- 2011年4月 6日 16:29
- 時評
ところで今回の東日本大震災によって、直接の被災地でなくとも、生活に大きな影響を蒙っているのは、何と言っても東京電力管内のいわゆる「計画停電」であろう。我々の現代生活が、根本的に電力に依存するものになっているからである。この計画停電は確か、3月11日の地震の直後の14日から、急遽開始された。最初は4月までとのことだったが、ついで冷房需要が盛んな夏もとなり、今では来年もやらなければならないと言い出している。
急いで開始されたものであるから、そのやり方については、いろいろな問題点が指摘されているが、殆ど取り上げられていないのは、実施されない範囲、つまり除外地域の問題である。当初から除外地域として言われていたのは、東京の中心部である千代田・中央・港の三区である。この地域には、国家の中枢機関や主要企業が存在するからとの説明であった。しかし実際に計画停電が行われてみると、東京23区は殆ど実施されていない。それに対して、東京都下、つまり市町村の地域や、神奈川・千葉・埼玉などの他県では行われている。
東京23区の中では、停電が実施されているのは足立区と荒川区であって、したがってこの両区は不公平だと抗議した。ただし、この足立区と荒川区にしても、その全域にわたって停電しているわけではない。足立区は西部の三分の一程度であるし、荒川区も北西部の一部である。つまり一応停電地域になっていても、その中で除外されているところが、実際にはかなりあるのである。これは停電地域になっている、政令都市の区や、市町村でも同様である。例えば横浜市は、18区の内の4区の全域が除外地域であるし、その他の区でも除外地域は幾らでもある。現在ではインターネットで地図が見られるが、それには計画停電地域の地図も載せられているから、一目で確認することができる。
この不公平こそが、今回の計画停電なるものの、最大の問題点であろう。そして何故そのような区別・差別が出てくるのか、その理由が全く明らかにされていない。東京電力は、幾ら原発事故で混乱しているといっても、それに対する説明責任がある。また奇妙なことに、原発事故についてはあれほど大量報道するマスコミも、計画停電の問題点については殆ど報道しない。あるとしても、それは工業生産に関するものである。そんな中で私が眼にした例外的な記事は、3月30日の朝日新聞夕刊のもので、直接人命に係わる病院の事例である。
それは「計画停電『手術できぬ』、除外あいまい、病院苦悩」と題する記事である。川崎市の病院では手術の計画が立てられないため、すべて延期している。ところが、さいたま市のある病院は、院長が要請したら停電から除外されたという。「東電は自衛策を呼びかける一方で、社会的影響が大きいとして、鉄道と病院の一部を停電の対象から外した。明確な基準はなく、除外した病院名や数も公表していない」
個別の病院を除外しようとすれば、除外できるのわけである。少なくとも、そうゆう具体例があることは明確になった。だとすれば、病院などは積極的に除外すべきである。反対に、現在除外している地域を、もっともっと停電にすればよい。東京23区と言っても、世田谷区などは明らかに住宅地域である。そもそも、実際に停電を体験してみないと、本物の節電意識は芽生えてこないのではないのか。
つまり計画停電は、少しも「みんなで」やっていないのである。マスコミは、「みんなでやれば」の偽善的な大量広告を垂れ流している時間があったら、今年の夏はおろか来年にすら予想される計画停電について、まともな報道を行う責務がある。
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