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旭日旗問題の過去と現在

『月刊日本』2018年11月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年10月22日

 9月28日の朝日新聞の記事によると、韓国海軍の報道官は27日、済州島で10月10~14日に開く『国際観艦式』で、自国の国旗と太極旗だけを掲揚するのが原則だと、日本など参加国に、8月31日付で通知したと発表した。これは、日本の自衛艦旗である、旭日旗を締め出すのが目的であるのは、あまりにも明らかであった。

 この要求に対して、28日に行われた記者会見で、当時の小野寺防衛相は、「自衛艦旗の掲揚は自衛隊法などの国内法令で義務づけられている。国連海洋法条約上も、国の軍隊に所属する船舶の国籍を示す『外部標識』に該当する」(29日、産経新聞)と、拒否する方針をしめした。

 韓国はではその後、10月1日に首相が国会の答弁で、日本を牽制する発言があり、また旭日旗を禁止する法案を提出する動きもあった。日本は参加を要求し続けたが、結局10月5日に至って、岩屋新国防相が、観艦式への自衛艦の参加を取りやめることを発表した。

 ところで、この旭日旗問題に関連して、正式な旭日旗ならぬ旭日模様・旭日デザインが、かなり以前に中華人民共和国(中共)で問題視されて、騒ぎになったことは、全く忘れ去られてしまっている。

 2001年12月7日の朝日新聞、古谷浩一・北京特派員による「青鉛筆」という豆記事には、「中国の人気女優、趙薇さんが旭日旗をデザインした服を着た写真が、ファッション雑誌に掲載され=写真=、『日本の軍国主義復活をあおるのか』との批判が上がっている」「中国紙は旭日旗を『日本軍旗』とし、『彼女は中国人民の感情を傷つけた』といった読者の声を伝えている。新聞出版当局が調査を始めたともされる」とある。

 これが趙薇事件だが、その後の顛末は、馬立誠の著作、『〈反日〉からの脱却』(2003年10月、中央公論新社)に詳しいので紹介する。この本の表紙には、朝日のカラー写真と同じものが使われている。

 「趙微はその服を着たことにより、国じゅうの世論にたたかれた。糾弾者たちは、(中略)メディアやインターネット上で、『民族の裏切り者、売国奴、小日本の芸者』『レイプし、先祖の墓を暴け』などと、のろいの言葉を浴びせた。(中略)ことは、彼女が公開の場でひきずり倒され、汚水を浴びせられる事態にまで発展した。二〇〇二年四月三日付の〈北京青年報〉紙によると、呉某は、趙微が出演する二〇〇一年十二月二十八日の長沙でのイベントに、汚水を詰めたミネラルウォーターの瓶を持ち込み、『趙微の背後から舞台に上がり、彼女を引きずり倒し、汚水をぶちまけた』のだ。」(同書、8~9頁)

 中共での問題は、二十年近くも前のことであり、それはその後どうなったかと言えば、全く問題になっていないのである。趙微は当時謝罪を要求されて謝罪したが、女優として現在も活動しているようである。

 1982年の第一次教科書事件の際には、中共と一緒になって日本を攻撃した韓国は、2001年には、全く騒がなかった。ところが韓国は近年になってから問題にしだす。10月6日の「産経抄」によれば、それは2011年からだという。旭日旗はもちろんのこと、旭日的な放射状のデザインまで、偏執狂的に糾弾するようになっていた。だとすれば、マケドニアの国旗に、文句をつけなければならなくなる。これは他国の国旗を否定するのだから、究極の主権侵害である。

 旭日旗問題について、最近では徐敬徳という学者が中心となって排斥運動を展開し、メディアでは特に、中央日報がそれを推進していたようだ。そして今回、今までは民間の運動だったものが、文政権になって政府そのものが、卑劣な旭日旗の排斥運動に乗り出したのである。

 それがいかに支離滅裂な、全く筋の通らない外交的要求であるかは、実は極めて簡単なことで判明する。なぜならば韓国は、今回これだけ旭日旗が問題になっているのに、旭日的放射状デザインどころか、まぎれもない旭日旗である朝日新聞の社旗に対して、やめろと糾弾しているという話は、全く聞こえてこないからである。

 その理由として考えられるのは、ただ一つである。朝日と韓国とはお互いに仲間・身内・グルであるからであろう。身内に対しては、攻撃しないのだ。ではいかなる意味での仲間であるのか。それは日本虐待、日本ヘイトという目的を共有することにおいて、両者は素晴らしい仲間・グルであるわけだ。

 朝日新聞はこの問題で完全な当事者であり、甲子園大会をはじめとする主催イベントで、大量の旭日旗を使い続けているのだから、韓国に対して旭日旗の正当性を、堂々と主張する責任がある。

 

sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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