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天皇陛下の「お言葉」に思う

『月刊日本』2016年11月号 羅針盤 2016年10月22日

8月8日に天皇陛下がテレビで国民に、直接的に譲位の意向を述べられた出来事に対して、新聞・雑誌などで大量の情報が発信されている。その中で私が出色だと思ったのは、『週刊新潮』9月15日号に掲載された、「天皇陛下『お言葉』は『違憲か暴走』と断じる皇室記者の失望」「巷は賞賛一色でも専門家たちの違和感」と題された記事である。

まず世論調査で譲位を支持する意見が圧倒的なのを指摘し、ついで皇室報道の専門家集団である宮内記者会では、「論調は大いに様相を異にしていた」と述べる。

大手紙の皇室担当記者は、「あのような『お言葉』を陛下が発せられたことに、失望を禁じ得ませんでした」「あのお気持ちの表明によって、陛下が皇后さまとともに28年間、ひたすら慎ましやかに積み重ねてこられた〝あるべき象徴としてのお振舞い〟が台無しになってしまった。端的に言えば禁じ手、『やってはいけないことをなさってしまった』ということ。記者会の内部はもちろん、OBや本社デスクなど、長らく皇室取材に携わってきた者ほど、こうした思いを強くしているのが現状です」という。

また陛下は以前からご自分の希望で、積極的に行動されてきたが、それには、「徹底して水面下で調整がなされてきました。万が一にも陛下の『これがしたい』とのご意向が露わになれば、憲法上の問題へと発展しかねないので、周囲が十重二十重に忖度する形をとって実現をみてきた。そもそも、それが皇室の美徳であったはずです」と、周囲の配慮によって美徳がつくられてきたことを、宮内庁担当のOB記者が言う。

社会部の皇室担当デスクは、「今回、陛下はその美徳とは相反するかのように『全身全霊をもって象徴の務めを果たしていく』『国民の理解を得られることを切に願っています』などと、いつになく直截な表現をなさっていた」「さらに驚いたのは、メッセージの中で、皇室典範に定められた摂政の適用について明確に否定的なお立場を示されたことです。(中略)もはや〝国政に関する権能を有しない〟と定めた憲法を踏み越えているのは明らかです」という。摂政を明確に拒否されたことが、憲法に違反するというわけである。

3年前のお誕生日会見で、陛下が「平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り・・・」「知日派の米国人の協力も忘れてはならない」と述べられたことについて、この皇室担当デスクは、「米国による〝押しつけ憲法〟から脱却し、改正しようと躍起になる安倍政権を牽制されてきたとも拝察されますが、そのご自身が憲法に抵触なさってしまえば、全てが水の泡です。(中略)いずれにせよ、こうした〝暴走〟を、宮内庁は止められなかったわけです。」と、天皇陛下の発言を「暴走」と断言する。

別のベテラン記者は、「今回のスクープの最大の〝情報源〟は、いわば陛下です。陛下のご了承のもと、宮内庁が公共放送とタッグを組み、壮大なシナリオを描いたわけです。侍従たちに筋書きを作らせ、事前にメディアにリークして世論の反応を探り、その上で報じた通りのご発言をなさるというのは、多分に政治的だと言わざるをえません」。これは陛下が常々言われる、皇室は受動的とは逆で、違憲の疑いが濃厚であるのだが、「大半の国民は〝陛下もあれだけ頑張ってこられたのだから〟と、感情に流されてしまった。その時点で日本中が思考停止に陥り、憲法との兼ね合いから目を逸らされてしまったのです。あえて言えば、これは陛下がたびたび『深い反省』とともに言及なさってきた、先の大戦時と同じ構図になってしまったのではないでしょうか」と指摘する。

末尾のベテラン記者の弁は、「崇高なほどストイックに憲法を守り、黙々とご公務に取り組まれる陛下のお姿をずっと拝してきたのに、今までは一体なんだったのか。そんな違和感を記事にできるはずもなく、忸怩たる思いで情勢を見続けています」とある。しかし天皇陛下はストイックではなくずっと能動的であられたのであり、今回はそれを集大成されたのである。また「違和感を記事にできない」とはジャーナリストの責務を放棄したものであり、本名で自己の見解を披歴すべきである。

この記事の中で、私が最も重要だと考えるのは、天皇陛下が「憲法を守ると」おっしゃりながら憲法違反をされていることである。「綸言汗の如し」というが、矛盾したことをおっしゃるのは、天皇の権威を自ら傷つけられる行為である。

 

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sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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