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コロナ問題で大勝利を収める中国

『月刊日本』2021年2月号 酒井信彦の偽善主義を斬る      2021年1月22日

 中国はコロナ問題とそれに連動したアメリカ大統領選挙において、実に巨大な勝利を収めることができた。習近平は腹を抱えて、大笑いしていることであろう。

 中国はコロナ問題という明確なバイオテロによって、戦争もせずに、全世界に対して、巨大な打撃・損害を与えることに成功した。特にいままで世界の覇権を握っていたアメリカが、莫大な被害を生み出したことは、生命や経済の損失にとどまらず、アメリカの威信が大きく傷ついたことを意味している。

 しかもそれが大統領選の時期をちょうど重なり、民主党側がメディアと一体になって、アメリカのコロナ被害を、一方的にトランプの責任に押し付けて、トランプを落選させたことは、中国にとって予想以上の大戦果といえるだろう。

 というのは、トランプ大統領も就任当時は、中国を批判する姿勢を示していなかったが、まず貿易問題という経済から、中国に対する攻勢に乗り出し、特に末期には明確に中国の存在を正面から否定する政策を打ち出すに至った。

 つまりトランプ大統領は、共和党・民主党を問わず、従来のあまりにも間違ったアメリカの対中政策を、根本的に転換する意向を宣言したわけである。約30年前、「悪の帝国」ソ連が崩壊した後、単独覇権国となったアメリカは、残る共産主義の主要国家中国を崩壊させるという重大な使命を忘れて、中東にのめり込んで行き、そのために無駄な30年を浪費した。その間に中国は経済建設に邁進して、世界第二の経済大国となり、その成果を軍備に投入して、世界第二の軍事大国になりおおせた。それによって、「覇権を求めない」という言葉とは裏腹に、覇権追及国家の本性をむき出しにして、尖閣まで核心的利益と言うようになった。

 トランプ政権に至って、ようやくアメリカは本来の自己の使命に目覚めたのである。これは中国にとって、建国以来最大の危機であると言って良い。しかしこの危機は、コロナ問題とトランプ落選によって、完全に回避された。次期バイデン政権は、明らかにトランプ路線を継承しないに違いない。オバマ政権の副大統領時代に、バイデンが中国と極めて密接な関係にあったことは、紛れもない事実である。

 今回の大統領選挙で明らかになったのは、アメリカの民主主義がいかに欺瞞に満ちたものであるかと言うことである。日本の場合、自称リベラル派が完全にエセ・リベラルであることは、既にいやになるほど認識させられていたが、アメリカのリベラも全く同じであるわけだ。だから朝日新聞とニューヨーク・タイムズは親密なお友達なのである。アメリカのリベラリズムは、完全にメッキが剥がれたのであるが、それは世界でも、特に日本において、正確に認識されていない。

 コロナの被害はアメリカだけでなく全世界に及ぶわけであり、特にアジアにおいて中国のライバルと目されるインドに重大な被害を与えたことは、中国にとって多大な喜びとすることである。中国は自由のない強権政治によって、経済を急速に回復させることにより、疲弊した欧米を尻目に、経済的支配力を一層拡大するであろう。それは直ちに、政治的・軍事的支配力に直結する。

 しかしバイオテロの張本人、中国に対する世界の批判は、余りも低調である。オーストラリアが一人頑張っているが、卑劣な報復が行われている。それにもかかわらずオーストラリアを支援する国は、ほとんど見られない。世界全体に道義の退廃が顕著に進行しているのである。

 ところでアメリカの完全なる保護国である、我が日本はどうだろう。日本はコロナの直接的な生命の被害においては、欧米諸国に比較すれば軽度であったかもしれない。しかし経済においては甚大な被害を被った。日本経済の回復は、アメリカやヨーロッパに比べても、ずっと遅れると予想されている。その上に、オリンピックを延期されて、無駄な支出を強いられ、本当に開催できるかもはっきりしない。しかしその犯人中国に対する、菅政権になってからの動向においては、明らかな退化現象が見られる。

 すでに安倍政権時代にも、習近平国賓招致のように、迷走が見られた。それには二階幹事長及び公明党の影響が濃厚に感じられた。二階幹事長に擁立された菅首相は、さらにその傾向が強いのは当然であろう。その端的な表れが、RCEPのあっという間の署名であり、中国の外相に対する、日本の外相の卑屈な対応である。安倍首相が打ち出した、一枚看板である、「自由で開かれたインド太平洋」も怪しくなっている。香港が陥落した現在、中国の標的は台湾であり、その次は明らかに日本だろう。

 

sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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