- 2011年4月12日 15:23
- 時評
東日本大震災について、中国メディアが「日本の民衆の『落ち着き』が強い印象を与えている」(第一財経日報)「日本人はなぜこんなに冷静なのか」(新京報)といった記事を相次いで報じている。2008年の四川大地震では一部で混乱も伝えられており、市民も驚きをもって報道に注目しているようだ。
国際情報紙の環球時報は普段は日本に厳しい論調が多いが、「(東京では)数百人が広場に避難したが、男性は女性を助け、ゴミ一つ落ちていなかった」と紹介した。
中国中央テレビは被災地に中国語の案内があることを指摘。アナウンサーは「外国人にも配慮する日本に、とても感動します」と語った。
以上が新聞の記事の全文である。実はインターネット版では最後に、もう一段落分あるのだが、新聞の方では省略されているので紹介しておく。
報道を見た北京市の女性(57)は「すごい。日本人の中には『道徳』という血が流れているのだと思う」と朝日新聞に語った。
これは古谷記者が直接取材したものに違いない。したがって自信を持って新聞でも掲載すれば良いのに、省略してしまっているのは何故だろうか。新聞記事のほうも極めて小さなスペースなのだが、すぐとなりには被災した中共からの研修生の話が、写真入で大きく取り上げられている。したがって、中共の走狗の朝日新聞としては、中共発であっても余りにも日本人を賞賛する報道をすると、ご機嫌を損ねると判断したのではないか。
さて世界における東日本大震災に関する報道については、4月4日の産経新聞の「環球異見」という、世界のメディアの報道を比較した欄でも取り上げられている。題して「世界が注視する日本復活の行方」で、その中に中共の「第一財経日報」もあり、タイトルは「中韓 日本のシェア奪う?」、筆者は上海の河崎真澄記者である。少し長いが、極めて興味深い内容であり、貴重な情報といえるので、以下に全文を引用しておくことにする。
3月29日付の中国紙、第一財経日報は、東日本大震災の影響で数多くの日本企業がダメージを受けるとして、「中国や韓国の企業が相対的に国際競争力を高める」との論評を掲げた。日本企業がもつシェアを奪取するチャンスだという。
政府系シンクタンク国務院発展研究センターの趙普平副部長の見解として、震災復興需要で中国から建材や食品などの対日輸出が増えると予想した。なかでもIT(情報技術)や自動車などで開発力を高めている韓国企業は、日本企業との実力差も縮めつつある。
中国企業も、世界への基幹部品や素材の供給先としての日本の地位を一気に奪う可能性があるという。
さらに同紙は、震災で日本経済に生じる‶空白‶に食い込む好機として、経営難に陥る日本企業の中韓企業による買収をあげた。被災地の東北地方に多いIT関連や自動車の部品メーカーなど、優良企業の買収が容易になるとしている。
こうした日本経済の弱体化を指摘する論調は、国内総生産(GDP)規模で昨年、日本を抜き去って世界第2位になった中国で大国意識の高まりとともに加速度的に広がっている。
3月28日付の中国紙、経済参考報は、「危機を有効に押さえ込むことができなければ日本経済は『孤島』になる可能性があり、電力供給低下が復興の妨げになる」と厳しく指摘した。
同紙はまた、放射能漏れ事故で「多数の外国人が日本を離れ、観光立国への道に黄色信号がともった」とも指摘。貿易にも深刻な影響を与え、多国籍企業がアジア市場展開のベースとしてきた日本の国際影響力は減退すると予想している。
だが震災の影響で日本からの基幹部品の調達が滞れば、中国の製造業も止まる懸念がある点など、マイナス面にはあまり触れていない。
以上が、記事の全文である。日本がダメージを受けている間に、日本のシェアを奪取するという点と、東北地方の優良企業を買収するという点が、特に重要であり極めて警戒すべきである。いくら日本人に「道徳という血」が流れていても、愚かであればやられてしまうのだから。
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