Home > 寄稿 > | 月刊日本 > 世界情勢の変化によって再び注目される 「自由で開かれたインド太平洋戦略」

世界情勢の変化によって再び注目される 「自由で開かれたインド太平洋戦略」

※このタイトルは編集者によるもので、正確には「安倍政権の媚中外交」とあるべきです

 

『月刊日本』2021年7月号 酒井信彦の偽善主義を斬る   2021年6月22日

 朝日新聞に安倍政権を回顧した、「未完の最長政権」が連載されている。5月23日に始まった第3部は「外交」で最初の三回は対中外交である。23日1面トップの見出しは「書き換えられた対中親書」とあって、なかなか魅力的である。

 それは如何なることかと言うと、対中安倍外交には大きな転換点があって、それが2017年5月の、二階幹事長が訪中した際に託した、首相の親書が書き換えられた時だ、と言うわけである。2012年末に始まる第二期安倍政権では、中国に一貫して厳しい姿勢を見せていたが、これを転機として宥和的姿勢に変節したというわけである。

 二階が出席したのは「一帯一路」国際会議で、「訪中には経済産業省出身で、安倍側近の首相秘書官、今井尚哉が同行。習と対面した二階は『ここで読んでください』と笑顔で親書を手渡したという。親書には、中国の一帯一路を評価する内容が記されていた」。

 これに対して怒ったのが谷内正太郎だった。「中国に渡った親書の内容を知った国家安全保障局長の谷内正太郎は愕然とした。自らまとめた原案から大幅に書き換えられていたからだ。安倍に面会を求め、詰め寄った」。安倍は「僕もどうかなと思ったんだけどね」ととぼけたという。そして結局、書き換えは黙認された。

 ここで明らかなのは、政権内での対中政策に関する二つの意見の相違である。一つは対決派で谷内など外務省、もう一つが親中派で今井など経産省であろう。この親中派は自民党には二階などおり、公明党も当然ここに入る。外部では中国との経済関係に依存している財界はもちろん、メディア・学界などいくらでもいる。それに対して対決派は層が薄く、力量は限られている。

 この転換点以前は、安倍の従来の個性の下に、谷内の影響力が強く、16年8月のアフリカ訪問で「自由で開かれたインド太平洋戦略」をうちだした。「二階訪中はその翌年。谷内らが手がけた親書原案は『日本は一帯一路に慎重に対応していく』方針で作成され、安倍、副総理の麻生太郎、官房長官の菅義偉らの了承も取り付けていた。だが、中国側に渡った親書は、その方針と正反対の内容となっていた」と言うのである。

 親書の詳細はいまだに不明だが、今井は文芸春秋のインタビューで、「こんな恥ずかしい親書を二階幹事長に持たせるわけにいかないと、相当修正を加えた」と述べたという。

 記事の後半では、「『親書書き換え』を境に今井は、谷内ら『外交・安保』派と首相官邸で対立を深めていく」、「『首相は徐々に今井氏寄りになった』。政府関係者はそう語る」、と続き、「なぜ今井は対中協力を進めたのか。政府内には二つの見方がある」とし、一つは経産省出身の今井が経済界の意向に沿ったこと、もう一つが親中派の二階に配慮したことだとあるが、これは別個のものと言うより、一体のものだろう。

 この自民党の二階、官邸の今井の主導による親中路線は、昨年まで続いていた。それが習近平を国賓として招請するという、驚くほどの愚劣対中外交の基盤であったわけである。コロナ騒動の初期、誰からも批判された唐突な学校閉鎖は、今井の進言によったと、確か朝日新聞が書いていた。それは習来日をなんとしてでも実現するために、早く終息させたいとの目的から強行した、と考えれば、極めて理解しやすい。しかし習来日は危ういところでコロナのために実現しなかった。これは日本にとって、ただ一つのコロナの効用と言わなければならない。

 朝日は、安倍対中外交の評価については、25日の第三回で述べている。見出しは「対中協力路線 尖閣では効果見えず」。一応、成果があったとしながらも、末尾で、ある政府関係者の、「尖閣で譲歩せずとも日本との関係を改善できると中国に錯覚させてしまった」、外務省幹部の「中国は、日本政府内で経済重視の対中融和派と、安保重視の対中牽制派の対立を見透かし、その政府内の分断を狙って行動しているのではないか」の言葉を引用する。親中と言うより完全な隷中派である朝日新聞に、こうまで書かれてしまうとは、融和外交は完全に失敗したと評価せざるを得ない。親書の内容も明確にして、この安倍失敗外交は、徹底的に解明されなければならない。モリカケ桜ごときの話ではない。

 ところで世界情勢の変化によって、再び「自由で開かれたインド太平洋」が、リバイバルしてきたのは、まことに歴史の皮肉と言って良い。しかしバイデン政権による、対中対決姿勢の本気度が、どこまで確かなものなのか明確ではない。しかし日本の生存にとって、現代に生きるナチズム国家、中国と対決する以外の外交政策が、あり得るはずもない。

 

sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


Home > 寄稿 > | 月刊日本 > 世界情勢の変化によって再び注目される 「自由で開かれたインド太平洋戦略」

検索
Nationalism_botをフォローしましょう

Twitterをお楽しみの方は、
Followしてください。

リンク集
フィード購読リンク
QRコード
 
QR_Code.jpg

このブログを携帯でご覧になれます

ページのトップに戻る