- 2010年6月 3日 17:10
- 時評
そもそもこの政権の成立そのものが、マスコミの巨大な応援によっていた。「政権交代」のスローガンの下に、選挙後の各党の議席数を予測した報道が繰り返され、それに影響された有権者が、その通りの結果を出した。現実には、議席数ほどの格差が投票数にあったわけでは全くないが、民主党の圧倒的勝利になった。小泉時代の郵政選挙と同様の、ポピュリズム、衆愚選挙であり、ちょうど裏返しにしただけである。
したがって、産経新聞のような例外はあるが、マスコミ全体としては、朝日系メディアを中心として、鳩山政権に基本的に好意的であったと言える。その証拠は幾つもあるが、まず問題を起こした人物が、全くその地位を去らなかったことが挙げられる。その筆頭は、言うもでもなく鳩山・小沢コンビであり、最後に首相による幹事長の道ずれ辞任となったが、両人の金銭問題については、一応追求の姿勢は見せるものの、真剣さが欠けていた。
その他、女性問題の国家公安委員長、口蹄疫問題の農林水産相など、自民党時代なら当然辞めていた人間が辞めなかった。自民党時代には、赤城農水大臣などは、顔に絆創膏を張ってきただけで批判され、中山国土交通相は成った途端に、どうと言うこともない発言で辞任させられた。鳩山内閣で辞めた大臣は、普天間問題で罷免された福島大臣だけであり、辞める辞めるといっていた小林議員はいまだに辞めず、元小沢秘書の石川議員は、党籍を離脱しただけである。すべてマスコミが追及しなかったからである。
もう一つの明白な証拠は、強行採決である。民主党政権になってから、問題法案が次々と成立した。まず委員会で強行採決をして、本会議で通してしまうからである。かくして、子供手当て・高校無償化など、問題法案が簡単に成立してしまった。つい最近では、郵政改革見直し法案が、委員会で僅か数時間の審議で、強行採決された。郵政改革法案は、小泉時代に参議院で一旦否決され、そのためにわざわざ総選挙を行い、圧倒的支持を受けたものである。見直すにしても、もっと慎重な審議が絶対に必要である。
そもそも国会における強行採決を批判し糾弾することは、マスコミの得意中の得意、お家芸であったはずである。強行採決は民主主義を踏みにじるものだと、何度説教調の報道を聞かされたか分からない。しかし民主党の暴挙を、マスコミは全く容認している。つまりマスコミが唱える民主主義など、所詮口先だけのものであり、本物の独裁者が出現したら、簡単に迎合してしまうに違いない。
鳩山首相のいわゆる発言のブレ、一貫性の無さ、前後矛盾については、普天間問題で指摘されるが、それはその他にも幾らでもあった。自民党時代であれば、そのような場合はテレビの映像で、矛盾する発言を相互に比較する形で見せていたが、鳩山首相の矛盾発言については、殆どやられていなかったようだ。それを私的に作成した人がいて、ネット上で公開されて評判を呼んでいたらしいが、幾らでも作れるマスコミは、明らかに遠慮していたのである。
ただし、このマスコミと民主党政権との蜜月関係が、末期に至って多少変化したと思われる。その表れが例の官房機密費問題の暴露ではないのか。すなわち、野中元官房長官のリークによって、マスコミ関係者に官房機密費から、金がばら撒かれていたと言う問題である。これは民主党政権の側から、マスコミに対する牽制と考えることができる。つまりマスコミも、これだけ駄目な鳩山政権を批判しないわけには行かなくなり、それに対する民主党政権からマスコミへの脅しと理解できるのではないか。機密費は評論家だけにばら撒かれたわけではなく、新聞社・放送局の人間にもばら撒かれていたに違い無いからである。
そして、自民党政権がやっていたことは、民主党政権も同様にやっているだろうと、単純な私は考える。現在の官房機密費も、マスコミ関係者にばら撒かれていると、容易に想像できる。正確に覚えていないが、民主党政権は、官房機密費の全容を公開すると言ったはずである。ぜひ速やかに公開してもらいたい。では政権を獲得する以前はどうだったのだろうか。民主党政権が誕生するための応援団を務めたマスコミに対しては、それなりにお金が必要だったはずである。鳩山マネー・小沢マネーは、マスコミ対策としても、有効に使われたのであろう。
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