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高市発言・真の問題はメディアの自主規制だ

『月刊日本』2016年5月号 羅針盤 2016年4月22

    ※このタイトルは編集者によるもので、本稿の意図とは大きく違います
    本来は、「高市発言批判の支離滅裂」ということです

高市停波発言問題は、依然として続いている。というより意図的な一大キャンペーンとなっている。高市発言に反発したジャーナリスト数名は、再び三月二十四日に今度は外国人特派員協会で記者会見を行った。産経新聞の産経抄が四月二日にこれを取り上げ、「ニュースサイト『ブロゴス』によると、彼らは一様に安倍晋三政権を批判しつつ、矛盾するような意見も強調していた」とあるので、私もこれを読んでみた。

なるほど田原総一朗と他の四人が言うことが丸で違う。田原は高市発言が安倍首相へのゴマすりだとするのに対して、大谷昭宏は「大先輩である田原さんの言葉を翻すようで申し訳ないですが、高市発言について私は到底そうは思えなくて・・」と、憲法改正を目指す安倍総理の政治姿勢に基づくものだとする。

また鳥越俊太郎がオフレコ懇談を問題にして、「メディアが権力を監視するというのが世界の常識。しかし日本では権力がメディアを監視する」というのに、田原は「僕は今の鳥越さんには異論ありなの。要するに、官房長官がオフレコでこう言っているというのが伝わって、それに従うと。冗談じゃないよ。僕は若い時から官房長官とも幹事長とも何回も会っていますが、そんなこと言ったら文句言いますよ」と反論する。

さらに田原は、「これは余計なことだけど、政治の圧力なんて大したことないんですよ。本当に。これは局の上の方が、むしろほとんど自己規制なんですよね。TBSも自己規制、自主規制だと思います。僕は総理大臣を3人失脚させたんだけど、僕のところに圧力なんて何にもないもん。そういうもんなんですよ。局の上の方の自主規制で変わっていくこと。そこが一番問題なんです。僕はそれを『堕落』と言っているんです」と自説を展開する。

田原一人で総理大臣を三人も首を切ったというのは、どこまで本当か知らないが、私が前回述べたように、マスコミが巨大な権力者であることは間違いない。二月二十九日の会見の際には、「私たちは怒っています」と書かれた、横断幕が掲げられたが、田原の怒りの対象は、政権よりマスコミそのものであるわけだ。

今回の会見には欠席した、金平茂紀については、朝日は三月三十日に「テレビ報道の現場」と題する、長文のインタビュー記事を掲載している。中味は大体予想されるものだが、この中で興味深い部分を紹介しておく。「先日、田原総一朗さんや岸井さんらと記者会見しました。他局のキャスター仲間何人かに声をかけたのですが、参加者はあれだけというのが現実です」とある。

金平は「おおっぴらに議論するという空気がなくなってしまったと正直思いますね。痛感するのは、組織の中の過剰な同調圧力です」といい、筑紫哲也の遺言三カ条の一つが、「多様な意見を提示し、社会に自由の気風を保つ」であることを紹介し、現状を批判する。これは私も当のTBSの番組で強く感ずるところである。ただし金平の主張するのとは、全く逆方向からだが。TBSの偏向番組の一つであるサンデーモーニングには、それでも以前はペマ・ギャルポなどの人物も出ていたと記憶する。しかし現在は、虐日偽善コメンテーターの揃い踏みになっている。

このインタビューの中で最も問題なのは、記事本文ではなくて、写真に付けられたキャプションで、それにはこうある。「この国のテレビの姿は、政治の影響下にある中国やロシアのテレビと五十歩百歩ではないのか」。括弧付きで引用されているから、金平自身の発言である。この日本を中共やロシアと同列に扱う発言は、二重の意味で甚だしい暴論である。

それは第一に日本の国家権力を中共・ロシアと同じだとすると共に、第二に日本のジャーナリストを、中共・ロシアのジャーナリストと同列に扱うことになるからである。中共ではつい最近も香港の書店主が拉致されたり、言論の弾圧の事例は枚挙にいとまがない。ロシアではアンナ・ボリトコフスカヤ暗殺など、暗殺すら行われている。彼らは本当に命を懸けて、政治権力と戦っているのである。日本と同列に扱うこと自体が、中共やロシアのジャーナリストに対する、大変な侮辱である。

朝日新聞も当然この外国人特派員協会での会見を報道しているのだが、自己矛盾に満ち満ちた実態については、全く触れていない。これは読者の知る権利に対する、とんでもない侵害行為である。この記者会見の正確な内容は、現在の日本の精神的頽廃を証明する記念碑として、永く記憶されるべきものである。

 

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sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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