Home > 寄稿 > | 月刊日本 > 世界中が非難するロシアの侵略 世界中が目を瞑った中国の侵略

世界中が非難するロシアの侵略 世界中が目を瞑った中国の侵略

『月刊日本』2022年4月号  酒井信彦の偽善主義を斬る   2022年3月22日

 2月24日、プーチン・ロシア大統領は、とうとうウクライナに対する侵略を開始した。侵略を正当化する根拠としては、いろいろあるが、このところ強調されているのは、「歴史」である。そこで出てくるのは、かつてキエフを首都とした、「キエフ公国」であり、それは「キエフ・ルーシ」と呼ばれて、ロシアの起源とするものである。したがってロシア民族とウクライナ民族は、単なる兄弟民族にとどまらず、一体の実質的な同一民族であるとの主張である。

 この主張をプーチンは、すでに昨年7月、「ロシア人とウクライナ人の歴史的な一体性について」と題する論文を公表しており、25日の朝日の2面・7面の記事によれば、「我々の精神的、人間的、文化的絆は一つの起源にさかのぼる」、「真のウクライナの主権は、ロシアとの協力関係の中でのみ可能になる」などと述べているという。

 侵略を正当化する理由として、「歴史」を利用すると言えば、すぐに想起するのは、中華人民共和国・中共の場合である。歴史の中でも民族的同一性を根拠とするのが特徴である。中共の場合は、民族概念そのものを二重構造にしておいて、個々の民族は下位の民族であり、その下位の民族のすべてを統合する民族概念として、「中華民族」概念を設定する。したがって下位の民族の表現を、「~人」ではなく意図的に「~族」と表現する。族と言う表現は、普通にはまともな民族や国家を形成できなかった、部族的な段階の人間集団を表す。アメリカインディアンの「アパッチ族」や、極めて原始的な生活をしている、アマゾン川の奥地の「ヤノマミ族」と言ったようにである。したがって族というのは、侵略を正当化するために作られた、侵略用語であり、究極の差別用語であると言わなければならない。

 ところで2月4日、「外交ボイコット」で話題になった、北京冬季五輪の開会式があった。聖火の最終ランナーの一人は、ウイグル人のジニゲル・イラムジャンさんがであったが、日本のメディアは、「ウイグル族」と表現している。最近日本のメディアでも、正確に「人」と表現する例もあるが、朝日新聞などは最もかたくなに、差別用語に執着している。これも朝日新聞伝統の、対中忖度体質の現れなのであろう。

 ロシアのウクライナに対する軍事行動を、はじめは「進出」と表現していた朝日新聞も、「侵攻」と表現するようになった。侵攻が完全に定着すれは、それは正式に「侵略」と言うべきである。中華人民共和国の場合は、その誕生に際して南モンゴル・東トルキスタン(ウイグル)・チベットを軍事力を使って併合した。それによって第二次大戦後の植民地体制が崩壊し、帝国が解体して支配下にあった民族が、次々と独立する時代に、その時代の趨勢とまったく逆行して、清帝国が再建されてしまったのである。

 現在進行形で進んでいる、ロシアによるウクライナ侵略は、世界中がこれこそ侵略行為だと、認めたわけである。であるならば、中華人民共和国の成立に伴って行われた軍事併合も、何十年も前の出来事であっても、侵略行為と認定すべきである。国際社会は、この極めて単純・簡明な事実に目をつぶってきた。特に民主主義を奉ずる、西側諸国の責任は巨大である。アメリカはソ連崩壊後に、唯一の超大国を自任しながら、中共解体という使命を忘ただけでなく、わざわざ中共を経済大国・軍事大国に育て上げるという、本末転倒した大失策を演じた。

 ロシアにプーチンが出現して、旧ソ連に本家帰りしたのも、中共が生き延びてきたからである。それにはアメリカだけでなく、ヨーロッパの責任も重い。特にドイツのメルケルは頻繁に中共を訪問して、密接な経済関係を築き、自国の経済成長に役立てた。それに対して日本は、中共にさんざん利用されただけである。

 プーチンがしているのは、侵略であるから帝国主義である。つまりプーチンが目指しているのは、旧ソ連の回復だけでなく、かつてのロシア帝国の再建であろう。このロシア帝国には、フィンランドやバルト三国、ポーランドの東半分なども含まれていた。一方、シナ人は清帝国をかなり再建してしまっている。しかも清帝国の支配者は満州人であって、シナ人は征服されていた側である。まったく筋の通らないデタラメな悪逆非道が、まかり通っている。

 今や中共のジェノサイドの暴虐も明らかになった。ロシアの侵略国家の犯罪も明確になった。今世界が認識しなければならないのは、中華人民共和国がその根底から侵略国家であるというその本質である。現代に生きる人間の責務は、この驚くべき世界史の不条理を、一日も早く終わらせることである。

 

sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


Home > 寄稿 > | 月刊日本 > 世界中が非難するロシアの侵略 世界中が目を瞑った中国の侵略

検索
Nationalism_botをフォローしましょう

Twitterをお楽しみの方は、
Followしてください。

リンク集
フィード購読リンク
QRコード
 
QR_Code.jpg

このブログを携帯でご覧になれます

ページのトップに戻る