- 2010年4月 4日 14:48
- 時評
麻薬密輸の罪はそれなりに重いことは確かだが、どれだけ正確に捜査が行われ、公正な裁判が行われたのか、はなはだ疑問である。中共では死刑者の数字を公表していないが、年間に数千人だと推定されている。まさに死刑超大国である。日本でも足利事件の冤罪が明らかになったばかりである。裁判において、どんなデタラメなことが行われているか、想像に難くない。
もし判決が正当だとしても、日本の政府には出来るだけ日本人の生命を守る義務がある。それが国家というものである。しかし施政方針演説で「命を守りたい」と絶叫した鳩山首相は、最初の執行予定が伝えられたときに、残念だと言っただけであった。昨年末、イギリス人が同じ罪で死刑が執行された場合には、イギリス政府は猛然と抗議を行った。その日本政府の腑抜け振り・弱腰振りを見て、中共政府は即座に、更に三人の執行を決定した。つまり日本人の精神を徹底して屈服させるのが真の狙いである。
これだけやられても民主党政権は、卑屈に迄に弱腰で、四月三日の朝日新聞に拠れば、「日本人への死刑執行に関して、日本政府の対応は抑制的だ。岡田克也外相は程永華・駐日中国大使を呼んで懸念を伝えたが、執行中止は求めなかった」という。自己の責任を放棄して日本の死刑を行わない、確信犯的死刑廃止論者である千葉景子法務大臣は、中共の法制度のことであるとしてノーコメント。法務省幹部は、「他国の刑事司法手続きに、こちらが意見することは内政干渉であり、できない」という。中共の企みは、ものの見事に成功した。
政府の弱腰振りは論外だが、この件に関するマスコミの報道も変である。テレビの報道は余り熱心に見ていないが、報道そのものが少なく、殆ど問題としての関心が無いらしい。新聞はそれなりに報道しているが、中共のやり方とそれへの日本政府の対応に、奇妙に理解を示す傾向が見られる。中共の走狗である朝日は言うまでも無いが、そのような論調は産経も見受けられた。
例えば、中共では麻薬が蔓延しているから、更にはアヘン戦争の歴史があるから、麻薬犯罪を厳罰にするのだと説明しているが、別に麻薬犯罪だけを厳罰にしているわけではない。また日本が抗議できないのは、日本にも死刑制度があるからで、死刑を廃止したイギリスとは違うのだと解説する。しかし日本で死刑になっているのは、人間を何人も殺したような人間だけで、実質的には存在しないのと変わらない。いくら人口が多いと言っても、年間数千人を死刑にする、世界の中で飛びぬけた死刑超大国とは全く異なる。要するに中共おける命の値段の異常な安さこそが、根本問題なのであるが、それは言わない。
日本の死刑廃止論者は、日本の僅かな死刑に抗議しながら、中共の膨大な死刑に全く沈黙してきた。これは日本人の命は大切だが、中共国民の命はどうでも良いと言っているのと同じである。今度の問題で明らかになった事態は、更に進んで、中共による死刑であるなら、日本人の命も大切ではない、という白痴的な表明に他ならない。死刑廃止論者を何人も抱える、民主党内閣がそれを行った。当人たちは気付いていないだろうが、死刑廃止論は完全に破産した。そして日本人のシナ人に対する精神的な隷属も、より一層深まった。
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