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「冷戦」体制の「崩壊」という二重のウソ

  • Posted by: 中の人
  • 2010年7月 3日 05:35
  • 時評
100703.png 第二次大戦後の世界は、アメリカをリーダーとする自由主義陣営と、ソ連をリーダーとする共産主義陣営に二分され、相互に対立する関係にあった。この現象を東西対立と言い、その状態を冷戦体制あるいは冷戦構造と言っている。確かに、ヨーロッパにおいては、戦争はなかった。しかし前稿で述べたように、アジアにおいては朝鮮戦争とベトナム戦争という、何百万もの犠牲者を出した、二つの大規模な戦争が存在した。実際の戦争すなわち冷戦ならぬ「熱戦」が、積極的に展開されたのである。したがって戦後の世界体制を、「冷戦」と表現するのは明らかに間違っている。少なくとも、不正確である。冷戦体制史観は、あくまでも欧米中心の歴史の見方であって、アジアの歴史を無視している。アジアにある日本人が、この単純な間違いに気がつかないのは、欧米諸国中心の歴史の見方を、そのまま無批判に受け入れているからである。自分自身のものの見方・考え方、歴史観を持っていないのである。

 ところで、この「冷戦」体制は約20年前に、「崩壊」して新しい時代に入ったということになっている。それは1989年の東ヨーロッパ共産主義諸国の民主化から始まり、東西ドイツは統一し、ソ連自体も一応民主化してロシアになった。ソ連の民主化は同時に、ソ連の解体を意味し、ソ連は15の独立国に分裂した。チェコとスロバキアも分離し、ユーゴースラビアは分裂を続け、現在は七つの国に分かれた。かくして歴史の進歩の目安・証拠である民主化と民族独立のうち、民主化はかなり実現したし、ロシアは広大であるからまだ不十分な点はあるが、民族独立も相当程度実現した。
 しかし「冷戦」がウソであるように、その体制・構造の「崩壊」も完璧なウソである。つまりアジアは冷戦でなかったように、アジアでは戦後の体制・構造が、ちっとも崩壊していないのである。北朝鮮とベトナムは共産主義のままである。何よりも中華人民共和国(中共)と言う、自由を抑圧する巨大な共産主義国家が、厳然と存在し続けている。しかも中共は、他民族を不当に支配しその独立運動を残忍に弾圧する、現役バリバリの侵略国家である。すなわちアジアでは、戦後の体制・構造がそのまま存続しており、歴史の進歩・歴史の当然の流れである、民主化と民族独立は実現していない。アジアにおける唯一の例外的な変化といえば、ソ連の衛星国であったモンゴルが、ソ連の崩壊によって民主化されただけである。
 つまり「崩壊」に関しても、それは基本的にヨーロッパだけに当てはまることであり、アジアには関係ない。しかしアジアにおいても、戦後体制が崩壊したと錯覚されているのは、一体何故であろうか。それは戦後の構造はそのままにもかかわらず、東西の対立状態が消滅してしまったからである。そしてその原因は、自由主義の旗手であるはずの、アメリカの方が変わってしまったからである。かつてアメリカはソ連を悪の帝国と決め付けて、その崩壊に務めた。しかし現在のアメリカは、ソ連に勝るとも劣らない正真正銘の悪の帝国である中共を、悪の帝国と認定していない。これは自由主義の旗手にして世界の警察官であるべき、アメリカの明らかな変節であり、途方も無い堕落である。
 このアメリカの変節・堕落による、最大の受益者は言うまでも無く中共である。この20年間で、中共の経済は約十倍に成長し、軍事予算は二桁の成長を続けた。かくして中共は共産主義のままで、経済的にも軍事的にも大国に成りおおせてしまった。そしてそれはすべてアメリカが容認したことなのである。というよりもアメリカはそれに積極的に協力し支援したのである。一方アメリカは同盟国・日本に対して何をしたのか。アメリカの堕落の最大の被害者こそ、我が日本である。アメリカは日本をアンフェアだと攻撃し続け、日本にバブルを発生させたが、それは20年前に崩壊した。デフレに陥った日本経済は、十数年に渡って全く成長していないし、十年以上も自殺者3万人を出し続けている。
 要するに、日本はアメリカに、完全に裏切られたのである。一般民衆は知らされていないが、政治家・官僚・言論人など、日本の支配者層が知らないわけがない。アメリカが怖くて、真実を明らかにできないのであり、それはいわゆる「左翼」も同じである。しかしこの不様で哀れな実態は、世界の国々から見られているのである。日本があなどられ馬鹿にされるのも、当然といえば当然といえよう。

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