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米中野合という醜悪な現実

『月刊日本』2009年11月号 羅針盤

 週刊誌『ニューズ・ウィーク』十月七日号は、中華人民共和国建国六十周年にあたって、「分裂する中国」と題する特集を組んでいる。その中に、表紙では「中国がチベット独立に怯える本当の理由」と表示された文章があるので、興味を覚えて一読してみた。実際の本体はタイトルが違っていて、「ダライ・ラマは現実を直視すべきだ、   中国が受け入れるはずのない大チベット構想は百害あって一利なし」というもので、この方が中身を忠実に反映していた。つまり表紙の題とはかなり趣を異にしており、チベット自治区のみならず周辺地域を含む、大チベットでの自治を要求している、ダライ・ラマの方針にたいする明確な批判なのである。

 この一文の筆者は、香港の政治・経済コンサルティング会社ロングフォード・アドバイザーズの会長、廖文(リアオ・ウェン)なる人物であって、すなわち名前から明らかなように、香港在住のシナ人である。チベットへの侵略者であるシナ人に、チベット問題を語らせること自体が、すでにして極めて変である。しかも問題はそれだけではない。この記事でもっとも悪質なところは、驚くべきウソをイケシャーシャーと主張している点にある。
 廖文は次のように述べている。「中国人の目には、大チベット構想が自分勝手に映る。チベット自治区の近隣地域にチベット人が移り住んだのは主に過去50年のこと。漢民族のチベットへの移住は認めないのに、大チベットにはチベット人の移住地域が含まれているのはおかしいではないか―。」
 チベット自治区の近隣地域というのは、青海省の全域、四川省の西半分、それに甘粛・雲南両省の一部の地域のことである。この地域はすべて中共の用語で、「蔵族自治州」と呼ばれているところであって、青海省には六つ、四川省に二つ、甘粛省と雲南省にはそれぞれ一つの蔵族自治州がある。つまりこれらの地域は中共政府自身が、もともとチベットのものだと認めているのである。本来はチベット自治区とあわせて、一つの自治区にまとめるべきであるのに、わざわざ分割統治しているだけなのである。
 またこれらの地域はチベット自治区と合わせて、自然地理的に言っても完全に一体のものである。それは面積二百三十万平方キロメートル及ぶ一大高原地帯であり、チベット人はその自然環境に適合した、独自の生活文化を生み出してきた。この高原は成都のある四川盆地のすぐ西から始まっており、四川省のミニヤコンカという山は、標高が七千五百五十六メートルもあり、山名自体がチベット語である。
 歴史的に見てもこれらの地域が古くからチベットであることは、実は簡単にわかることである。前にも本欄で紹介したことがある、吉川弘文館の『世界史年表・地図』の三十四ページの「1600年前後のアジア」の地図を見れば、明の支配はようやく現在の青海省の東端である西寧に及んだくらいであって、チベット高原はシナ人から「烏斯蔵(ウスツァン)」と呼ばれているまとまった地域になっている。ウスツァンとは、チベット語で中央チベットを表すウと、西部チベットを表すツァンを合わせた言葉であり、当時のチベット全体を表している。
 つまり廖は「チベット自治区の近隣地域にチベット人が移り住んだのは主に過去50年のこと」だと言っているが、これは歴史的事実と全く逆で、チベット自治区と近隣地域、すなわちチベット高原全体・大チベットの領域にシナ人が移り住んだのこそ、過去50年のできごとなのである。廖は意図的に大ウソをついているか、そうでなければチベットの歴史について、全くの無知なのである。
 この責任は廖文だけの問題ではない。全く虚偽の情報を世界に提供したニューズ・ウィークの責任も巨大である。自動車や家電製品など具体的な物には、製造物責任法がある。しかし形の無い情報に関しては、とりわけ報道の自由の大儀名分に守られて、有害情報が垂れ流しになっている。廖は全くの無知だとしても、こんな簡単な歴史的事実の誤りをチェックできないほど、ニューズ・ウィークはお粗末な報道機関なのか。もし分かっていて掲載したとしたら、ニューズ・ウィーク自体が、チベット問題において、完全に侵略者であるシナ人の側に立っていることになる。そうだとしたら、これは明らかに、米中の結託、癒着・野合という醜悪な現実を、如実に反映したものであろう。
 シナ人は第二次大戦後の、アジア・アフリカにおける民族独立の時代に、歴史の潮流に全く反して、チベット・東トルキスタン・南モンゴルを軍事侵略した。チベットでは人口の五分の一を殺し、チベット僧院などの文化財に対して円明園にも劣らない破壊を実行し、さらに自然をも徹底的に痛めつけた。世界の歴史に侵略なるものは数々あるが、これほど残虐な侵略は滅多に無いだろう。しかもそれが二十一世紀になっても、堂々と行われ続けているのである。現在の世界において、これほどの不正義は無いし、これほどの不条理は無い。
 したがってシナ人は、侵略地域であるチベット全土から出ていかなければならない。チャイニーズ・ゴーホームである。ソ連解体に伴って、独立した諸国から大量のロシア人が、ロシア本国に帰った。そもそも中共では、三峡ダム建設のために、百万単位の人間が強制的に移住させられ、北京五輪をはじめとする全国のインフラ整備に当たっても、同じことが行われている。チベットから総てのシナ人が引き揚げるのは、やろうと思えば決して不可能なことではないのである。
 と言うよりも、いかに困難が伴っても、誤りは正されなければならないのである。そういう困難を乗り越えることによって、世界の歴史は進歩してきたのである。毛沢東も言っているではないか。誤りを正すには度を越さなければならず、度を越さなければ誤りは正せない。

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