【青蔵鉄道完成はチベット侵略の完成、その意味する所】
国民新聞』平成18年9月25日
本年七月一日、中共の青蔵鉄道が開業した。青蔵鉄道とは青海省のゴルムドから西蔵自治区(これを日本で「チベット自治区」と言っている)のラサまでの鉄道であるから、青海の青と西蔵の蔵を組み合わせてこのように呼ぶのである。
ただし本来の西蔵鉄道の計画は、一九五七年に毛沢東が唱えて、青海省の省都西寧からラサまでの千九百五十六㎞であり、八十四年に西寧からゴルムドまで八百十四㎞が完成したが、その後中断していた。2001年に工事を再開して昨年十月十五日に完成し、今年の開業に至ったのである。
今まで鉄道がなかった中共の一級行政区は青蔵自治区だけであったが、これによってそこにも鉄道が引かれた訳である。ただし注意しなければならないのは、青海省とは本来のチベットの一部であることだ。ゴルムドという地名はチベット語であり、ダライ・ラマ法王自身が青海省の東端である西寧近郊の出身である。西蔵自治区(百二十万平方㎞)の他に、青海省の全域や四川省の西半などを加えた二百二十万キロ平方㍍が、本来のチベットの領域である。つまり今度初めてチベットに鉄道が通ったとする説明は、明確な誤りである。今回開通した部分の総延長は千百四十二㌔平方㍍で、その特徴は極めて高所を通ることである。最高地点はタングラ山脈を越える五千七百十二㍍の地点で全体のうち九百六十㎞が、海抜四千㍍を越えるという。そのために車体は、飛行機のような機密車両にしたらしい。さらにラサから西蔵自治区の内部を延伸して五年以内に東方と南方に、合わせて七百㌔㍍を建設する計画だという。
チベットへの鉄道を建設した目的は、極めて単純で、それはチベットへの侵略を徹底するためである。つまり鉄道建設の目的は、侵略目的と同一である。シナ人がチベットを侵略した目的はいくつか考えられるが、まず膨大なシナ人人口を送り込む植民地としてである。侵略地帯へのシナ人の流入は、内蒙古自治区と呼ばれる南モンゴルが最も進み、次が新彊ウィグル自治区と呼ばれる東トルキスタンで、チベットは一番遅れている。チベットでも、青海省や四川省が進んでいるが、最後の西蔵自治区部分にも今後は急速にシナ人が流入することになるであろう。
次に考えられるのは、チベットの有する資源の収奪にある。チベット本来の領域であるチベット高原は、複雑な地殻変動を受けた地域であり、従って地下資源に富んでいると思われる。例えば現在の四川省である東部チベットに、揚子江の上流に当たるシナ語である金沙江という川があるが、これは砂金が取れたからに他ならない。
最後に、最も重要な軍事的要地としてである。世界地図を見ると分かるのだが、チベットはアジアの中心に位置している。東アジアは勿論、シベリアなどの北アジアも、東南アジアも、インドなどの南アジアも、イスラム圏の西アジアも、チベットから比較的短い距離で到達できる。アジア全域を支配するためには、チベット高原を押さえることが絶対に必要なのである。ここに軍事基地を置けば、ミサイルや航空機のみならず、陸上戦力も容易に移動できる。以上のようなシナ人のチベット侵略の目的を、より一層確実にするのが、鉄道建設であるが、このうち今後特に注目しなければならないのは、
第三の軍事目的であろう。中共は経済的成長に伴い、富国強兵路線すなわち軍国主義路線を驀進してきた。それによってそれによって生み出された周辺諸国に対する軍事的威圧が、ロシアやインドまで取り込んだ、中共を中心とする国際組織である上海協力機構を成立せしめている。また韓国は、単に歴史的にシナ人に頭が上がらないだけでなく、この軍事的威圧を感じているから、中共に極めて従属的に振る舞っているのである。チベットの鉄道が更に完成されれば、中共の軍事的脅威も飛躍的に高まるに違いない。
ところでこの中共の脅威に対して、最も鈍感なのは日本である。西蔵鉄道の開通も、もっぱらチベットへの観光客が増加するとった観点から捉えられている。現実の侵略国家であり、ますます軍事超大国を目指している超危険国家から最も敵視されているのが、一体どこの国なのか。それは我が日本ではないか。アジア大陸を支配するためには、チベットが必要だったように、太平洋を支配するためには日本列島が絶対に必要である。シナ人は必ず日本を侵略する。
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