- 2011年4月17日 10:58
- 時評
そのほかでは、韓国が21基、インドが20基、イギリス19基、ドイツ17基、中共13基などの数字がめぼしい所である。インドは意外に炉の数は多いが、発電量から見ると効率が悪い原子炉であるらしい。つまりインドは20基で478万キロワットなのだが、中共は13基で1100万キロワットである。
フランスを除いて、スリーマイル島やチェルノブイリの事故で、原発に消極的になっていた欧米諸国、すなわちアメリカ・イギリス・ドイツなどは、地球温暖化問題を切っ掛けに、積極策に転じようとしていたところを、福島原発の事故で出鼻を挫かれたかたちである。とくに革新政権の反原発路線を、保守党政権が修正したドイツでは、そのショックが大きかったらしく、25万人の原発反対デモが出現した。
ところで福島原発の事故が生々しく進行中なのにも拘わらず、原発政策推進を高らかに歌い上げた国々がある。それが例の新興国・BRICs諸国である。BRICsとはブラジル・インド・中共・ロシアの四カ国であったが、今回中共で開かれた会議から、南アフリカが加わり、最後のSが大文字になりBRICSとなった。4月14日に中共・海南省の三亜で開催された会議の後、共同声明が出された。
その「三亜宣言」の内容としては、リビア問題の平和的解決、国連安保理の改革、そして原発政策の推進などが盛り込まれているが、時局柄最も注目されるのが、原発問題であることは言うまでもない。しかし朝日新聞は三亜宣言を独立の記事として取り上げず、リビア問題の長文の記事の末尾の所で、それに関連させて古谷浩一記者が付属的に述べるに止まっている。とくに原発問題については、「宣言はまた、福島第一原発事故で議論が高まる原子力発電について、『将来のBRICSのエネルギー構成の中で重要な位置を占め続ける』とし、先進国の一部に広がる脱原発の動きにはくみしない姿勢を訴えた」と記すだけであるのが、極めて印象的であった。
では中共の原発推進政策はいかなるものであるのか。現在世界で建設中の原子炉は、65基あるのであるが(3月14日、産経)、そのうちの43パーセント、28基は中共一国のものなのである(3月28日、朝日)。現在が、13基・1100万キロワットであるから、飛躍的な増加策を実行しているわけである。そして原子力発電で2億キロワットを賄う構想があり、それは1基100万キロワットで計算すれば、実に200基にもなる(4月4日、朝日)。さらに朝日4月15日の、「原発ビジネス活況続く」の記事に使われている、「2025年までの原発の新規需要」の図によると、中共63・5兆円、欧州26兆円、ロシア17・9兆円、インド16・6兆円、アメリカ15・5兆円、中東11・6兆円、東南アジア8・8兆円、日本7・7兆円であるから、中共がまさにダントツで群を抜いている。
ロシアについては、4月1日の産経の記事が詳しい。国外での原発ビジネスにも積極的で、2025年までに国内で24基を建設するだけでなく、国外で30~45基を受注して、シェア20パーセントを獲得するのだという。この産経のロシアの原発記事で、とくに注目されるのは、「船上の原子炉で発電を行う『海上原発』の建造」を、12年の実用化を目指して進めていることである。しかもその第一号は、「過去に津波被害に見舞われている極東のカムチャッカ地方に配備する計画」なのであるという。
三亜宣言を世界に表明したことによって、中共もロシアも、日本の原発事故の影響で、原発推進政策を放棄するような国でないことは、全く明らかになった。とくに中共は、現在高速鉄道網を驚くべき速度で作り上げているように、原発建造計画も確実に達成するであろう。ロシアも極東地方で建造するようになり、日本・韓国の原発も合わせて、東アジアとくに極東は、世界で最も原発が密集した地域になるのは間違いない。
それだけ原発が増加すれば、今回の福島原発事故を遥かに凌ぐ、真に重大かつ深刻な原発事故が多発することも充分予想される。つまり決して「想定外」ではない。中共の原発で重大事故が発生すれば、死の灰は偏西風に乗って、黄砂の如く日本列島に降り注ぐのである。
- 次の記事: 日本経済没落論
- 前の記事: シナ人は日本の大震災をどう見ているのか