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朝日新聞の政権へのネガティブキャンペーンの失敗

『月刊日本』2021年12月号 酒井信彦の偽善主義を斬る   2021年11月22日

 10月31日に四年ぶりの総選挙が行われ、事前の予想に反して自民党が健闘し、安定多数を維持した。この選挙に関しては、朝日新聞は政権へのネガティブキャンペーンを展開し、立憲民主党と共産党の共闘を応援していたが、その期待に反した結果となったわけである。その無念ぶりは11月1日朝刊の見出しに典型的に表れていた。

 まず1面では、黒字白抜きの横型の大見出しで、「自民伸びず 過半数は維持」とあり、縦見出しでは「立憲後退 共闘生かせず」とある。初めから自民の大幅減少が予想されたのであるから、「伸びず」は明らかに意図的にごまかした表現である。なおこの横見出しはデジタル版では同じ16刷りなのに、「自公、290議席超す」と変えられている。

 2面の大きな横見出しは、「自民苦い再出発」で、縦見出しでは「幹部、相次ぎ選挙区落選」、「首相笑顔なく『信任された』」とある。予想外の議席を獲得できたのだから、「苦い再出発」であるはずがない。「首相笑顔なく」とあるが、そこに掲載されている写真の首相は、大笑いしているわけではないが、かすかに微笑んでいるようにみえる。

 朝日がまったく歓迎しない、自民党の健闘が起きてしまったために、朝日の報道の焦点は、議席の数よりも、「幹部、相次ぎ選挙区落選」の方となる。それに関して、11月1日の社説「岸田政権、継続へ」では、「世論調査などで、安倍・菅路線からの転換を求める声が多いなか、森友・加計・桜を見る会といった『負の遺産』の清算に後ろ向きな姿勢も影響しただろう。疑惑についての説明責任から逃げ回った甘利氏の落選は、『政治とカネ』の問題に対する有権者の厳しい評価に違いない。首相に幹事長を辞任する意向を伝えたのは当然だ」と述べている。

 この有力議員の小選挙区落選をさらに大きく取り上げたのが、11月1日の第一社会面であった。この面は広告がなく、殆ど全紙面を使ってこの問題を報じている。最上部には、横幅一杯の大見出しで、「自民重鎮に逆風」とあるのだが、殆ど見たこともない巨大な活字で、この活字は一つが縦横4センチほどもある。そして縦見出しには「甘利氏へ『説明しない』批判」とあって、中心人物は甘利幹事長であり、金銭問題への説明不足が落選の原因とする。

 記事には「甘利氏は岸田政権誕生の立役者で、安倍晋三氏、麻生太郎氏とともに『3A』と呼ばれる重鎮。ただ、2016年1月の経済再生相辞任につながった現金授受疑惑への批判が常につきまとい、幹事長就任後は、野党から説明責任を果たしていないと追及されていた」とある。

 しかしそのあとで「現金授受疑惑が浮上した翌17年の前回衆院選でも希望の党から立った太氏に約6万票差のダブルスコアで圧勝し、地盤が揺らぐことはなかった」とあるのだから、今回の小選挙区落選は、幹事長になったことをきっかけとして、野党が蒸し返して追及し、さらにそれ以前に虐日偽善メディアが大騒ぎした効果が、見事に発揮されたものであることがわかる。

 甘利バッシングには、過去の現金疑惑が徹底的に利用されたが、これは安倍・菅政権を執拗に攻撃してきた、虐日主流メディアの手口がそのまま流用されたものである。今回の選挙においても、主流メディアは森・加計・桜の会問題を、何度も何度も蒸し返して言及した。最近ではそれに「コロナ失政」が加わっており、神奈川県の横浜市長選挙では、この方が最大限に使われて大成功を収め、菅首相を辞任に追い込んだ。総選挙では、朝日は自民党の大物議員が落選したことに、1日の社会面のように、大喜びしたのであるが、野党側も小沢一郎氏・辻本清美氏のような落選者を出したことは、まことに皮肉であった。

 さらに皮肉なのは立憲民主党の最高幹部である、枝野代表と福山幹事長が敗北の責任によって、辞任に追い込まれたことである。朝日は枝野代表の辞任表明以前に、11月3日の社説で、辞任を要求しているのは、可愛さ余って憎さが百倍ということなのだろ。一方、共産党の志位委員長は居座り続けているが、これに対して朝日は批判しないようだ。

 それにしても朝日新聞の甘利落選の喜び方は、まことに異常なほどである。そこにはそれなりの理由があるだろう。甘利氏は今回の岸田内閣誕生の最高功労者であり、さらに岸田内閣の看板政策である、経済安保は甘利氏が中心となり、積極的に推進してきた。この経済安保に日本が目覚めることは、経済ナショナリズムの復興であり、ナショナリズムが大嫌いな朝日新聞が好ましく思うわけがない。そして次期首相の最有力候補を、差し当たって失脚させることができたのだから。

 

sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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