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朝日新聞の虐日偽善主義

『月刊日本』2018年9月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年8月22日

 オウム事件の死刑囚13人のうち、7月6日に7人の、同26日に6人の死刑が執行された。朝日新聞には、7日と27日の朝刊に、降幡賢一・元朝日新聞編集委員が、「暴走の闇 私たちにとって無縁か」と「すさんだ時代の象徴として」と題する、二つのコラムを書いている。

 元編集委員の立場の人間が執筆しているのは、オウム事件で、最も活躍した記者であったからだろう。同氏には、「オウム法廷」と題する、何冊もの著作が存在する。ただし私が降幡氏の名前で思い出すのは、例のサンゴ事件の方である。


 忘れてしまった人も多いかも知れないが、正月に天皇の代替わりがあった1989年(平成元年)の4月20日の朝日夕刊一面に、サンゴが傷つけられている、大きなカラー写真と共に、沖縄のサンゴ損傷行為で、日本人を厳しく告発・弾劾する記事が掲載された。タイトルは「サンゴ汚したK・Yってだれだ」とあった。写真に添えられた文章の執筆者こそ降幡記者であった。

 文章はまず、「これは一体なんのつもりだろう。沖縄・八重山群島西表島の西端、崎山湾へ、長径八メートルという巨大なアザミサンゴを撮影に行った私たちの同僚は、この『K・Y』のイニシアルを見つけたとき、しばし言葉を失った」と言う冒頭からはじまり、「日本人は、落書きにかけては今や世界に冠たる民族かもしれない。だけどこれは、将来の人たちが見たら、八〇年代日本人の記念碑になるに違いない。百年単位で育ててきたものを、瞬時に傷つけて恥じない、精神の貧しさの、すさんだ心の・・・。にしても、一体『K・Y』ってだれだ。」と、感情的・攻撃的な表現で結んでいる。

 この記事には、まず地元のダイバーから疑問がもたれ、調査の結果、朝日新聞の写真部員が、意図的に傷つけたことが判明した。つまり完全な捏造写真であったのである。そのためこの写真部員は辞めさせられ、当時の社長は辞任に追い込まれた。ただしサンゴ事件が有する根本的な問題は、写真が完全な捏造であったために、単なる捏造事件と理解され、この事件の本質的な悪質性、犯罪性が、かえって分からなくなってしまっていることである。  では何が根本的な問題なのか。それは写真だけでなく、記事の文章そのものにある。そのことが30年たった現在に至るも、全く見逃されているのである。この写真が捏造でなく本物であったとしても、記事の文章には日本人にたいするとんでもない誹謗・中傷が、とくとくと述べられているのである。

 第一に、イニシアルは「K・Y」であるのだから、これは日本人であるか外国人であるか、全くわからない。にもかかわらず記事は、頭から日本人の行為と決めつけて、日本人弾劾を展開している。第二に、落書きをする不心得の人間は世界中にいくらでもいるのであって、日本人の落書きであったにしても、それで「日本人は、落書きにかけては今や世界に冠たる民族かもしれない」と、日本人全体の犯罪にまで拡大・膨張させるのは、はじめから日本を貶めようとする、卑劣な虐日志向の情念が存在するからである。

 これこそが、日本存在を貶めることによって、自分を正義の存在に祭り上げたい、虐日偽善主義の典型であり、朝日新聞の根本的なイデオロギーである。

 ところで降幡氏は、死刑執行の二回目のコラムの末尾近くでこう言っている。「他者の生をなんとも思わぬという点では同根の事件は、オウム事件の後も、次々と起きている。まるで事件をきっかけにしたかのように、すっかり変質してしまった私たちの社会を思うとき、彼らに対す国家の報復措置によって、さらに傷口を広げてしまったのではないかと、私は心配する。オウム事件はこの大量処刑とともに、私たちのすさんだ時代の象徴として、改めて記憶されていくのだろう。」

 ここでオウム事件がきっかけで、「他者の生をなんとも思わぬ」「同根の事件」が起きるようになった、というのは明らかにウソである。都心における無差別テロ事件と言えば、20年も前の1974年に、三菱重工爆破事件が起きている。その極左運動の応援団を勤めたのが、ほかならぬ朝日新聞であった。

 ここで「すさんだ」というキーワードが出てくるのは、まことに示唆的である。サンゴ事件の場合、降幡記者は、「精神の貧しさの、すさんだ心の」と言っていた。しかしサンゴ事件の当時も現在も、「精神が貧しく、心がすさんで」いるのは、冤罪で日本を貶めて止まない、日本ヘイトに熱狂する、降幡記者自身であり、朝日新聞そのものであるという根本的事実が、世間では全く理解されていない。

 

sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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