『月刊日本』2021年11月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2021年10月22日
自民党新総裁に岸田文雄氏が選出された。菅前首相が自ら辞任したためである。菅氏はメディアの権力によって、辞任に追い込まれたと言ってよい。菅氏はコロナ問題において、ワクチンの接種など、それなりに成功を収めていたにも拘わらず、朝日をはじめとする主流メディアは、成果を全く認めずに徹底的に批判した。それはまさに誹謗・中傷に満ちたものであったといえる。それによって内閣支持率は急速に下落して、首相の地元である横浜市長選挙まで、大敗を喫した。ショックを受けた首相は、自ら迷走を繰り返して、辞任のやむなきに至った。
オリンピック・パラリンピックの開催においては、、主流メディアの中止大キャンペーンにも拘わらず、これを実際に遂行した。ただし残念なことは、無観客開催にしてしまったことである。そのためチケット収入が消し飛んで、大幅な赤字を生み出すことになった。この点は、頑張り切れなかったわけである。
それによって日本が優勝したソフトボールも野球も、日本人は直接に観戦・応援することができなかった。オリンピックが終わると、プロ野球は公式に開催されて、多くの観客が観戦している。その人数は新聞のスポーツ欄に明記されている。無観客となったパラリンピック期間中も、そこには数千人から一万人を超える数字が示されているのである。
菅政権は短期間に各種の実績を挙げたが、反対に大きな失策も犯した。その代表的な例は脱炭素問題に関する、無謀な公約である。温室効果ガスを、2030年までに、13年比で46パーセント削減、2050年には全廃するというもので、これには大いに疑問が提出されている。そうなれば現在の日本で唯一の基幹産業である自動車産業に大打撃を与えて、日本は完全に没落するという。杉山大志氏など多くの論者が、口を酸っぱくして主張している。
脱炭素の根拠となる気候変動問題は、主流メディアである朝日新聞やNHKで熱心に報道されているが、極めて疑わしいものである。特に少女グレタを使って、世界的な大キャンペーンが展開されていることこそ、怪しいことの何よりの証拠である。子供を使った煽動であるから、グレタ嬢はまさに「環境紅衛兵」と言うべき存在である。
そもそもグレタ嬢は飛行機には乗らないと宣言して、ヨットで大西洋横断などをしていた。ところで現在、コロナのおかげで、世界の飛行機輸送業界は大打撃を受けている。それによって二酸化炭素排出量は、きっと大幅に改善されたのであろう。つまりグレタ嬢は、大喜びしているに違いない。そうであるのなら、ダメージを受けてせっかく衰退した航空輸送業界を、環境改善のためには、復活させてはいけないのではないか。環境問題に熱心な朝日新聞などは、そう主張すべきであるのに、一向にそんな動きはないようだ。
菅首相は、昵懇な環境大臣・小泉新次郎氏や、原発に批判的な河野太郎氏などに引きずられて、無謀な公約をしてしまったのだろうか。新しい岸田政権で、小泉環境大臣はいなくなったが、主流メディアに逆らうことは難しそうである。
ところで10月4日に新内閣が発足した。その名簿を一見して、やはりと失望を感じざるを得なかった。公明党の議員が、またしても国土交通大臣の地位を引き継いでいたからである。連立政権を構成する与党であると言っても、これは自民党による巨大な失策である。国土交通省は極めて重要な官庁であり、その大臣は内閣の中でも重職である。日本の国土と交通に関することだけでなく、インバウンドとして重要な観光、そして海の警察である海上保安庁まで管轄しているからである。
その重要閣僚を、公明党がずっと独占していることは、極めて異常だと言わなければならない。これは以前に一度あったことはあるが、第二次安倍政権の時代から公明党が独占することが定着してしまった。国土交通省という、利権が多数存在すると思われる、巨大官庁が、一つの政党に独占されているのは、真に驚くべきことである。とくに中国との間で、尖閣をめぐる海上紛争が続いているのに、その警備を担当している海上保安庁を、中国と癒着関係にある公明党が独占しているのは、危険極まりない。いつまでも公明党と連立政権を続けることは、現在の自民党の最悪の犯罪である。
さらに日中関係で心配なのは、例の習近平を国賓として招待する問題である。昨年春に計画されていた習近平来日は、コロナによって実現しなかった。これこそコロナによる、ただ一つの僥倖である。岸田政権において、どのように扱われることになるのか。大いに危惧されるところである。
← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)
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