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深まる中共への隷属

『月刊日本』2012年8月号 羅針盤 2012年7月22日
120727.jpg 今からちょうど四十年前、一九七二年の五月十五日に沖縄返還が実現すると、それを花道として長期政権を誇った佐藤栄作首相は、引退を表明した。大きな政治課題をクリアーすると、総理大臣が引退するのは良くあることで、鳩山一郎首相は日ソ国交を、岸信介首相は日米安保改定を成し遂げて引退した。
 ところで当時残されていた、最大の政治課題といえば、日本と中華人民共和国(中共)との正式な国交樹立問題であった。約二十年前、戦後処理としての講和問題で、全面講和か単独講和かの議論が起ったが、アメリカの意向に沿って、単独講和に踏み切ったのは当然であろう。その後、ソ連とは一九五六年に国交を回復したが、中共は戦後になって誕生した国であり、既に中華民国との正式な国交があったから、極めて複雑な問題となっていたのである。

 国交成立以前にも、中共は日本に対して盛んな外交攻勢を仕掛けてきていた。政党では、まず戦争中から密接な関係にあったのは日本共産党だが、その後対立関係になる。日本社会党の訪中団長は二度にわたって、「米帝国主義は日中共同の敵だ」と宣言した。また政経分離方式で、経済関係すなわち貿易を先行させてLT貿易を推進し、経済界にも影響力を浸透させていった。この貿易に関与したのが、松村謙三・古井喜実・田川誠一、更には大物の藤山愛一郎といった自民党の政治家であり、政権党与党にも深く食い込んだ。
 もう一つ、中共が攻略対象として重視していたのが、マスコミであるのは言うまでもないだろう。貿易交渉と連動して日中記者交換協定が結ばれ、一九六四年の九月末には、両国の記者が相互に入国した。この日本人の記者たちは、二年後に勃発した文化大革命の報道で、大活躍することになる。それは他の外国人記者と違って、簡体字とはいえ漢字で書かれた壁新聞を読むことができたからである。しかしその間に日本人記者は、次々に追放処分を受け、日本経済新聞の記者に至っては、長期間にわたって幽閉された。七〇年九月の時点で追放を免れたただ一人が、林彪事件を報道しなかった、朝日の秋岡特派員であった。この時期に形成された、日本のマスコミの隷中体質は、現在に至っても克服されていないと言わざるをえない。
 秋岡特派員の事例で分かるように、特に中共政権に従属して行ったのが、朝日新聞であった。広岡社長は七〇年の春、一ヶ月も費やして中共各地を旅行し、報告記事を書いている。そして極めて注目されることは、国交成立運動に同調する形で、戦争中の日本軍によるが悪事を告発するキャンペーンを、朝日新聞が展開することである。南京問題などを取り上げた、本多勝一記者による「中国の旅」は、七一年の八月から十二月に渡って連載された。
 以上は国内の動向であるが、一方国際環境も中共との国交を促す流れが出てきた。七一年の十月には、中共が国連に加盟し中華民国は脱退した。そして七十二年二月には、二十年前に朝鮮戦争で直接戦い、鋭く対立していたアメリカのニクソン大統領が、中共を訪問したのである。
 さて佐藤首相は、六月十七日に引退を表明した。七月五日に行われた自民党の総裁選には、田中角栄・福田赳夫・大平正芳・三木武夫が出馬したのだが、朝日などのマスコミは、田中を「今太閤」とはやし立て、露骨に肩入れしていたと、私は記憶する。総裁選では田中が当選、七月七日に第一次田中内閣が発足し、中共との国交成立を急ぐことを言明した。このとき最も活動したのは公明党であった。公明党と田中首相が、深い関係にあったからである。竹入訪中団は七月二十五日に中共に行き、中共側の条件を持ち帰った。それから二ヵ月後、九月二十五日に田中首相が訪中し、同二十九日に共同声明に調印して、国交が成立したのは良く知られる通りである。
 以上の日中国交成立の経過を見るとき、熾烈な外交交渉というより、常に主導権を握っているのは中共側で、日本は手玉にとられているとしか考えられない。そうなるのは、中共側が一枚岩であるのに対して、日本には民族意識を喪失して、相手の手先となって動く人間が、余りにも多すぎるからである。四十年前の日中国交の成立という拙速外交は、日本の外交史における大失敗であり、今日の日本没落の基点であるといってよいだろう。数々の歴史問題の歴史が、それを端的に証明している。しかも中共の経済力・軍事力の成長に伴って、隷属度はいっそう深まっているのである。

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