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東京大空襲の犠牲者も慰霊せよ

『月刊日本』2016年8月号 羅針盤 2016年7月22日

    ※このタイトルは編集者によるもので、私の主張は、
    「沖縄と原爆を、特別扱いするな。戦争犠牲者を平等に慰霊せよ。」ということです。

毎年夏になると戦争を回顧することが盛んである。今年も6月23日には、沖縄戦の終結記念日に慰霊祭が行われた。今年はその直前に行われた例の殺人事件の追悼集会と関連し、基地移設問題も併せて特に盛り上がったようである。

また八月になると、広島・長崎の原爆記念日があり、これも大きく報道され、十五日の終戦記念日に続くことになる。

この一連の戦争回顧の年中行事に関して、私は以前から強い違和感を感じていたことがある。それは戦争の犠牲者に関して、沖縄と原爆がとりわけ大きく取り上げられるに対して、それ以外の多大な戦争犠牲者への慰霊が、あまりにも粗略に扱われていることである。

沖縄が特別に重要視される理由として、よく言われるのは、沖縄では日本で唯一の地上戦が行われ、人口に比例して多大の犠牲者が出たとされることである。また原爆の場合は、人類の歴史で初めて出現した、巨大な破壊力を持つ特殊新型爆弾であり、それは今のところ唯一の使用例だということである。

しかしそもそも、沖縄戦と原爆による犠牲者が、それ以外の戦争犠牲者と比較して、格段に悲惨であるということは、冷静に考えれば根本的にあるはずがない。

例えば、三月十日の東京大空襲が最も有名な一般的な空襲では、まず周りに円周状に爆弾を落として、逃げられないようにしておいて、さらに中心を爆撃するのである。つまり焼夷弾によって人間が生きながら焼き殺されていったのであり、その苦痛は原爆による死の場合と、いったい何が違うのか。

またこれはあまり問題になっていないが、飛行機からの機銃射撃による、民間人に対する極めて意図的な殺害というものがある。その場合アメリカ軍の戦闘機の操縦士は、明確に標的を狙って撃っているのであり、操縦士の笑った表情がはっきり見えたとの報告をよく目にする。つまり完全に無抵抗な民間人を、あたかも狩猟をするように楽しんで殺しているわけであり、明らかに残忍極まりない虐殺である。

第二次大戦における日本人の死者、三〇〇万人のうち民間人は一〇〇万人だとされる。そのうち沖縄戦の死者、広島・長崎の原爆による死者以外の多数の人間は、まともに慰霊されていないのである。明らかにはなはだしい差別であると言わなければならない。これらの死者に対する非礼そのものである。

私の実体験から言って、かつてはこれほどの差別はなかったと感じている。それが一九八〇年代の、教科書事件以後からの歴史問題による、東京裁判史観の再構築の時流に乗って、沖縄と原爆が突出して強調されるようになった。それに連動して、昨今の安保法制反対に見られるような、虐日日本人による空想的・白痴的平和主義の蔓延現象が出現しているわけである。

戦後七十年にもなるというのに、いまだに日本の戦争責任が論じられることは、限りない不条理そのものである。その一方で、アメリカが犯した真に巨大な戦争犯罪の究明は、封印されたままである。それはオバマ大統領の広島訪問で、見事にごまかされた原爆ばかりではない。東京大空襲をはじめとする、焼夷弾による無差別爆撃こそ、第二次大戦における文字通りの大虐殺に他ならない。ナチスによるユダヤ人大虐殺を、ホロコーストと形容するが、ホロコーストの本来の意味は、ユダヤ教の儀礼における、生贄ならぬ焼き物の供物を言うのだから、アメリカの焼夷弾による無差別爆撃こそ、ホロコーストと呼ぶに最もふさわしい。

しかし今の日本人にこのアメリカの戦争犯罪を、告発し糾弾することは全くできない。それは現在の日本は、独立国ではなくアメリカの被保護国であるからである。おそらく世界の歴史に例を見ない、最大の被保護国であろう。最近になって、「リベラル」を偽称する虐日偽善者たちが、ようやく日本は主権国家ではないと言い始めているようだが、その何よりの証拠は、占領時代にアメリカが制定した、「占領憲法」「米定憲法」を「不磨の大典」として、押し戴いていることである。

戦後日本は独立国ではなくアメリカの被保護国であり、何よりも軍事植民地である。「戦後民主主義」なるものは全くの欺瞞・虚妄であり、「主権在民」ではなく「主権在米」だと言わなければならない。しかも日本をそのような状況に貶めている元凶こそ、真に笑うべきことに、憲法護持者たち自身である。

 

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sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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