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シナが目論む鉄道支配

『月刊日本』2010年9月号 羅針盤 2010年8月22日100828.jpg
 このところ大規模インフラの輸出が、話題になっている。例えば、原子力発電・高速鉄道(新幹線)・上下水道施設などである。これに関しては、自民党政権より民主党政権のほうが熱心であるようだ。ただしこれらの日本が誇る技術についても、うかうかしていられない事態になって来ている。原子力発電では、中東のアブダビで韓国に敗れ、ベトナムでロシアに敗れた。 その中でも最近特に注目されるのは、高速鉄道・新幹線である。日本の新幹線は、フランスのTGVと比較して、最高スピードでは劣るものの、大型の車両で大量輸送に適すなど、客観的には優れており、その安全性もあいまって、日本の科学技術の代表とされてきた。海外輸出においては、韓国の場合は国民感情も絡んだためか成功しなかったが、台湾では導入されて立派に運行している。

 ところで近年エネルギー問題などにより、交通手段としての鉄道が再評価されて、先進国・後進国を問わず、各地で高速鉄道を導入する計画が立てられている。したがって新幹線技術を有する日本は有利で、ブラジル・ベトナムなどでは特に有望であるといわれてきた。ところがこの六月、ベトナム議会で高速鉄道計画が否決されて、暗雲が漂い出した。その理由は、建設費が余りにも高額だというのである。
 そして最近の情報では、ブラジルでも見通しは暗いという。七月十五日及び八月一日の産経新聞によると、ブラジルの計画は、首都のリオデジャネイロからサンパウロを経由してカンピナスに至る五百十キロで、これを二時間弱で結ぶ。建設費は三百三十一億レアル(約一兆七千億円)で、入札には日本の外に、フランス・スペイン、そして中共・韓国も参加する予定だという。韓国は原子力発電に続いて、高速鉄道にも進出してきたのであり、何よりも中共が乗り出してきたことが注目される。入札は十一月二十九日に締め切られ、十二月十六日に事業者が決定するが、最大のポイントは、想定運賃が最も安いものが選ばれるという方式で、そうなれば政治的にいくらでも値引きできる、中共が有利となる。
 中共の輸出を含む高速鉄道計画の全体について、かなり詳しい記事を掲載しているのが、八月四日の朝日新聞である。それによると、国内の計画は、二〇二〇年までに一万六千キロ整備する予定で、これは日本の新幹線網の二千キロ強の八倍になるという。最初の高速鉄道の開通が、〇八年八月の北京―天津間であるから、十年少しで日本が四十数年かけて建設した八倍の距離を作ってしまうのであり、まことに驚くべきスピードである。
 海外への高速鉄道の輸出については、中共の鉄道省は、アメリカ・ロシア・ブラジル・サウジアラビアなどと、「鉄道建設協力の調整チーム」を発足させたといい、鉄道次官は「数十カ国が自国の鉄道プロジェクトへの我が国の参加を希望している」と述べている。さらにトルコ・ベネズエラの計画に関与し、アルゼンチンとの間には百億ドルになる「鉄道関係の合意文書」に調印したらしい。
 ただしこの記事で最も注目されるのは、中共から周辺諸国への、直接的な高速鉄道の延伸計画である。「鉄道省は7月、雲南省から国境を接するミャンマー(ビルマ)やラオスにそれぞれ国際高速鉄道を建設する計画を明らかにした」「実現すれば、両国における中国の政治的な存在感が一層高まることは間違いない」とあり、鉄道の延伸が、実質的な属国である二つの国への、政治的影響力の増大、すなわち支配の強化であることが分かる。
 さらに「中国の専門家の中には、①中国北部からロシアへ②中国西部からカザフスタン経由で中央アジア諸国へ③中国南部からベトナム経由で東南アジア諸国へ・・・との三つの国際高速鉄道の建設の必要性を訴える論調も出てきている」とある。つまり二つの従属国家に止まらず、より広汎な領域において、鉄道による支配を目論んでいるのである。この三項目が本当に考えられているとすれば、ベトナム議会における日本新幹線採用の否決は、単なる金額の問題ではなく、中共鉄道の延伸と絡んでいるのかも知れない。その結果によって、ベトナムの中共に対する従属度が判明するだろう。
 日本が油断している間に、中共は高速鉄道の分野においても、日本やヨーロッパなど先進諸国の技術を模倣して、急速に実力を付けてきた。日本の新幹線では達成できていない、時速三百五十キロでの営業運転も実施している。中共に関しては、保守的言論人が盛んに崩壊論を唱えてきたが、現在のところ一向に崩壊するようには思われない。それは無能きわまる日本の政治家とは全く異なって、中共の支配者が極めて有能であるからに違いない。日本の進んだ環境技術を中共に輸出しても、たちまち模倣されて中共から全世界に輸出されるのが落ちである。
 民主党がインフラの海外輸出に熱心なのは、「コンクリートから人へ」の政治スローガンを掲げて、国内の公共事業を弾圧したためだが、国内の公共事業でも、推進すべきものはいくらでもあるのである。せっかく長年研究してきたのだから、リニアモーターカーは、早急に実用化すべきである。

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