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『第二の敗戦』の裏に米中の結託

『月刊日本』2009年2月号 羅針盤

 アメリカの金融破綻に端を発した世界大不況に、当初は比較的大丈夫だと言われていた我が国も完全に巻き込まれて、「派遣切り」やら「内定取り消し」やらで、このところ大騒ぎになっている。政治家もマスコミも、今頃になって騒いでいるのだが、我が国にはずっと以前から、デフレ不況による悲惨な犠牲者が、一貫して大量に存在し続けているという事実は、全く顧みられていない。それこそ不況のための自殺者である。
 我が国の自殺者は、それ以前は二万人台前半であったものが、一九九八(平成十)年から三万人台に、一万人近く一挙に急増した。その原因が経済不況であることは、国民総生産の下落と明らかに連動しているから、疑問の余地がない。自殺とは自ら命を絶ってしまうのだから、派遣社員の失職や学生の就職内定取り消しとは、比較にならない悲劇であるにもかかわらず、その対策に政治家・官僚はまじめに取り組まず、九八年以後も自殺者三万人台をずっと維持し続けている。つまり不況原因の自殺者の累計は約十万人だから、アメリカのベトナム戦争の死者数万人よりはるかに多い。我が国の国家権力は、国民の生命・財産を守る能力も、それ以前にそうしようとする意志すら無いのである。

 この国家権力と共犯関係にあるのが、現在「派遣村」報道にフィーバーしている、マスコミである。近年、鉄道の「人身事故」なるもので、ダイヤが乱れることがしばしばあるが、これは明らかに自殺である。他人を殺すのが殺人事件なら、自分を殺す自殺も事件である。酒に酔っ払ってホームから転落するのは事故であるが、自分から飛び込むのは事件である。しかし今のマスコミは、それをことさらに「人身事故」と報道する。国民を欺く、完全なる虚偽報道である。国家権力の命令があるのかどうか知らないが、悲惨な現実をことさらに隠蔽する役目を果たしているのだから、国家権力におもねる共犯者といって間違いない。大本営報道は、今でも健在であるのだ。
 九八年から自殺者が急増していたという事実は、いわゆる小泉改革によって、それが引き起こされたのではないことを明瞭に示している。小泉首相の登場は、二〇〇一年の四月なのだから、自殺者急増より三年以上も後のことなのである。結局、自殺者の急増は、九〇年年初の株暴落から始まった、バブル崩壊によるデフレ不況が深刻化した必然的結果である。そして、崩壊の前提としてのバブルの発生も、その崩壊も、経済的自然現象ではなく、アメリカの意向に基づいた、人為的現象であるに違いない。しかしその真相は、いまだに明らかにされていない。この日本経済の没落は、「第二の敗戦」と言われているが、その背景には、第一の敗戦、すなわち大東亜戦争の敗戦と同様に、米中の結託という国際政治の基本構造が存在するであろう。
 今から二十年前、天安門事件で西側の批判にあって孤立した中共が、突破口としたのがその三年後、九十二年の天皇陛下御訪中であったことは、中共の外交官が明らかにしている。ただしこの時の日本の外務次官が、皇太子妃殿下の父親・小和田氏だったように、日本外務省を強力に動かしたのは、中共のみならず欧米勢力であったことが、極めて重要であろう。以後、欧米勢力特にアメリカは、人権問題などは完全に棚に上げて、経済的に中共にのめり込んでいったのである。つまりその後の中共の爆発的な経済成長は、根本的にアメリカとの「共同謀議」であったと考えざるを得ない。そしてそのキー・マンが、ポールソン前財務長官であるのだろう。
 米中結託による経済構造のカラクリは、日本などの資本と技術を持ち込み、中共の低廉な労働力を利用して、安価な物品を大量生産する。それをアメリアが輸入して、大衆が購入し消費する。そしてその資金は、日本がアメリカ国債を大量購入して提供するという、巧妙な仕組みが作り上げられたのである。中共は自由のない共産主義国家だから、労働者の賃金は抑制できるし、公害をいくら出しても、反対運動は押さえられる。つまり資本主義と共産主義との、グロテスク極まる複合体である。日本を含む欧米諸国は、金に目がくらみ、すさまじいモラル・ハザードに陥ったのであり、完全なエコノミック・アニマルに成り果てたのである。したがって、中共に対する人権批判は、たとえ行ったとしても極めておざなりだし、チベットなどへの残虐極まる現実の侵略行為を、現在では完全に黙認している。
 この間日本は、産業空洞化が起こり、特に日本を支えていた中小企業が大量に減少した。不況が持ち直したといっても、それは大企業ばかりが儲けたのであり、それら国際的優良企業の株式は、外国人によってかなり買占められてしまった。しかも株主への分配率は上がったが、従業員には還元されていない。超低金利が続いているから、それだけでも日本国民の富は、奪われつづけている。国民の経済力を示す、一人当たりの国民総生産は、以前は世界第三位をずっと維持していたのだが、二〇〇二年以後急速に低下し、二〇〇七年には十九位にまで転落した。
 先進国といいながら、社会インフラの整備は極めて遅れている。一例を挙げれば、景観を美しくする決め手である電線地中化である。その他、年金にしろ医療にしろ、日本は自分に使うべき金をアメリカに貸したが、その金は返ってこないだろう。自分で自分を守ろうとしない国からの借金など、堂々と踏み倒すに違いない。一方中共はこの間、経済成長の成果を軍備に投入して、人間衛星まで所有する軍事大国になりおおせた。今や航空母艦を保有しようとしている。また社会インフラも急速に整備した。日本同様にアメリカ国債を大量購入しているが、それはアメリカを脅迫する強力な武器となった。
 昨年の秋以降、この経済構造は大きく破綻を見せたのだが、結局、白痴国家・日本を利用しながら、米中に都合のよい形で、新たに再構築されるだろう。

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