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隠蔽された成田空港問題の本質

『月刊日本』2008年11月号 羅針盤

 中山国土交通大臣は、任命直後のインタビューで、「失言三点セット」を連発して、辞任に追い込まれ、ついには議員も引退するという。三点セットとは、成田空港問題、単一民族問題、日教組問題であるが、日教組だけは頑張ったものの、先の二つは発言自体を撤回してしまった。この撤回してしまった二つの問題において、批判されたのとは全く別の意味で、中山発言には極めて大きな問題があると、私は考えるものである。例えば、中山氏は単一民族だから内向きだといっているが、この断定は明らかにおかしい。これでは単一民族は良くないという事になり、亡国的な一千万移民受け入れ計画など取りざたされている現在、極めて危険な考えであると言わなければならない。ただし本稿では以下、中山氏の成田空港問題に関する発言に絞って、私の見解を述べることとしたい。

  中山氏は、成田空港問題を、農民によるごね得問題だとしている。しかしこれは問題の著しい矮小化というよりも、問題の本質への完全なる無知である。そもそも成田紛争の主役はいったい誰だったのか。それは明らかに反対農民ではない。警察用語で言うところの極左暴力集団、マスコミ用語では過激派、私の表現では極左暴徒である。七十年安保を中心とする大学紛争で暴れまわった極左勢力が、農民に味方するとの名分のもとに、成田問題に雪崩れ込むことによって、極左運動の延命を図ったのである。したがって、成田空港問題の本質は、極左暴徒による国家権力に対する、文字通りのテロ攻撃であって、農民によるごね得問題といった、生易しい問題では決してないのである。
 このテロ攻撃に対して、政治家・役人などは、だらしなく屈服してしまった。その結果、成田は開港から三十年にもなるのに、未だに完成していない。この間、アジアには巨大空港が続々と誕生して、ハブ空港の地位を完全に奪われた。成田の失敗に懲りて、関西空国は必要以上に陸地から離して建設したために、巨大な浪費を強いられた。この成田の前例は、さらに日本のインフラ整備に、甚大な影響を与えることになった。政治家も役人も司法も、インフラ建設に対する住民の反対運動に、極度に神経質になるようになったからである。その最も端的な例が、首都圏の高速道路である。首都圏には地方から高速道路が集まってくるが、それらを結ぶ環状高速道路が何本も計画されていた。しかし計画から何十年もたつのに、殆ど完成していない。最近漸くトンネル方式で建設が進むようになった。
 もちろん成田だけが原因とは言えないが、日本の社会インフラ建設は、経済レベルに比して著しく立ち遅れている。阪神淡路大震災から十三年経つが、耐震改造は進んでいない。阪神震災の犠牲者は、結局家の下敷きになったからであり、潰れない家を作れば命は救えるのである。つまり、東京で言えば杉並区などに多いと言われる、老朽家屋を急速に改築すべきなのである。鉄道の改善も遅れている。開かずの踏み切りが多数存在するが、積極的に立体交差化の事業を推進すべきである。電車自体の混雑緩和には、復々線化を行うべきだが、小田急線の例に見られるように、住民の反対運動があると容易に進まない。日本は、社会インフラを整備しなければならない時期に、反対運動に極度に怯えて、それを怠ってきた。現在は経済的にも凋落してしまったから、安全で便利で美しい住環境の建設という、とりわけ重要な国家目標の達成には、完全に失敗したと言える。
 その日本に対して、近年急速にインフラの整備に成功したのが、中華人民共和国(中共)である。物価が安いから経費を有効に使えるだけでなく、わが国との最大の相違は、住民の反対を完全に踏み潰す、権力の強大さにある。それは例の三峡ダムの建設でも、今回のオリンピックのための北京大改造でも、遺憾なく発揮された。中山氏も最初のインタビューの際、「(空港整備が進む)中国がうらやましい」と言ったらしい。(産経新聞、九月二十六日)成田問題では、反対農民や極左暴徒、そして反対運動を煽りに煽った日本のマスコミや左翼人士も、中共における膨大な強制立ち退き事例に対して、完全に無視と沈黙を決め込んだ。しかも中共のインフラ整備における、最大の援助者こそ我が日本なのである。
 そもそも成田問題の主役、日本の極左暴徒と当時最も親密な関係にあった外国勢力は、中共であった。日本の大学紛争は、中共の文化大革命の猿真似、ミニ文革というべきものであり、立看板には中共の簡体字が好んで使われ、東大紛争では正門に毛沢東像がうやうやしく掲げられた。日本最大の国際空港建設を邪魔することは、日本の国力の弱体化につながると、中共側は考えていたのであろう。その証拠に、成田の反対農民をわざわざ招待して、「人民を大切にする中共政権」を賞賛させている。そこまで成田空港の建設を批判され妨害されたにもかかわらず、中共の空港をはじめとするインフラ整備に対して、巨額の援助を喜んで出し続けるとは、日本民族はどこまでお人好しなのであろうか。
 以上、中山前国土交通大臣の成田空港問題に対する認識は、あまりにもノー天気であり、根本的に間違っている。日本の精神を再建するためには、戦後史における虐日日本人の行為が、告発され追及されなければならない。そのためには成田空港問題こそ、極めて格好のテーマである。ごね得の反対農民、それを政治的に利用しつくした極左暴徒、農民への同情を情緒的に煽り立てたマスコミ、彼らの攻撃に屈服してしまった政治家・官僚、これらの人々の犯罪が、暴かれ糾弾されなければならないのだ。しかし中山氏の愚かな発言とその撤回によって、成田問題の本質は却って隠蔽され、日本に甚大な被害を与えた巨大犯罪は、一層容認されてしまった。国土交通大臣といえば、ほかならぬ成田空港を最高の地位で所管する人間ではないか。当事者中の当事者の政治家が、かくまでお粗末な認識しか持っていないのだ。しかも中山氏は、自民党議員の中でも、国家意識を持った良識派だという。その中山氏にして、この体たらくである。日本の前途は、あまりにも暗い。

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