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民族独立をめぐる歴史上最大のダブル・スタンダード

  • Posted by: 中の人
  • 2010年8月 5日 20:28
  • 時評
100805.jpg 国際司法裁判所が、7月22日に、旧ユーゴスラビアのコソボの独立問題について、「独立宣言は国際法に違反してない」との判断を下した。コソボの独立については、欧米諸国や日本など69各国が承認しているが、ロシアや中共など国内に民族独立問題を抱える国は反対している。ただしコソボなどの独立問題への対応については、欧米諸国もロシアも単純に割り切れない、ダブル・スタンダード状況であることが、7月30日の朝日新聞に、まとめて分かりやすく報道されており、なかなか参考になる。

 問題を複雑化させている直接の原因は、グルジアの内部の民族独立問題である。約20年前に、ソ連が解体して15の構成共和国に分裂したが、黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス(カフカス)地方のグルジアもその一つである。そのグルジアの内部でも民族独立問題があり、二年前のロシア軍のグルジア侵攻によって、アブハジアと南オセチアが独立した。ただしそれを承認しているのは、ロシアの他は三つの小国のみで、欧米諸国は反対している。アブハジアと南オセチアは、今回のコソボについての国際司法裁判所の判断を歓迎して、コソボの独立を認めて、自分たちの独立を認めない西側諸国を、ダブル・スタンダードだと批判した。
 ロシアのダブル・スタンダードは更に一層複雑である。ロシアはコソボの独立に反対しているが、グルジア内の民族独立を積極的に推進した。しかしグルジアに隣接するロシア領の北カフカスには、独立を目指して戦ってきたチェチェンが存在する。ロシアはその独立運動を、苛烈極まりない強行政策で弾圧してきた。また地図で見ると、グルジアの南オセチアの北側には、隣接してロシアの北オセチアがあるから、本来なら両者を合してオセチア民族の独立国とすべきであろう。
 更に朝日新聞の記事によると、今回の国際司法裁判所の判断が、旧ソ連のその他の地域の独立問題にも影響を与える可能性があるという。コーカサスのアゼルバイジャンの中のナゴルノ・カラバフ自治州は、アルメニア人地域で、隣国アルメニアが独立を支持して軍隊を駐留させているが、アルメニアもナゴルノ・カラバフも、当然今回の判断を歓迎している。またモルドバの「沿ドニエステル」地方も、独立を主張しているという。
 以上の民族独立問題は、旧ソ連及び旧ユーゴスラビアの問題であるが、現在の世界における、民族独立をめぐる最も巨大なダブル・スタンダードが存在していることは、すっかり忘れ去られている。というより、正確に言えば意図的に隠蔽されている。それは中共の民族問題、すなわち具体的に言えばチベット・東トルキスタンの独立問題である。約20年前に「冷戦体制が崩壊」したとされるのが常であるが、これは実は真っ赤なウソで、中共もその子分の北朝鮮も、共産主義のままで民主化していなし、中共解体による民族独立は全く実現していない。
 世界の先進国を自負する欧米諸国は、ユーゴスラビアの解体・民族独立を支援するために、ユーゴ空爆まで実行した。そして独立を承認したコソボの面積は、僅かに1.1万㎢である。それに対してチベットの面積は230万㎢、東トルキスタンは160万㎢もある。広大な領域を有するチベット人やウイグル人が独立できないことは、世界の歴史の進歩に全く逆行している。にもかかわらず欧米諸国は、民族独立問題としてはもちろん、人権問題としてすら、中共政権を批判できなくなっている。 
 実は民族独立問題において、ヨーロッパばかりが先行して、アジアが取り残される現象は以前にもあった。それは約90年前の第一次世界大戦後のことである。ヴェルサイユ講和会議における民族自決・民族独立の原則によって、東ヨーロッパに一挙に八つの独立国が誕生した。しかしその原則はアジア・アフリカには適用されなかった。ただしその矛盾は、第一次大戦後の当時において明確に認識されており、したがってそれは、二十数年後の第二次世界大戦によって基本的に解消された。ところが現在、この完全に同様な矛盾は全く注目されることがない。それは日本を含む先進諸国が、現在の世界が解決すべき最大の課題に、意図的に目をふさいでいるからである。すなわち、歴史上最大のダブル・スタンダードと言うべきである。
 現在の世界は、90年前より明らかに退歩している。歴史は進歩していると思ったら、大間違いで、自由・平等という正義が、無茶苦茶に踏みにじられる、暗黒の世の中になってしまっている。この腐りきった世界をぶち壊して、この世に正義を取り戻すのが、行動力のある若者に課せられた責務である。

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