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中共の軍国主義に鈍感な日本

『月刊日本』2009年4月号 羅針盤

 以前から頻りに言われていた、中共の航空母艦の建造が、このところ急速に確定的になった。昨年末に通常空母の建造計画が、そして今年の二月には原子力空母の建造計画が、立て続けに公表されたのである。朝日新聞は、昨年の十二月三十日付けと二月十三日付けで、何れも一面トップで報じており、さらに二月二十七日には両者を受けた、中共海軍の飛躍的拡充に関する、「遠洋へ中国軍の執着」と題する大型記事を掲載している。産経の記事も併せて見ると、空母の建造計画がかなり具体的に明らかになる。

 通常空母は数万トン級の中型艦二隻で、今年から建造を始め十五年をめどに完成させ、二十年までに運用体制を確立する。原子力空母は、これも六万トンの中型艦二隻で、ソ連が建造を中止した原子力空母の設計図を入手済みだという。空母の建造地は上海の長興島で、昨年秋には世界最大規模の造船基地を完成させた。通常空母の母港は海南島の三亜で、埠頭や関連施設の建設が始まっている。艦載機パイロットの訓練地は大連で、マカオの観光会社からの転売で手に入れた、旧ソ連のワリャークを改修して使用する予定で、すでに養成学校が設立され、ウクライナの海軍航空部隊トレーニングセンターで学んだ中共海軍幹部と、ロシアから招いた講師によって、陸上での訓練が開始されているという。艦載機にはロシア製戦闘機スホイ33を購入するという。以上のように、建造地・母港・訓練地・使用機ともに極めて明確であり、中共の空母の所有と運用の計画が、本格的に開始されたことが分かる。
 三月四日に明らかにされた、中共の〇九年予算案によると、国防予算は15パーセント増の四八〇六億元(約六兆七千億円)で、二十一年連続の二桁成長となる。一月二十日に発表された国防白書には、強大な海軍力の建設に努力することが明記され、ソマリア沖での海賊対策で行った艦船派遣を巧妙に利用して、遠洋での作戦能力を向上させるとまで言っていると言う。遠洋すら視野に入れるのだから、近海はいうまでもないわけであり、朝日の空母に関する記事によれば、中共海軍は、「沖縄、台湾、フィリピンなどを結ぶ防衛ライン『第一列島線』を超え、沿岸防衛からの脱却を目指す」、「将来的には日本列島からグアム島、インドネシアに至る『第二列島線』内の西太平洋海域の制海権を確保したうえで、インド洋や太平洋全域で米海軍に対抗することを目標に掲げている」そうである。
 以上は、制空権も包含した遠大な海上覇権の話であるが、卑近なところでは我が国の領海に対する侵略行為も、着々と怠りなく進めている。昨年九月十四日の朝七時前、高知県足摺岬沖の豊後水道の周辺の領海内で、イージス艦「あたご」が潜水艦の潜望鏡らしきものを発見し、追跡したが約一時間半後に見失った。自衛隊や米軍のものでないのだから、明白な前科もある中共のものに決まっている。
 また十二月八日、尖閣諸島の魚釣島周辺の領海内に、中共の二隻の海洋調査船が侵入し、午前八時過ぎから午後五時半過ぎまで、実に九時間半にわたって日本の領海を侵犯し続けた。この船は国家海洋局所属の、「海監46号」と「海監51号」で、国際法上禁じられている徘徊・漂白といった行動を繰り返し、魚釣島を一週半して引き上げた。ところで問題はその目的である。以前は海洋調査を目的として主張していたが、今回は違っていた。今年の二月十六日、北京で開かれた国家海洋局の関連会議において、孫志輝局長は「『実際の行動で中国の立場を示した』と述べ、中国の主権を主張することが目的だったことを明らかにした」と言うのである。(産経新聞2月18日)すなわち今や侵略を公然と正当化するまでになったのである。
 異常なのは、我が国における、中共の軍国主義路線の暴走の現実に対する、反応振りである。それは全くの無反応と言うしかない状況である。無反応振りは、政治家はもちろん社会一般でもさらには保守の世界でも基本的に変わらない。私は熱心な読者ではないから、見落としがあるかもしれないが、保守系の雑誌で中共の空母問題をまともに取り上げている論稿を知らない。皮肉なことに最も熱心に報道したのが朝日新聞だが、ただしその報道振りは至極当たり前のことのように淡々としており、批判的姿勢が殆ど見られない。つまり完全に中共サイドに立っているのである。朝日は日本の軍備増強については、中共を刺激して軍拡競争になるからとことごとく反対してきたが、中共の無茶苦茶な軍拡は、全く容認するのである。
 それにしても注目すべきは、中共の海軍力拡張に対するアメリカの態度である。昨年十二月二十日の産経新聞によれば、十二月十八日、米太平洋軍のキーティング司令官は、ワシントンで記者会見し、「中国が航空母艦の建造を真剣に考えているとの見解」を表明した。その直後の二十三日、中共国防省の黄雪平報道官は記者会見して、「空母建造を検討していることを、軍当局者として公の場で初めて確認した」(産経12月24日)というのだから、アメリカと中共は示し合わせて公表したものであろう。またキーティング司令官の発言からは、中共の空母建造に対する警戒感は全く伺われない。それは中共が遠洋作戦の口実に利用した、ソマリア沖への艦艇派遣について、「歓迎するとともに協力していく方針を示した」ことからも明らかである。つまり経済のみならず軍事においても、米中は完全に結託している。今回のクリントン国務長官の訪中で、戦略対話を経済のみならず安全保障問題にも拡大するといっているが、それはとっくに始まっているのである。
 あらゆる意味で自立できない日本は、アメリカによってシナ人に対して、簡単に売り飛ばされてしまうだろう。かつてアメリカ人がいくらでもやっていた、奴隷売買のように。

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