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東アジアの冷戦構造は崩壊していない

『月刊日本』2013年10月号 羅針盤 2013年9月22日

 

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八月十五日の朝日新聞の社説は、例によって長文の歴史問題に関する社説である。そこにおける朝日の基本的認識は、シナ人や朝鮮人が今になって日本の加害責任を追及するのは、冷戦が終わったからだとするものである。「日本はもはや軍国主義は遠い遺物と思っても、隣の民衆にとっては戦争を問う時が今やってきた。そこには歴史観の時差ともいえる認識のズレがある」と決めつける。

八月二十日のオピニオン欄では、アメリカの女性歴史学者にインタビューして、更にこの視点を強調している。その学者はコロンビア大学教授のキャロル・グラックで、聞き手はニューヨーク支局長・真鍋弘樹。

真鍋の「なぜ日本ばかりが謝罪しなければならないのか、という疑問を持つ人もいます」という問いに対して、「この20年ほどで、戦争の記憶に関する『グローバル記憶文化』とでも呼ぶべきものが生まれました。それは、国家が過去に行った行為について新しい国際規範ができた、ということを意味します」とグラックは答える。国際ルールが変わった、というのである。戦後すぐにはこの規範はなかったが、ホロコーストが一つの理由だとする。

この返答については、いろいろと疑問が出てくる。ホロコーストが理由なら、もっと前にできていそうなものなのに、20年ほど前からとすること。また戦争や侵略は、世界の近代史において数限りなくあるのに、問題にされている事例はあまりにも少ない。アメリカなど戦争ばかりやってきたのだから、謝罪すべき過去の行為は莫大にあるはずである。

ただしこの20年前というのは、次に述べる冷戦崩壊と関連させるためである。真鍋の「その新しい規範が、東アジアにも広がったということですか」という問いに対して、冷戦の崩壊によって強固な日米関係も変化し、日本は「アジアと向き合うことを余儀なくされ、90年代になって突然、日本政府は戦争の記憶に対処しなければならなくなったのです。それは世界的な『新しい常識』です。自民党が国内政治として扱おうとしても、それとは別種の国際環境が存在している。米下院が慰安婦問題で非難決議をしたのも、その流れです」とグラックは答える。

アメリカの学者の考えることが、いかに論理的でないかがよく分かる。日本の歴史問題が国際問題になったのは、一九八二年の第一次教科書事件からであり、靖国参拝問題も第二次教科書事件も、八十年代のことであり、明らかに「冷戦崩壊」以前のことである。さらに問題は、冷戦崩壊という基本的認識の誤りである。この根本的に重要な点については、本欄で何回も述べたことがあるが、アジアにおいてはヨーロッパと異なって、冷戦構造そのものは全く崩壊しなかったのである。

中共や北朝鮮などの共産主義国家は、厳然と存在している。したがって歴史の進歩の証拠である、民主化も民族独立も実現していない。アジアでも冷戦構造が崩壊したように見えるのは、アメリカが悪の帝国・中共と、だらしなく妥協し融和してしまったからに過ぎない。歴史学者・グラックは、この現実に存在する東アジアの巨大な不条理には、決して目を向けようとしない。

しかも戦後のアジアは冷戦どころか、朝鮮戦争とベトナム戦争という熱戦があった。そしてその朝鮮戦争は現在でも休戦状態で、完全に終結していない。朝鮮戦争では中共と韓国は直接殺しあったのだから、中共軍による韓国国民の大量虐殺があったことは間違いない。また当時韓国軍・警察によって、スパイ容疑で虐殺された韓国民の死体の発掘を、現在も韓国政府は許していない。朝鮮戦争の巨大な悲劇を封印したままで、中韓両国は歴史問題において完全に結託し、七〇年も前の戦争と植民地支配を根拠に、対日非難を繰り返している。グロテスクなまでの、民族差別・民族迫害が堂々と行われ、それに対してアメリカは応援さえしているのである。

なおグラックはインタビューの前半では、なかなかまともなことも言っている。「参院選でも大勝した安倍政権について、米メディアでも右傾化を懸念する意見が見受けられますが」という質問に、「実は、うんざりしているんです。過去数カ月間の日本に関する報道で、ナショナリズムや軍国主義といった言葉が実に多く使われています。世論調査の結果を考えれば、そんな心配はないことは分かるのに」と答えている。もっとも海外メディアの報道は、朝日など日本の虐日マスコミの受け売りなのであるが。


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sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)

 

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