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日米安保から日中安保へ、ご主人様の交代

  • Posted by: 中の人
  • 2010年6月22日 11:23
  • 時評
100622.jpg 私は前稿で、朝日は安保改定50年を、余り採り上げていないと言ってしまったが、これは我ながら早とちりであった。5月23日が発効から50年と言うことで、5月19日の紙面に、日米安保に関する大型記事が出現した。これは予想されたよりも遥かに踏み込んだ、驚くほど「素晴らしい」内容になっている。それは1面と3面を使った、「日米安保無力化狙う中国」と題する、日米安保条約が直面している現状に対する分析と、11面の「中国興隆 日本の針路は」と題する、二人の人物に対するインタビュー、及び同面の「基地苦悩半世紀 在日米軍3度の再編期」という在日米軍の歴史を述べた記事で構成されている。
 始めのほうの現状分析は、表題から分かるように、安保体制が中共の飛躍的な軍備増強によって、弱体化・無力化しつつあることを、さまざまな事例を挙げて説明している。それとは直接関係無いが、この記事の最後のほうには、日本の安全保障政策を考えるために、防衛政策大綱策定に向けてつくられた、首相の私的な諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」なるもので行われている、具体的な議論が紹介されている。これがなかなか、興味深い。「激論」と表現されているそれは、いわく、「中国には抑制的にならず、言うべきことをはっきりさせるべきだ」「露骨な反中国意識はマイナスだ。良好な対中関係を表面的には維持している米国への配慮が必要だ」「米国はイラクやアフガニスタン問題で余裕がなくなっている。日本は自己完結的な対応が求められる」。二番目の、アメリカに配慮して中共に強く出られないと言う心理構造は、現実の日米中関係を見事に表現しているのかもしれない。

 今回の安保50年の大型記事で、最も注目すべきものは、11面の二人の人物に対するインタビュー記事である。日米安保の問題であるのだから、その二人とは日本人とアメリカ人とするのが、ごく普通の考え方であろう。しかし、この記事はそうではない。一人は日本人の前駐米大使・加藤良三であるが、もう一人はなんとシナ人なのである。しかもそのシナ人は、よりによって「中国中央テレビ・軍事評論家」の宋暁軍である。この宋は、中共で100万部を越えるベストセラーとなった、ウルトラ・ナショナリズムの書、『中国不高興(不機嫌な中国)』(日本語版『中国が世界を思いどおりに動かす日』)の共著者であるから、正真正銘のウルトラ・ナショナリストである。この人選に、今回の朝日の安保大型記事の目的・狙いが、端的に現れている。
 宋の発言の全てを紹介できないから、特に重要と思われるところをだけを、次に紹介しておきたい。読者の皆さんは、なるべく図書館でコピーするなどして、全文を読んでもらいたい。
 宋は「中国が大国となっても、かつての大日本帝国軍のような植民地主義や拡張主義の道を選ばない。軍事力を実際に使うことは現代社会では許されないし、ありえない」と言いながら、次のように続ける。「『世界の警察』である米国が機能していなければ、中国が代わって役割を果たしてもいい。なぜ、中国が警察官になってはいけないのか」と満々たる野心を隠そうともしない。警察なら軍事力が必要なのは自明の理であるにもかかわらず、矛盾したことを平気で言う。さらに自分自身が、悪逆非道の侵略現行犯・虐殺現行犯であることは、全くわかっていない。
 また例によって、歴史問題を利用して、日本人に釘を刺すことも忘れない。「日本人は、中国人がいまだに侵略戦争について恨んでいることを忘れてはならない。多数の中国民が虐殺された記憶は簡単には消せない。日本が中国海軍の『脅威論』を騒ぎ立てることで、中国内のこうした憎しみが再燃しかねない」と脅しをかける。
 シナ人による支配の正当化を、歴史に求めるのも例の手口で、共同体づくりについて、「この際、中国が主導的な役割を果たすのは当然だ。文明国家としての5千年の歴史のうち、2千年は儒教に基づく『王道』によって東アジアを支配しており、中国を中心とした秩序が維持されたていた」と言い、したがって今後「中国が大国になっても、米国のような『覇道』による支配を求めない。だから日本はそれほど心配する必要はない。加盟国がより平等な共同体の設立を目指す」と言う。王道・覇道など古臭く陳腐な概念だが、ころっと騙される日本人は多いだろう。
 日米安保の将来については、次のように断言しているのが注目される。「米国の相対的な影響力が下がっている中、日米安保条約の寿命はそれほど長くないと考えている」。その背景・理由としては、「中国と日本の経済交流や人の往来が進んで相互理解が深まれば、『中国脅威論』や『北朝鮮脅威論』といった米国的な安全保障観の影響は次第に低下していくだろう」とする。これを私なりに解釈すれば、日本にたいする人口侵略・経済侵略を推し進めて行けば、「中国脅威論」など簡単に押しつぶすことができると、言っているのである。
 最後に鳩山政権の外交を、次のように評価している。「鳩山前首相は、『日本は中国と米国のどちらとの関係を重視するのか』ということを提起した初めての指導者だと思う。日本の世論は日米安保体制を見直す方向に確実に動き出したと言える」。
 前稿の日米安保大賛成が中共の支配者の表向きの見解なら、ウルトラ・ナショナリスト・宋暁軍の発言は、シナ人支配者の本音を代弁したものである。もちろん「軍事力を使わない」「王道だ」といった、明らかなウソは含まれているが、基本的に中共支配者が目指しているものを、率直に吐露している。それを朝日新聞は、積極的に紹介した。
 要するに朝日新聞は、日米安保を論じながら、結局は日中安保になるべきだと、読者を教育しているわけである。日米安保あるいは日米同盟などと言いながら、それは日本の軍事を始めとするアメリカへの隷属体制であった。今後はアメリカへの隷属体制から、中共への隷属体制に移行すべきだと、朝日は主張しているのである。

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