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朝日新聞こそ歴史修正主義者だ

『月刊日本』2015年5月号 羅針盤 2015年4月22日

朝日新聞社ジャーナリスト学校が発行している月刊誌に、『ジャーナリズム』という雑誌がある。その三月号の特集は、「慰安婦報道と検証紙面、吉田調書、池上問題・・・朝日新聞問題を徹底検証する」で、例月に比してかなり分厚い冊になっている。

冒頭に作家・半藤一利、東京大学教授・苅部直、朝日OB・外岡秀俊による座談会(司会が編集人・松本一弥)があり、その後に二十二本の論文と一つのインタビューが載っている。謳い文句には、「様々な立場の方々による多様な論考を通して、朝日新聞問題をとことん検証しました」とあるが、中身は全くそれに伴っていない。その執筆者は、秦郁彦のような例外もあるが、朝日側の人物が殆どだと言わざるを得ない。週刊金曜日と創の編集長は出てくるが、右の雑誌の編集長は出てこない。

その中で法政大学教授・杉田敦の一文は、「自己批判を知らない歴史修正主義者に対抗する手段は、徹底した自己批判である」と題されている。このタイトルは真に素晴らしい。朝日新聞に徹底した自己批判を要求していると、大いに期待して読んでみた。朝日の発想が歴史修正主義と類似しているとの指摘はあるが、他の新聞も同じことをやっていると、まとめてしまっている。

朝日自身の歴史の自己批判、自己検証としては、巻頭の座談会でも言及されているが、『新聞と戦争』・『新聞と昭和』の二つの書物であろう。外岡は、二〇〇六年に編集局長になり、「その年は、ここにいる松本が中心になって、朝日新聞の戦争責任を正面から取り上げる『新聞と戦争』という長期連載をやっていたんです」と述べ、それに対して半藤は、「おやりになりましたよね。非常に立派なものでしたね」と応じている。

しかし「新聞と戦争」は、そんなに立派なものなのか。そもそも「新聞と戦争」というタイトル自体がふざけている。朝日新聞の戦争報道を検証したのだから、「朝日新聞と戦争」であるべきである。さらに言えば、「朝日新聞の戦争責任」あるいは「朝日新聞の戦争犯罪」でなければならない。

また『新聞と戦争』の巻末で、井上ひさしのコメントが掲載されているが、それがこの本の根本的欺瞞性を証明している。コメントの末尾では、「過去の自らの活動を、驚くほど厳しく自己点検している」と述べているが、冒頭の部分では「だが、あのときの新聞に『この戦争は間違っている』と批判が出来ただろうか。当時の私自身の感覚に照らせば、無理だったと思う。軍部の力は強く、『全体戦争』の状況下では新聞も国家に動員されていたからだ」と、完全に免罪符を与えている。

また『新聞と昭和』では、朝日の人間である船橋洋一が「戦前のジャーナリズムの挫折は、テロと暴力の恐怖抜きには考えられない。『言論の自由』は暴力によって抹殺された。人権を保障すべき司法はあてにならなかった」と、言い訳をしている。

私は一月号の本欄で、『朝日新聞の中国侵略』の著者であるメディア学者・山本武利による、上海特務機関と密接な関係にあった、大陸新報問題での朝日追及を紹介しておいた。山本が大陸新報について、朝日側にさらなる情報開示を求めたのに対し、「新聞と戦争」で回答すると答えたが、その約束は全く守られなかった。山本に面会して約束を行った人物こそ、松本一弥その人である。

ところで、半藤一利と保阪正康との対談本、『そして、メディアは日本を戦争に導いた』(東洋経済新報社)では、戦時の新聞について、次のように述べている。「半藤 新聞社の人は当時の社内事情についてあまり書かないんですよね。 保坂 全部逃げるんです。情報局が悪いとか、内務省の検閲があったからだとか、全部他者に責任を押し付けて、『俺たちの報道が邪魔された。報道姿勢をゆるぎなく守りたかったけれど妨害があってできなかったんだ』と言う。僕は新聞の自己弁護を読むと、いつも、何を言っているんだという感じがしますけれどね」。(一四七頁)続いて保阪は、武野武治(むのたけじ)とそれを良心視する風潮を批判している。今回の第三者委員会のメンバーであった保阪にすら、このように言われているのである。

朝日が信頼を回復したいのなら、まず大陸新報問題について、山本に約束した説明責任を果たしたらどうなのか。この号には、「朝日バッシング」と「歴史修正主義」という言葉が、いやになるほど出てくるが、朝日新聞こそ自己の歴史に対して、見事なる歴史修正主義者、歴史隠蔽主義者なのである。

 

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sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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