『月刊日本』2020年5月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2020年4月22日
今回のコロナウイルス問題の勃発で、日本でも世界でも実にいろいろ問題の所在が明らかになった。その中でも極めて重大な問題として、EUの内部の分断・亀裂という問題がある。従来でも中東からの不法移民問題や、イギリスの離脱問題で指摘されていたが、コロナウイルス問題でいっそう鮮明になった。
3月16日、ドイツはコロナ対策のために、周辺の五カ国との国境を封鎖した。五カ国とは、フランス・オーストリア・スイス・デンマーク・ルクセンブルクである。ドイツ以前に国境封鎖した加盟国は幾つもあるが、中心国家ドイツが看板政策であるシェンゲン協定に自ら違反したのは象徴的であった。
EUの亀裂は、コロナ債の問題にも表れている。コロナ債とは、コロナウイルス問題に対処するために、緊急に債権を発行しようとするもので、被害の大きいイタリア・スペインなど九カ国が、EUに要求したがドイツなどによって反対された。
ところでコロナウイルス問題での対立は、ハンガリー政権の対応に関しても表面化している。それはハンガリーのオルバン政権が、非常事態法を成立させたことである。3月30日に採決され、翌日には施行された。4月2日、朝日朝刊の報道によると、「同法は、感染対策に必要なら根拠法がなくても特別措置を講じられる権限を政府に与え、国民が隔離政策に従わない場合、禁固3年以下の刑を科したり、フェイク(偽)ニュースなど感染対策を妨げる情報を流した場合は禁固5年以下の刑を科したりする」もので、野党が反発しているのは、期限があいまいな点だという。
EUのフォンデアライエン委員長は、名指しではないが、31日の声明で、「自由、民主主義、法の支配、人権の尊重」と言った、基本的理念に対する危惧を表明し、国連人権高等弁務官事務所も、同法に期限が設けられていなことに警告を発した。
ところでこのハンガリーの非常事態法については、朝日新聞の「素粒子」が4月3日に、早速イチャモンを付けている。
「他人事ではない。政府が超法規的な権限を握るハンガリー非常事態法。ナチ独裁を生んだ授権法にも、自民党改憲草案の緊急事態条項にも似て」。
ハンガリーの非常事態法に文句をつけるだけでなく、ナチス政権に結び付け、そして安倍政権への呪詛に及ぶ、何度も飽きずに繰り返す、お決まりの定番料理と言える。
その朝日新聞は、2月23日の1紙面で、武漢封鎖一カ月に際して、最初に患者を受け入れた、武漢の金銀潭病院の張定宇院長にビデオ通話で取材しているが、「張院長が外国メディアの取材に応じるのは初めて。武漢の医療機関幹部が応じるのも極めて異例だ」と言っている。特別待遇として、全体主義政権から優遇されていることを、隠すどころか自慢しているわけである。
したがって、同日の2面「時時刻刻」欄には、以下の記述がある。「1100万人の大都市を封鎖するという決断は、中国特有の政治体制だからこそ可能だったと言える。中国の呼吸器系疾病の第一人者である鍾南山医師は『これほどの動員力を持ち、市民を一斉に動かせる国は中国以外にない』と語る」「政権はこうした中央集権システムの『優位性』を誇り、武漢封鎖が感染の拡大阻止に効果を示したとアピールし始めている」。
すなわち、世界史の中でも画期的な、バイオテロの犯人による、居直り強盗まがいの暴言を、朝日はそのまま取り次いでいる。まさにメッセンジャー・ボーイである。
なお2面時時刻刻には、この記事の上部にも素晴らしい記事がある。二月下旬のWHOによる緊急事態宣言に関するものである。「武漢の封鎖が発表されたちょうどその時、スイス・ジュネーブでは世界保健機関(WHO)の専門家による緊急委員会が開かれていた。中国は、委員会が『国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態宣言』を出さないよう外交の力で働きかけていた節がある」「習氏は22日、委員会を取り仕切るディディエ・フサン委員長の出身国であるフランスのマクロン大統領と電話会談。『中国は厳しい措置を講じており、WHOにも情報を伝えている』と理解を求めた。結局、WHOの委員会はこの日、緊急事態宣言についての結論を持ち越し、翌日も見送った」。この記事では、習が電話会談した相手は、マクロンだけだが、雑誌『Hanada』四月号の遠藤誉論文では、ドイツのメルケル首相も含まれている。
朝日新聞が、現代に生存するナチズム国家・中共の手先だとしたら、バイオテロの張本人に加担した独仏首脳は、ナチズム国家のお友達・共犯者と言えるだろう。
← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)
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