配が、行われ続けている。

朝日は、この部分について、3日の夕刊一面で、4日には一面と二面で、何度も言及しているが、これを正面から肯定的に受け止め、平和路線の根拠とするのであるから、シナ侵略主義者の手先と言われても、仕方がないだろう。

ところで、軍事パレードでは、6・4大虐殺の舞台となった天安門広場を、1万2千人の兵士が行進して軍靴の響きを轟かした。TBSテレビによれば、それを集音する専用マイクが設置されていたという。日本の安保法制に反対して、軍靴の響きが聞こえるなどと、バカ騒ぎをしている人間がいるようだが、これらの人々は、日本の領土に侵略宣言をしている、ナチズム国家・中共の、正真正銘の巨大な軍靴の響きは、全然気にならないらしい。完全に、知性と感性が破壊されているのである。

 

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sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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