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遠慮・忖度の翼をロシアにまで広げる朝日新聞

『月刊日本』2022年5月号 酒井信彦の偽善主義を斬る   2022年4月22日

 バイデン米大統領は、三月下旬4日間の訪欧の締めくくりとして、26日ポーランドのワルシャワの旧王宮で演説を行ったのだが、これが問題にされ批判された。演説の結びで、プーチンに「この男が権力の座にとどまり続けてはいけない」と言った点であり、朝日も産経も見出しにしている。この言葉はロシアの体制転覆を目指したものだから、軽率で言いすぎだというわけである。この言葉については、ロシア側が直ちに強く抗議しただけでなく、アメリカ側の高官も、政権交代を迫るものではないと釈明した。なおこのフレーズは、演説の原稿にはなく大統領のアドリブであったと説明されている。そしてバイデン大統領自身も、27日ワシントンの記者会で、体制転換を求める意思がないことを言明した。この展開に、アメリカの劣化ぶりがよく表れている。

 朝日28日3面の記事によれば、「バイデン氏は演説で批判の矛先をプーチン氏個人に集中させた。『ロシア国民は我々の敵ではない』と呼びかける一方で、『非難されるべきはウラジミール・プーチン。以上だ』と言い切った。バイデン氏は最近、プーチン氏への個人批判を強める。この日の演説前には『虐殺者(butcher)だ』とも非難した。侵略開始後は『人殺しの独裁者』『真の悪党』『戦争犯罪人』といった言葉を公の場で相次いで使っている」とある。バイデン大統領が、攻撃対象を個人に集中させたのは、体制転覆の意図をカムフラージュするためと考えるのは、やはりうがちすぎだろう。

 このバイデン発言問題を、さらに否定的・批判的に追及したのが朝日新聞である。3月30日7面の記事では、「バイデン米大統領がロシアのプーチン大統領について『権力の座にとどまり続けてはいけない』と発言した問題が波紋を広げている。(中略)バイデン氏は『憤りを表現した』『個人的な感情だった』と釈明し、プーチン政権の体制転換の意図を否定したが、大統領の資質を問われかねない事態となっている」と言う。

 そして「いくら個人的な『憤り』を表明したと釈明しても、米国はプーチン政権の態勢転換を狙っていると受け取りかねない今回の発言は、ロシアの攻撃をさらに激化させかねないリスクをはらむ」と言い、さらに「バイデン氏は最近『人殺しの独裁者』『悪党』『戦争犯罪人』『虐殺者』とプーチン氏への非難を強めていた。バイデン氏の発言は台湾の事例も含めて緊張関係にある中ロを強く刺激し、事態をあらぬ方向へと導きかねない」とまで言うのである。台湾にまで言及して、あらぬ方向とは一体何なのか。まことに隷中朝日らしい言い分で、中国だけでなくその御仲間のロシアにまで、遠慮・忖度の翼を広げているようである。意味不明な、無責任な言い方であり、単に不安をあおっているだけである。

 ロシアがキーフなど北部地域から撤退したが、4月3日に至ってブチャなどですさまじい虐殺・強姦を行っていたことが明らかになった。4月4日朝日夕刊トップ記事のリードは、「ロシア軍によるウクライナ侵攻をめぐり、ロシア軍から解放された首都キーウ(キエフ)近郊で、一般市民とみられる多数の遺体が見つかった。ウクライナの検察当局は3日、少なくとも民間人410人の遺体を確認したとしており、ロシア側の戦争犯罪を問う声が国内外で急速に高まっている。」とある。

 この虐殺の事実が明らかになった突端に、バイデンはもちろん、多くの国々の首脳が、戦争犯罪だと明言するようになったのは、まことに皮肉である。先の朝日の言い分のようだとすると、バイデン発言によって、「ロシアの攻撃が激化」して、このような虐殺が生み出されたというのであろうか。

 しかしプーチン個人を「戦争犯罪人」と言っているだけでは、とても済むような問題ではない。そもそもプーチンを生み出したのは、現在のロシアの体制そのものである。ロシアの現実を直視すれば、プーチン政権の打倒だけではなく、体制そのものを打倒しなければならないのは、まったく当たり前の話ではないか。

 かつてソ連が存在した時代において、アメリカのレーガン大統領は、ソ連を「悪の帝国」と決めつけて、その打倒を図った。つまり愚かなバイデンは自ら否定してしまったのだが、ロシアのプーチン政権はもちろんのこと、現在のロシアの体制を転覆させることは、まったく正義にかなっているのである。

 今回の虐殺問題で、中国はロシアの言い分を報道して、虐殺の真実を隠蔽している(4月7日現在)。すなわちロシアのウクライナ侵略問題で、中国は完全に侵略者の側に就いたことが、まったく明白になった。この中国の体制も転覆させなければならないことは、言うまでもない。

 

sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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