- 2010年1月 3日 19:52
- 時評
この最大の問題を理解するためには、世界の歴史の発展・進歩とは何かを、知っておかなければならない。かつては強い国が弱い国を、強い民族が弱い民族を、侵略して支配するのは、当たり前のことであった。世界の歴史はそうゆう事例に満ちている。しかし近代において、人権思想の発達とともに、個人の人権を尊重するように、集団としての民族や国家の権利も尊重されなければならないと、考えられるようになった。
それが国際的に明確に打ち出されたのが、90年まえの第一次世界大戦後のヴェルサイユ講和会議における、民族自決・民族独立の原則であって、その結果、東ヨーロッパに八つの独立国が誕生した。ただし欧米諸国の植民地が殆どだったアジア・アフリカには、その原則は適用されなかった。この基本的矛盾を解消したのが大東亜戦争であり、大英帝国に代表される、植民地支配体制が解体して、アジア・アフリカに、実に多数の独立国が生み出された。
しかし第二次大戦後も、多数の異民族を強権的に支配する、多民族国家が二つ存在した。それがロシア帝国を継承したソ連と、清帝国を再建した中華人民共和国(中共)である。とくに中共は、民族独立の時代に、歴史の流れに全く逆行して、周辺地域を侵略・併合して成立してしまった。その後、20年程前に、ソ連の共産主義体制は崩壊し、ソ連は民主化されるとともに、国家自体も15の独立国に解体した。チェコとスロバキアも分離し、ユーゴスラビアは七つの国家に分裂した。すなわちヨーロッパでは、民族独立は更に徹底され、歴史は更に進歩したのである。
ところがアジアは、冷戦は終わったと言うのに、冷戦時代の構造はそのままである。モンゴルを例外として、アジアの共産主義国家は、中共・北朝鮮・ベトナムなど依然として変わらず、つまり民主化されていない。さらに問題は、中共の内部に閉じ込められた民族は、全く独立を遂げていないことである。かつてアメリカのレーガン大統領は、ソ連を「悪の帝国」と呼んで、その打倒に努めた。現在のアメリカは、イランや北朝鮮などを「悪の枢軸」と指定したが、「悪の大帝国」と言うべき中共には、全くの野放し状態である。
アジアにおいて、東西の対立状態が消滅したのは、ヨーロッパとは異なって、アメリカが一方的に中共と妥協してしまったからである。アメリカもそしてヨーロッパも、チベットやウイグルの独立運動を支援しないし、中共の一般的な人権侵害に対しても、全く弱腰になってしまった。現在の世界においては、中共が現実の侵略国家であり、他民族を同化方式で虐殺する虐殺国家であると言う、単純明快な事実が、意図的に隠蔽されているのである。まさに見て見ぬ振りをする「裸の王様」状態である。つまりシナ人の悪逆非道が、大手を振って罷り通る、暗黒の世界になってしまったのである。
アジアにおいては、歴史は進歩せずに停滞するどころか、このままではかえって逆流するだろう。我が日本は、過去を反省しないから、再び同じ過ち=侵略を犯すに違いないと、さんざん言われてきた。現実の侵略国家である中共が、更なる侵略に乗り出すことは、必然の中の必然であり、これほど確実なことはない。
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