- 2010年7月22日 19:52
- 時評
この記事によると、ドイツは中共との経済関係が拡大して、両国の間の貿易額は、イギリス・フランス・イタリア三カ国の、中共との間の貿易額を合計したものに匹敵する。しかも現在、ギリシャの経済危機などで、ユーロ圏が動揺している。そのためドイツとしても、中共との経済関係を重視せざるを得ないのだという。
そこで朝日によれば、「会談後には両国の関係当局・企業間で環境保護やトラック生産など10の協力文書の調印式が行われた」。今流行の、首脳が外国を訪問するときに、商売のために経済人が同行するやりかたである。その10項目なかの一つとして、毎日と産経が具体的に紹介しているのが、トラックの生産である。ドイツのダイムラーと中共の福田汽車が合弁会社を設立して、年間10万台のトラックと4万5000台のディーゼルエンジンを、北京で生産する。両者の投資額は、63億5000万元(約820億円)に達する。
17日には、メルケル首相は古都・西安を訪れて、兵馬俑などを見学した。すなわち歴史と文化で圧倒するやり方であって、天皇陛下の御訪中やクリントン大統領の訪中の際にも使われた、各国の首脳を迎えた際の、シナ人の常套手段である。
ところで今回のメルケル訪中の最大の問題点を、キチンと指摘しているのは産経である。すなわち20日の記事の最大の見出しには、「人権よりも経済優先」とある。川越特派員の説明では、「メルケル首相は2007年にチベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世と会談するなど、中国の人権問題に厳しい目を向けてきた」。しかし今回の訪中では経済優先に突っ走り、人権問題は全く無視された。それはフランスのサルコジ大統領の場合と同様だったとし、記事は「自国の経済の安定という命題の前に、中国の人権問題に対する〝軟化〟が進むことが懸念される」と結んでいる。
しかし私は、この産経の認識でもまだまだ大いに甘いと断言する。近年欧米諸国の中共の人権問題に対する姿勢は、軟化の一途をたどっていると言うより、完全な崩壊状態だと言わなければならない。その端的な証拠は二年前、2008年8月の北京オリンピック開会式に、あれだけ事前に聖火リレーでチベット問題が盛り上がっていたにも拘わらず、「自由の国」アメリカのブッシュ」大統領と、「人権の国」フランスのサルコジ大統領が、雁首を並べて出席したことである。このとき欧米諸国が主張する、人権主義やデモクラシーは、シナ人に対して明白に敗北した。
ただし、米・仏両国の金看板は多分に偽善の要素が濃厚であるとしても、ドイツのメルケル首相の人権尊重には、もう少し実があるのではないかと、一般に考えられたと思われる。その根拠は、ドイツと言う国が、ナチスドイツの犯罪と言う巨大な人権問題の歴史を抱えていることと、メルケル首相自身が、人権が無視された共産主義の東ドイツ出身と言うことの二つである。実際にメルケル首相は、2006年5月に中共を訪問した際に、温首相や胡国家主席との会談で人権問題を取り上げたと言う。またこのとき民主活動家やキリスト教関係者と会見している。そのメルケル首相が、中共の共産主義支配者に対して、完璧に屈服してしまったのである。
日本人は右から左まで、人権主義やデモクラシーを主張する欧米諸国を、素朴に信じ込んでいる人間が余りにも多い。特に保守派は、日本の政治家の対中軟弱外国を批判するために、欧米諸国の指導者を持ち上げる傾向があるが、世界の現実を客観的に直視すべきである。
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