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独立自尊の大和魂を取り戻せ‼

『月刊日本』2008年10月号 羅針盤

 北京オリンピックが終わった。その歴史的な評価については、右派論壇においてもいろいろ論じられているようだが、私見を率直に言ってしまえば、中共政府、シナ人の大勝利だと判断せざるを得ない。
 そもそも、今回のオリンピックは、開催を決定した際に、人権状況の改善という条件がつけられていたはずである。ところでそれは達成されたのかといえば、事実はまったく逆である。北京オリンピックは、かえって中共国民の人権を積極的に侵害することによって、開催を実現したのである。例えば北京を大改造するために、大量の住民が強制退去をさせられた。また開催時には、100万人以上の出稼ぎ労働者を強制帰郷させた。北京に水の供給を集中させるために、周囲の農村で水田耕作を禁じた。完璧なる公約違反である。

 これほどあからさまな約束違反を犯したにもかかわらず、国際オリンピック委員会は開催をやめなかった。それどころか国際社会が、それを唯々諾々と承認したのである。凄まじいばかりの茶番劇である。欧米諸国の指導者たち、とりわけ開会式に出席したアメリカのブッシュ大統領、フランスのサルコジ大統領の対応は、客観的に言ってまことに無様そのものであり、その犯した罪は極めて重い。
 私が常々指摘していることだが、チベット問題の本質は、民族独立問題であり、シナ人による侵略問題であるのだが、現在では一応人権問題ということに矮小化されている。オリンピックに直接的に関わる人権問題が、徹底的に黙殺されたわけであるが、チベット問題も完全にどこかに吹っ飛んでしまった。あれだけ事前に聖火リレーが大騒動になったにも拘わらず、雲散霧消してしまったのである。そもそもアメリカは、ソ連のアフガン侵略を理由に、モスクワ・オリンピックをボイコットしたのだから、侵略現行犯国家・中共が開催するオリンピックは、本来的にボイコットしなければならなかったのである。アメリカの巨大なるダブル・スタンダードである。
 問題はそれだけではない。開会式のいわゆるやらせ問題では、CG花火や口パク少女が話題になっているが、最も重要なのはニセ「少数民族」問題である。少数民族に見せかけた少年少女の中身が、漢族すなわちシナ人であった。これこそ少数民族に生存権はなく、シナ人に同化吸収されて消滅すべきであるという、シナ侵略主義という悪魔のイデオロギーの具体化に他ならない。そしてそれを笑って見過ごすことは、中共で現実に行われている民族浄化を承認することである。浄化というと言葉が奇麗過ぎるのだが、要するに虐殺であり抹殺である。ガス室を使わないジェノサイド、ホロコーストである。チベット問題も、東トルキスタン問題も、南モンゴル問題も、その根底に存在するのが民族虐殺問題なのである。
 この現在進行形の民族虐殺に、世界中が目をつぶっている。欧米諸国は旧ユーゴの民族浄化を糾弾し、カラジッチを捕まえて国際裁判にかけているが、はるかに巨大な民族虐殺を黙認している。ナチスのユダヤ人虐殺は、世界史的犯罪・人類史の教訓として繰り返し回顧されているが、その被害者のユダヤ人および加害者のドイツ人すら、シナ人の現行犯罪を追及しようとしない。日本が見習えと脅迫されている、ドイツ人の歴史の反省なるものが、いかにいい加減であるかよく分かる。
 欧米諸国は、今まで中共に対して多少の人権批判を行ってきたが、それも今回のアメリカ・フランス両大統領の開会式出席で、完全に口先だけのいわゆるリップサービスであることが、満天下に暴露されてしまった。特にサルコジ大統領は、聖火リレーの時点では開会式出席を留保していたにもかかわらず、カルフールに対する脅迫デモで簡単に豹変して出席した。フランス紙ルモンドは、これを一〇七七年神聖ローマ皇帝がローマ法王に屈服したカノッサの屈辱になぞらえた。一方、ブッシュ大統領の方は、チベット騒動の勃発当初から、中共に対して一貫してきわめて融和的であった。この顛末を中共・シナ人の大勝利と言わずして何と言うのか。
 アメリカとフランスといえば、「自由の国・アメリカ」、「人権の国・フランス」が、金看板である。この金看板は、両大統領の開会式出席によって、無残なまでに大きく傷ついた。そのうえ、日本は言うまでもないが、米・仏以外のイギリスなどの先進諸国も中共に対して完全に腰が引けている。つまり今や世界の自由主義・人権主義は、実質的に死んだというべきである。世界は、正義が無茶苦茶に踏みにじられる、暗黒の世の中に突入したのである。その欧米諸国の欺瞞性を鋭く突いてきたのが、ロシアの攻勢に他ならない。ロシアは一応民主化したにも拘わらず、ロシア帝国・ソ連帝国の再建をめざしている。歴史は完全に弱肉強食の帝国主義時代に逆戻りしている。この世界の状況の変化に最も鈍感なのが日本である。
 人権侵害どころか、侵略も虐殺さえ黙認されたシナ人が、更なる侵略に乗り出し、その主要な標的が我が日本であることは、まったく疑問の余地がない。この状況を生き抜くには、「平和」憲法は言わずもがな、日米安保条約にすがりついていてもだめである。何よりも独立自尊の大和魂を取り戻さなければならない。現在の日本人の民族意識の状態は、百年前のシナ人・朝鮮人と比べても、はるかに劣るのだ。日本は植民地にならなかったなどと、いたずらに過去の栄光に酔い痴れているときではない。この悲惨な現実な直視しなければ、何事も始まらない。大和魂を回復しなければ、単に国が滅びる亡国のみならず、民族消滅の運命が待ち構えているだろう。

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