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日本は精神奴隷状態に陥った

『月刊日本』2016年12月号 羅針盤 2016年11月22日

今年の11月3日は、日本国憲法が公布されてから70年になるということで、朝日新聞は11月2日・3日と、連日にわたって長文の社説を掲載した。また今年は特に例の「押しつけ憲法論」に注目して、4日から「憲法を考える 押しつけって何?」の連載を開始した。その初回、編集委員・豊秀一による、4日一面の見出しに「生い立ち様々 各国で知恵」と掲げた記事には、朝日らしい、こじつけ的な論理展開が見事に表れていて、甚だ興味深い。

まず冒頭で来年5月にキプロスで開催される国際憲法学会の部会のテーマが、「押しつけ憲法」になるのだということが紹介される。その部会責任者は、「押しつけかそうでないかという二分論は、日本の憲法への理解を妨げてしまう。大切なのは、日本の例から憲法への信頼を醸成したのは何かを探ることだ」という。「憲法への信頼を醸成した」とあるように、この見解がすでに誤った認識に基づいているようだ。日本の例など決して参考にならないだろう。

続いて安保法制問題で有名になった、長谷部恭男の大日本帝国憲法に関する論が紹介される。それは、「『押しつけ』という意味では、明治時代につくられた憲法もそうだったと長谷部恭男・早大教授は言う。『天皇主権を定めた大日本帝国憲法は、本来憲法をつくる権力を持つ、主権者たる国民に明治政府が押しつけたものだ。』」この説明がすでにして極めておかしい。大日本帝国憲法は、政府が「主権者たる国民」に押しつけたなどと言っているが、議会制度がない時代に、主権者たる国民もへったくれもないだろう。

さらに憲法の「物真似論」「コピペ論」が出てくる。「長谷部氏は今春発表した論文で、大日本帝国憲法の核心である君主制原理が、19世紀のドイツ連邦の国々の憲法をまねたものだと明らかにした。天皇について定めた第4条はバイエルンとビュルテンベルク両憲法の規定を下書きにし、さらにこれらの憲法は、ナポレオン退位後にできた欽定憲法『フランス1814シャルト』がモデルとなっている。『大日本帝国憲法は日本固有の価値観を表したものという見方があるが、要は〝コピー・アンド・ペースト〟です』と長谷部氏。」

押しつけ・コピペについては、更に豊が補足して、「目を転じれば、米国では、奴隷制度廃止を掲げた憲法修正13条を南北戦争で敗北した南部に押しつけ、国のかたちをつくった。冷戦終結後、次々と新憲法を制定した東欧諸国は、人権尊重や権力分立、法の支配という西欧立憲主義の伝統を進んでコピペし、西側諸国の仲間入りを果たした」という。

日本国憲法が外国憲法のコピー・アンド・ペーストであるとの批判に対して、憲法のコピペは幾らでもあると、反論しているつもりであるらしい。しかしこの説明には、根本的な誤魔化し、すり替えがある。それはコピーを誰がやったのかという、憲法を作成した主体の問題である。大日本憲法は日本人がつくり、冷戦後の東欧諸国も自分自身で作ったのである。アメリカの場合は、内戦の終結によるものである。それに対して、日本国憲法を作ったのは、外国人であるアメリカ占領軍であり、したがってコピー・ペーストを行ったのも、アメリカ占領軍である。この根本的な事実を、完璧に無視して、全く同列に扱っている。

最近、日本国憲法がいかに他国の憲法のコピーで作られたかを、精細に明らかにした高尾栄司著『日本国憲法の真実』によれば、日本国憲法は天皇を人質とするという、真に卑劣な恐喝によって、日本国民に押し付けられたものである。1946年2月13日、外務大臣官邸において、ホイットニーは松本丞治に対して、アメリカの憲法提案を受け入れなければ、「天皇の身柄は保障できない」と言い放った。(同書、235~237頁)これこそ最も犯罪的な押しつけに違いない。

終戦時には皇室さえ存続すれば、日本は何とかなると判断したのかもしれない。しかしそれは完全な間違いであったことが明確になった。経済的な復興にはある程度成功したが、精神的復興には完全に失敗した。その明白な証拠こそ、戦後70年以上もたつというのに、「米帝憲法」を「不磨の大典」として押し戴く人間が、おびただしく存在することである。更に歴史問題を利用した、日本罪悪史観に基づく、内外で呼応した、日本を貶めてやまない虐日洗脳教育は、平成の時代になって却って強化された。今や国家意識・民族意識を骨抜きにされた、精神奴隷状態に陥っていると言わざるを得ない。

 

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sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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