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『産経』に似てきた『朝日』

『月刊日本』2009年5月号 羅針盤

 最近の朝日新聞を見ていると、一瞬、産経新聞に似てきたなと感じられることがある。それは特に中共関係の記事についてであり、以前には、産経では取り上げていたが、朝日はことさらに避けていたような事柄が、比較的堂々と載るようになった印象を受けるのである。

 例えば、産経新聞では三月二十三日に報じられた、中国アルミによる英豪資源大手のリオ・ティントの買収が、オーストラリアで大問題になっている件は、朝日では四月五日になって取り上げられている。最大の外貨保有国に成長した中共は、世界大不況を絶好の好機として、世界中の資源獲得に乗り出したらしい。中国鉄鋼工業協会幹部は「豪資源企業の株価は昨年より下がっており、豪ドルも下落している。長期的な資源戦略備蓄の観点から、今は投資の好機だ」といったという。中共は〇七年の時点ですでに、世界全体の消費量のうち、鉄鉱石の約五割、アルミの約三割を占めているにもかかわらず、さらに囲い込み独占しようとしているのである。産経の記事によれば、「経済評論家の時寒氷氏は『金融投資はまったく意味がない。これからは資源投資だ』と主張し、米国債を購入することを直ちにやめ、その資金を資源投資に回すように求めている。時氏の主張は、インターネットで若者を中心に熱烈な支持を受けている」というのだから、まさに挙国一致での資源戦争であり、まるでノー天気な我が国とは、真に対象的である。
 さらに三月二十八日の朝日には、中共の対外攻勢について、注目すべき記事が十頁に二つ並んで出ている。一つは「中国船、南シナ海に荒波」との見出しで、軍艦を改造した漁業監視船が、三月中旬に西沙群島付近を航行したことを報じた、かなり大型の記事である。この船は中共の農業省に所属する「中国漁政311号」で、全長が110メートル、トン数が4450トンもある、巨大なものである。中共による海上覇権実現のためには、いろいろな役所のいろいろな船舶が動員されているものだと、改めて感心してしまう。朝日は、この中共の強行姿勢の背景には、軍の主張があるとするが、その後すぐに「指導部が軍の強硬論を容認している面もある」と、あいまいな表現に終始している。また今回の行動は、三月十日に成立した、フィリピンの領海基線法への対応だと説明をして、この点を強調している。
 もう一つは、ラオスの首都ビエンチャンにおける、巨大中華街の建設計画の記事である。現在ビエンチャン郊外に、今年十二月に開催される、東南アジア諸国によるスポーツ大会用の競技場が、中共の丸抱えで建設中なのだが、この工事を中共企業が担当するだけでなく、中共の労働者を三千人以上送り込んでいる。一方ラオスの労働者はその六分の一の五百人であるから、これは一種の計画的な人口的侵略である。中華街の建設はこの人口侵略をさらに本格的に行うもので、数十年の契約で、五万人のシナ人を受け入れる都市を建設して、期限後はラオス側に引き渡されるというのだから、完全なシナ人の租借地が形成されるわけである。注意しなければならないのは、この計画が中共とラオス共同の国家的プロジェクトとして、推進されることであり、ラオスの外務省関係者は中共との関係を、ラオスの将来にとって大切だと言っているが、こんなことをしていれば、すでに東南アジアで有数の弱体国家であるラオスは、亡国の道をたどるに違いない。世は再び、帝国主義時代に、完全に逆戻りしているのである。
 このように朝日新聞にも、中共が展開する覇権行動に関する記事が、多く見られるように成っている。ただしその報道の特徴は、前号で取り上げた航空母艦のケースでも触れたたように、中共の対外攻勢・対外膨張の事実を報道するが、その脅威の本質については殆ど触れず、触れたとしても極めておざなりに済ませている点にある。例えば先に述べた漁業調査船の行動の記事では、軍部が突出してそれを指導部が追認しているかのような印象を与えるように書かれている。しかしそもそもこの船は、軍艦を改造したものであるが、農業省に所属する漁業調査船なのである。そのほかにも前号で取り上げた、海洋局に属する海洋調査船が活動することもある。海上覇権の追求は、国家中枢の指導の下に、国家のすべてを挙げて行われているものである、軍部の突出などではありえない。それは資源獲得戦略でも、人口侵略計画でも、同じことである。
 それにしても、最近朝日新聞が積極的にこの種の記事を掲載するようになった理由は、一体何なのだろうか。それは世界の歴史状況を考えると、現在事態はそのレベルまで進行したと言うことである。すなわちシナ人による覇権獲得の現実性が、かなり見えてきたからだと私は判断する。つまり中共は覇権追求の野心を、ことさらに隠す必要がなくなったのである。したがって朝日新聞がまともになったわけではなく、はっきり言えば、中共から「書いても良いよ」と、お許しが出たのだろう。
 わずかに約二十年前、ソ連が民主化し解体して、いわゆる東西対決の冷戦構造が崩壊した時に、唯一の超大国になったはずのアメリカは、イラク戦争と経済危機によって、その覇権は大きく後退している。それに変わって台頭した最大勢力こそ、中共に他ならない。かつて中共は強大国になっても、決して覇権は求めないと、事あるごとに言っていた。それは心の底から覇権を求めるからこそ言っていたのであり、全くその気がない日本は、始めからそんなことは言わなかった。しかしシナ人がその野心を露わにしてもかまわない時期が、アメリカの衰退によって、とうとう到来したのである。すでに一年前、当時朝日新聞に連載されていた、「奔流中国21 外交パワー 上」(4月7日朝刊)の末尾のところで(刊行本では271ページ)、清華大学国際問題研究所所長の閻学通は、「中国人の誰もが、21世紀に中国が米国をしのぐ、かつての漢や唐に匹敵する超大国になることを願っている」と明言している。

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